PCR検査によるスクリーニングは、感染者の割合が高いことが予想される集団から行うべき理由。

ブログ

「感染者をスクリーニング&隔離して、残りの人は制約を受けずに活動するべき」・・・そのようなご提案を受けることがあります。

このスクリーニングの方法としてPCR検査があげられますが、検査には擬陽性・偽陰性という問題が付きまといます(ベイズ推定)。

これに関して、わかりやすい解説(PCR検査は増やすべきなのか?、医療法人社団悠翔会 佐々木淳氏)があるので、これを引用しつつ、現状の都のPCR検査の陽性率6%(都の新型コロナウイルス感染症対策サイト参照、7/16時点)の状況を考察しました。用語は以下の通りです。

①感度(感染している人が陽性反応を示す確率)
②特異度(感染していない人が陰性反応を示す確率)
③擬陽性(感染していない人が陽性反応を示す確率)
④事前確率(その集団の感染者の割合)
⑤陽性率(陽性反応が出る確率)
⑥陽性反応が出た時に実際に感染している確率

「ケース1」は引用例、「ケース2」はそれより②特異度が改善した場合、「ケース3」と「ケース4」は、現状の都のPCR検査の⑤陽性率6%を目標値、④事前確率を変数として、エクセルのゴールシーク機能を使って、④事前確率を求めたものです(緑は入力値、オレンジは計算値、水色はゴールシークで逆算して求めた値です)。

この結果、「ケース3」「ケース4」ともに、すなわち、②特異度に依存せず、④事前確率は8%前後であり、⑥陽性反応が出た場合に実際に感染している確率も85~100%と十分高いことがわかります。

都のPCR検査を用いた感染者のスクリーニングは、感染疑いが強い、新宿区や豊島区の夜の街で働く人を中心に実施していますが、⑤陽性率6%から逆算すると、対象とした集団の8%前後が感染者であり、かつ、陽性≒感染であることがわかります。これは、引用(⑥陽性反応が出た場合に実際に感染している確率が6.5%)の状況とは全く異なります。

これらの結果から言えることは、②特異度が十分高くない場合、PCR検査を用いたスクリーニングを④事前確率が低い集団に適用するのは効率が悪い、ということです。(「ケース2」のように、②特異度が十分高い場合、④事前確率に関わらずスクリーニングは有効です。)

ちなみに、PCRの②特異度が引用例と同じである場合、⑥陽性反応が出た場合に実際に感染している確率を目標値、④事前確率を変数として、⑥が50%を超えてくる④を求めたところ、1.4%であることがわかりました(「ケース5」)。すなわち、100人に対して1人以上が感染しているような集団であれば、陽性患者の半数が感染者であることになります。

クラスター班の、そして都の「疑わしい人を中心にPCR検査を行う」意味とその妥当性を私なりに確認できました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました