令和4年第3回定例会 総務委員会(1)~政策企画局「『都市強靭化プロジェクト(仮称)』の策定に向けた論点」について

福島りえこ,世田谷区,都民ファーストの会,都議会議員ブログ

続いて、政策企画局の報告事項「『都市強靭化プロジェクト(仮称)』の策定に向けた論点」について質疑をしました。

風水害への備えについて

 私が住んでいる世田谷区は、域内に高低差があることから、一面に降った雨が低地に流れ込み、内水氾濫が起きる傾向があります。都は、内水氾濫が起きるエリアを、50mmさらには75mm対策地区に設定し、下水道をはじめとした浸水対策、いわゆるグレーインフラを進めています。

加えて、雨水浸透施設や雨水タンクなどのグリーンインフラの設置についても助成するなどしてきました。。
 世田谷区は、グレーインフラの完成までにかかる時間の長さや、完成したとしてもキャパシティに限界があることなどから、グリーンインフラの推進に注力、都の補助も使いながら、雨水浸透施設や雨水タンクの設置を進めるとともに、区立公園の雨庭化や、世田谷区立保健医療福祉総合プラザに降雨の浸透機能を設けるなど、より多角的なグリーンインフラ施策を進めています。

 諸外国では、シンガポール、ニューヨークなども既に取組を進めています。

 一方で、今年の第2回定例会の総務委員会で紹介したように、常緑広葉樹種の植林には防災効果があり、これもグリーンインフラの効果のひとつといえます。

Q1 風水害をはじめ様々な自然災害のリスクが高まるなか、そして、震災時の火災の延焼を防ぐ効果もある、グリーンインフラの観点も加えるべき

A1(都市強靭化プロジェクト担当部長)
 都は、これまでも河川や下水道の整備に加え、貯留浸透施設の設置等の取組を推進。グリーンインフラは、自然環境が有する機能を社会における様々な課題解決に活用しようとする考え方であり、気候変動への適応など多様な効果が期待。本プロジェクトの取りまとめに当たっては、こうした観点も踏まえ、施策の強化を検討

通信環境の確保

 第2回定例会の総務委員会で、10年ぶりに見直された「首都直下地震等による東京の被害想定報告書」に関する質疑を行った際に、「主要な情報収集手段であるモバイル端末のための通信環境確保において、交換機等が設置されている、いわゆる通信ビルが重要であることが明らかになり、都として、災害対策の強化と、少なくとも1週間の燃料確保の方策を講じるべき」と訴えました。

NTTをはじめ通信事業者は、独自に72時間の電源確保などに取り組んでいると聞いています。

Q2 都としても都内にある通信ビルの電源の状況を調査するなど、課題の有無を検証するべき

A2(都市強靭化プロジェクト担当部長)
 通信事業者は、災害対策基本法における指定公共機関として、防災行政上重要な役割を有するものであり、防災に寄与する責務がある。そのため、都の地域防災計画において、災害に備えた設備の耐震化や発災時における重要通信の確保など、さまざまな対策を講じて、通信環境を確保することとなっている。本プロジェクトの策定に当たって、通信事業者との意見交換を実施しており、今後、関係局と連携して、こうした意見交換の内容を災害への備えに関する課題の検証に活かしていく。

「首都直下地震等による東京の被害想定報告書」で示された課題に対し、取り組んでいることを確認しました!

コミュニティについて

 コミュニティの強化は、全災害に共通する備えです。共通平成7年に起きた阪神・淡路淡路大震災では、自助共助による救出が8割、または97.5%だったことが知られています。「都市強靭化プロジェクト(仮称)」には、「多様な主体」として表現されていたが、コミュニティについて明記し、具体的な取り組みを練り上げるべきです。

 今定例会の代表質問で、「「都市強靭化プロジェクト」に、コミュニティの役割を入れるとともに、活性化に向けた取り組みを盛り込むべき」と提案し、本プロジェクトに、共助を担う役割として、コミュニティを位置づける、との答弁を得ています。そこで、

Q3 コミュニティの役割を明確にプロジェクトに位置づけたうえで、町会自治会といった、これまで都として支援してきた組織に属していない人にも、地域の防災の取組への関心と参画を広げる方策を具体的に講じるべき

A3(都市強靭化プロジェクト担当部長)
 様々な脅威から都民の命と暮らしを守るためには、自助、公助に加え、共助の機能を発揮することが重要。こうした観点から、今後、本プロジェクトの中で、コミュニティを地域における共助の担い手として位置づけていく。その上で、関係局や地元自治体とも連携し、地域の防災活動への参加が比較的少ない若年層等に対しても防災意識の共有を図るなど、地域の防災力の一層の向上に繋げていく

コミュニティは防災はじめ、子育て、見守り、地域包括ケア、と、多くの領域で重要です。生活文化局はじめ各局が事業を手掛けていますが、町会・自治会、商店街と、東京都として顏が見えているところに向けた取り組みが大半です。

若者層など、これまで関わってこなかった方への働きかけを強化することは重要です。私は半年に一度、テーマを決めて都政報告会を開催してきましたが、9月10日に実施した第10回都政報告会は「防災とコミュニティ」というテーマで行いました。この時の参加者に町会の加入率95%にしたという方がいらっしゃいましたが、住人に町会の存在に気づいてもらう取り組みを充実させるとともに、ハロウィンはじめイベントを活用している、とのことでした。楽しく参加いただけるイベントを組み合わせることは有効な方法のひとつです。

そこで、都が手掛けるコミュニティ関連の事業を評価する指標として、私からは「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」を提案しました。

ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)を評価指標に

「ソーシャルキャピタル」は、19世紀から存在する概念で、人々が持つ信頼関係や人間関係が豊かになることで、政治への参画、子供の教育、治安、地域経済、健康などに良い効果を与えるとされています。

アメリカの政治学者であるパットナムは、ソーシャル・キャピタルを測る指標として、地域組織や団体での活動の頻度、投票率、ボランティア活動、友人や知人とのつながり、社会への信頼度をあげています。そして、ソーシャル・キャピタルの構成要素に関する国際的な研究事例としては英国のシンクタンクが公表している「レガタム繁栄指数」があります。これは、世界各国の豊かさをさまざまな指標から算出するもので、2021年版のランキングでは、日本は167カ国中19位でした。ちなみに、指標を構成する項目のうち「健康」については、世界第1位となっており、その他の項目(経済面など)についても、日本はいずれも1桁か悪くとも30位代にランキングされています。ところが、「ソーシャル・キャピタル」に関するランキングだけは143位とかなり低くなっています。

ソーシャルキャピタルが低下すると、孤独死が増えたり、ひいては出生率の低下とも相関がある(内閣府 / ソーシャル・キャピタル:豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて)という結果もあります。各局が取り組むコミュニティ活性化の各事業が、確実にその強化につなげるべく、政策企画局が、人と人との関係性を評価する「ソーシャルキャピタル」のような指標を研究していただくことを要望しました。

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