「国際金融都市・東京」構想2.0
小池都知事が就任直後の平成29年、国が国内産業の立て直しとデフレ脱却とを目的に異次元の金融緩和策を続けるなか、東京が世界に冠たる国際金融都市の地位を取り戻すため、金融の活性化に向けた構想「国際金融都市・東京」を発表しました。ここには、外国企業誘致や海外プロモーションなど、海外に目を向けた施策と計画が描かれており、「国際金融都市・東京」構想2.0となって、現在も取り組みが進められています。
私はかねてより、外国企業誘致にあたっては件数だけでなく質を確保することが重要と申し上げてきました。株価上昇など日本の市場が世界から注目を集めている今、悪質な企業や信用情報に重大な問題ある企業を誘致しないよう、信用調査をしっかり行いながら、金融系外国企業誘致の質を確保し、確実に東京に進出・定着させていく必要があります。
都は、昨年の事務事業質疑での私からの質問に対して、企業数に加えて、企業価値等の合計値を加味する形への見直しを検討する旨答弁し、前向きな姿勢を示しました。これを受けて、
Q 改めて、誘致企業の質の確保に向けこれまでどのように取り組み、どのような成果があったか伺う。
A(特区・規制改革担当部長)
○ フィンシティ・トウキョウが実施する本事業は、昨年度から件数だけでなく質の強化を図っている。加えて、誘致等の過程で信用調査を実施し、より質の高い企業がその対象となるよう努めている。
○ 昨年度は、例えば、約40の国・地域で事業展開し6,000名を超える従業員を擁するフィンテック企業や、北米・欧州を中心に事業展開し、約60億ユーロを運用している資産運用業者をはじめ11社を発掘、誘致した。
○ 今年度は、件数に加えて、資産運用業者の資産運用残高を合算して100億ドル以上、フィンテック企業は企業価値を合算して10億ドル以上を新たな目標値として事業を実施している。
我が国の経済にもインパクトの大きい資産運用業者やフィンテック企業の誘致に成功した点については、評価します。こうした改善を不断に進めることによって、都内経済や都民生活の向上に繋がる外国企業を発掘・誘致する精度が高まり、ひいては国際金融都市・東京の確立に寄与するものと考ます。そこで、
Q 本事業について、来年度どのように取り組むか伺う。
A(特区・規制改革担当部長)
○ 来年度は、誘致企業の更なる質の強化と着実な東京への進出に向けた取組の強化を図っていく。
○ 質の強化に向けては、年度をまたぐ発掘・誘致活動の必要性を踏まえ、新たに3か年で、例えば、資産運用業者の運用資産残高を合算して500億ドル以上、またフィンテック企業の企業価値を合算して50億ドル以上をフィンシティ・トウキョウの活動目標とする等の検討を進めている。
○ また、東京進出を決定する投資計画書の取得に加え、実際の進出も評価する取組を行うことで、外国企業誘致の成果がより確実に得られるようにしていく。
来年度に向けた検討の方向性については理解しました。特に、サステナブルファイナンスの推進やイノベーションの創出に海外からの資金を呼び込むうえで海外の資産運用業者は重要な存在であり、運用資産残高や、企業価値を目標とする方向での検討や、下手をしたら内部審査の甘い起業のほうが提出しやすい投資計画書だけでなく、実際の進出も評価するなど、より良質な起業誘致につながる取り組みに改善されたことを評価します。
Q 来年度、海外資産運用業者の誘致促進としてどのような取組を行うのか伺う。
A(福永特区・規制改革担当部長)
○ 都は来年度、海外資産運用業者の誘致に向けた施策を強化する。
○ まず、東京進出する際の補助について、金融商品取引法に基づく自主規制機関への加入費・年会費や、運用業務に経営資源を集中するためのミドル・バック業務委託費用等を補助対象経費に加えるなど拡充する。
○ また、フィンシティ・トウキョウによる発掘・誘致事業について、自ら現地の有望企業を訪問し、年度にこだわらない関係構築により誘致につなげる活動を強化する。
○ こうした取組により、資産運用プレーヤーの集積を加速し、アジアをリードする国際金融都市・東京を実現していく。
