Society5.0時代を生き抜く子供のための教育として、私は継続して、情報教育、プログラミング教育の強化を訴えてきました。2022年8月に政調代行の役についてからは長期的な課題解決に取り組む重点政策PTを有志と立ち上げましたが、そのひとつに「子ども・教育チーム」があります。そのメンバーである同僚の菅原直志都議、もり愛都議とともに、12/16に、ICT(情報通信技術)教育の先進事例である吉岡町立明治小学校(山崎栄寿校長)の視察にいきました。
吉岡町では、GIGAスクール構想に合わせて、ICT教育推進計画「HiBALIプラン」を策定、2020年11月に、一人一台環境と65インチパネルを整備し、ICT教育を推進しています。
視察を通じて、私は改めて以下の2点を確認することができました。
(1)小学生はテキストプログラミングができる(できないと大人が決めつけるべきではない)
(2)プログラミング教育は、これからの子供に必要とされる、「主体的で対話的な深い学び(新学習指導要領)」、すなわち、主体性や共創、試行錯誤、自己調整力といった能力を育む場として最適である。
プログラミング教育では、思い描いたことを表現し、試行錯誤して仕上げる、さらには論理的に考えないと達成できないなどの体験ができるが、従来の教科に比べて試行錯誤に必要な時間が圧倒的に短く(※)、体験を重ねやすい。
※ 先生が教えるという形での授業では、例題→実践→正誤の確認のサイクルは、1度の授業の中で多くても数回にとどまる
スポーツ選手が座学で育つことがないように、Society5.0時代に必要な能力は、Society5.0の環境で育まれるのは当然ともいえる。
授業の視察
「先進プログラミング教育」は、小学5年生を対象に「総合的な学習の時間」を使って行われています。生徒一人ひとりが「IchigoJam web」がインストールされた端末を持ち、3人で1グループを形成、あらかじめ決めた作りたいアニメーションの完成に向けて取り組むという内容で、この日は2回目でした。(1)作業、(2)発表、(3)振り返り、で構成されていました。
作業
グループを構成する3人のメンバーと相談しながら、コーディングと実行を繰り返し、理想とするアニメーションに近づけていきます。わからないことは端末にインストールされた「ヒントカード」を見て調べられるようにしていました。
【良い点】
・全生徒がテキストプログラミング、ローマ字入力を、無理なく実施(ミライシード、ムーブノートを日常的に利用しているとのこと)。
・「IchigoJam web」の画面をみて、他の生徒が改善案を提案する姿が見られた(プログラムとアニメーションの関係がわかっている)。
・(私がシミュレーションをする時に比べると)「実行(RUN)」に慎重。
・先生の「できなくても、もっとやってもいい」、「今日で完成しなくても次がある」という声掛けが印象的。
・「ヒントカード」が有効(命令文の説明だけでなく、バグも含めたトラブルを回避)。
【課題】
・一人がテキストプログラミング、他がヒントカードを見るなど役割分担が決まり気味。
発表
先生が選んだグループ(この日は2グループ)による現段階のアニメーションを、教室に設置された大画面を使ってクラスメイト全員で見たうえで、先生が優れた点を説明しました。
【良い点】
・2人で走る徒競走を表現したかったが、「IchigoJam web」が並列処理できないため、2画面にした(プログラムを同時に走らせる)事例と、活き活きとしたサッカーのゴールシーン(ドリブルからシュート、観客の盛り上がりを表現)が紹介され、クラスメイトの創意工夫に感心し、気づきを得ることができていた。
振り返り
生徒一人ひとりが授業を振り返って感想をテキスト(ローマ字)入力し共有、教室に設置された大画面で、感想の中で出現頻度の多い単語を選び(テキストマイニングにより自動的に抽出)、それに紐づく感想について、先生が紹介しました。
【良い点】
・手を上げた生徒、もしくは先生が指した生徒の意見だけが紹介される従来方式とは異なり、全員が意見を表明することができて、その中でも多数を占める意見を扱うことができる。
・1回目の授業では苦手とする子が多かったが、2回目になって「頑張る」などの前向きな言葉が増えた、と先生が総評。
・「楽しくできた」、「もっとすごいアニメーションをつくりたい」、「難しいけど繰り返してできる」、「話あって何度も修正」などのコメントが紹介された。
授業研究会
引き続き、参加した明治小学校の先生をはじめとする関係者による授業研究会が行われました。冒頭に、群馬県教育委員会事務局 総合教育センター所長の挨拶があり、生徒の能動的・前向きな姿勢を評価されるとともに、松田孝氏のコンサルテーションに対する謝意を述べられました。
振り返り
グループディスカッションで良い点と課題をあげ、発表しました(私も参加)。
・生徒達が能動的に学べていること、創意工夫や試行錯誤がなされていることを評価する意見が多数
・先生の声掛け(答えを教えるのではなく、サポートに徹し、試行錯誤を促す)を評価する意見が多数
・高校の情報科を担当する教員が、授業を高く評価
松田孝氏による講演
最後に、本取り組みのコンサルタントである、合同会社MAZDA Incredible Labの松田孝氏による講演がなされ、生徒のの主体的・能動的な姿勢が見られた発表会を評価するとともに、生徒自身が自らの理解度を評価し、その結果を踏まえて先生が指導できる新しいサービスの説明がありました。
まとめ
小学5年生が、プログラミング言語を習得し、テキストタイピングによる試行錯誤を通じて、コンピュータサイエンスを体感することができていました。また、先生の生徒への関わりが、教えるのではなくサポートに徹していること、自由な環境でも子供達が自律的に振る舞う様子が印象的でした。以下は質疑応答になります。
Q 先生方、保護者は受け入れることができたか
A(山崎校長)当初、先生方からは反対の声もあったが、生徒の姿を見て変わった。保護者は学校の特徴のひとつとして評価。
Q 中学、高校への連続性は?
A(教育センター長)吉岡町の3小学校で実施している「HiBALIプラン」は3年で終了、どう広めるか、町内の1中学校にどう展開するかは今後検討。
視察に同行した、菅原直志都議、もり愛都議のお二人から、「理数教育課と思っていたら全く違った」という感想を頂いたことが印象的でした!
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