現場のニーズを踏まえた施策の強化を評価します。さらには、フィンシティ・トウキョウ自ら現地の有望企業を訪問し、年度にこだわらない関係構築により誘致につなげる活動を強化するとのことですが、インターネットやオンラインでのやり取りが広がるなか、わざわざ日本に外国企業を誘致するのは、人と人がつながることで、仕事が展開したり、日本経済や産業に対する解像度があがり、情報が行き来するなど、イノベーションにつながるからです。その意味で、国際金融都市・東京を実現するために、自ら出ていくことも大変重要であり、期待すると述べました。
スタートアップ戦略の推進
私たちからの都内産業振興、なかでもスタートアップの支援が重要であるとの提案を受け、都は、新たな成長戦略における重要な柱の一つに、スタートアップの支援を位置づけました。
私は、テーマを設け、専門家を招くとともに都民の皆様と意見交換をする都政報告会を半年に一度、定期的に開催してきました。これまでマンション防災、学校教育におけるAIドリル教材の導入、グリーンインフラの推進、子供向けデジタル体験向上プロジェクトなど、都政報告会での意見交換から都の事業につながったことは多数あります。
そして、次の13回目となる都政報告会では「都が進めるスタートアップ戦略」と題して開催、専門家を招き、都民の皆様と意見交換する予定です。これに向けて準備を進めるなかで、昨年以来、多くの起業経験者や個人投資家の皆様とご縁を持ち、意見交換するとともに、必要に応じて都につなげるなどしてきました。
そこで興味深かったのが、起業後の事業を軌道に乗せるフェーズにおいて、お金の集め方や、人間関係などのできれば起業経験のある人材が必要だが、売り上げが数千万円以下のレベルでは、そのような経験値を持つ人材は人件費が高く雇用できない、よって、エコシステムの中の人間関係のなかで、例えば、先輩が後輩の起業を人間関係で手伝ってきた、という実情です。
都は、TIBにて「イベント会場」、「協創ワークスペース」、「ブース展示」に加え、「コンシェルジュ(個別相談)サービス」を開始していますが、相談先ではなく、会社の一員として同じ目標に向かって努力できる、先輩、経験者が求められています。
Q エコシステムの形成において、現在、国内で自然発生的に起業家の人間関係に基づいて行われている起業支援を参考に、シーズ期のスタートアップに対して、起業経験者を定期的に派遣して支援をする枠組みを設けることが有効であると考えますが、都の見解を伺う。
A(スタートアップ戦略推進部長)
○ シリコンバレーをはじめとする海外のエコシステムでは、新規事業の立ち上げ経験が豊富なエンジェル投資家などの多くのプレイヤーが、メンター役としてきめ細かな支援を行うことにより、スタートアップの成長に貢献しているとされている。
○ 東京においても、挑戦する若者を応援したいという熱意を持った起業経験者やエンジェル投資家は多く、こうした経営のスキルを持った方々とスタートアップを結び付けていく。
○ 企業のメンター役やアドバイザーなどを担うことができる人材をTIBのサポーターとして登録し、希望するスタートアップと引き合わせていく。
引き合わせるところまでは計画されていることがわかりましたので、私からは、引き合わせた後の取り組みについて提案をしました。
起業を応援する人には2種類います。本当にその企業をユニコーンにまで育てようと応援する人と、自分がした投資を回収したい、利益を得る方法として関わる人です。
メンター役という言葉がありました。私はメンターを都が派遣するのが良いと考えます。
派遣されたメンター
・一週間に一度、スタートアップの経営会議に参画
・スタートアップを評価し、次の支援につなげるべきかどうかを判断
・定期的に集まり、現状を踏まえたユニコーン創出に向けて必要な施策を都とともに検討
支援を受けるスタートアップ
・派遣されたメンターが自社のために同じ目標に向けて社員のように働いてくれたかを評価
このような仕組みにすることで、都は良質なメンターを政策立案のサポート部隊として抱えられるだけでなく、支援をしたスタートアップの成長に関する情報は都に集まります。引き合わせるだけではこれが叶いません。
必要なのは、今のままのエコシステムのスケールを大きくするのではなく、なぜ、日本にはユニコーンが生まれないのかを分析して、そして解決策としての施策を設計することであり、検討を求めました。
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