「令和6年 事務事業質疑」産業労働局①~女性活躍の推進と就労支援

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私が都議会議員になった理由の一つが、女性をはじめとする多様な人が能力を発揮できる社会にしていくことです。事務事業質疑では(予算・決算以外で)全事業について質疑ができる貴重な機会です。

女性活躍について

 2023年のジェンダーギャップ指数は世界125位と、日本は過去最低をまたもや更新しました。政治、そして経済分野の指数が改善していないためであり、民間企業における女性の地位の低さや賃金格差は引き続き課題となっています。

 小池都政以降、私たちの求めもあり、都は、女性のキャリアアップに向けた支援や、妊娠や出産、子育てと仕事を両立できる職場づくりに対するサポートなど、女性活躍を後押しするための事業を継続的に拡充してきました。

男女間賃金格差の解消について

 女性活躍はジェンダー平等の観点だけでなく、近年、労働力人口減少への対応や経済成長の切り札としても認識されつつあります。各企業でも労働力の増加や多様な視点によりイノベーションを創出するメリットが広がりつつあり、女性活躍推進法に基づく取組も進んできています。

 一方、処遇面に目を向けると、国の調査では女性の平均賃金は男性の約7割であり、国際的に見ても依然として大きな差があります。

 この状況を受け、都は、私たちが提案した、短時間労働者などの非正規従業員でも登用が可能な役職の新設などを支給要件とする「女性活躍の推進に向けた雇用環境整備促進事業」を今年度創設し、男女間の賃金格差解消を後押ししています。

Q こうした女性活躍の支援は男女間賃金格差の解消や人手不足に悩む企業にとって大きな後押しとなるが、現在の取組状況を伺う。

A(雇用就業部長答弁)
○ 都は、今年度、働く女性の賃金引上げや処遇向上など女性が活躍する職場づくりを目指す中小企業に対し、奨励金を支給する取組を新たに開始
○ 具体的には、中小企業が女性活躍を推進するノウハウを学ぶセミナーを受講し、専門家の派遣を受け、女性管理職の増加や短時間勤務等の非正規従業員が登用可能な役職の新設などに取り組む企業に対し、30万円の奨励金を支給
○ 9月末までに、128社がセミナーに参加し、そのうちの26社から奨励金の申請を受け、3件の交付決定を行っている
○ また、奨励金の支給の際に女性活躍推進法に基づく行動計画や男女の賃金の差の公表も求めるなど、課題の解消に向けた取組を一層促す仕組みとしている

 男女間賃金格差の解消や働く女性の処遇改善に向けた対策は始まったばかりであり、こうした支援を加速させていく必要があります。今後も引き続き企業への後押しをお願いしました。

女性管理職比率と女性活躍のための環境整備の進捗確認

 賃金格差の解消には、女性管理職の育成も重要です。また、私たちは、子供を持ちたいと思う夫婦が子供を持つための取組みとして、不妊治療卵子凍結に対する行政支援を求め、実現するとともに、企業においてもこれらを受けるために必要な休暇制度の整備等などに対する取組みを求めてきました。

Q そこで、令和5年度の都の調査において、管理職に占める女性の割合はどの程度であったのか、また、企業に対する女性活躍に向けた支援の取組状況について伺います。

(事業推進担当部長答弁)
○ 都は、職場における男女平等の推進の実態と課題を把握するため毎年調査を実施しており、令和5年度の管理職に占める女性の割合について、課長以上の場合は10.6%、「係長相当職」も含めた場合は15.8%となり、ともに上昇傾向
○ 女性活躍の推進に向けては、企業における不妊治療・不育症治療に必要な休暇制度の整備等に対して奨励金を支給しており、今年度は194社に対し交付決定
○ また、卵子凍結のための通院に利用できる休暇の導入や、凍結や保管の費用への補助を行う福利厚生制度の整備等に取り組む企業へ助成しており、今年度は23社に対し交付決定
○ このほか男性育業を促進するため、その休業中に代わりとなる社員を確保するなどの企業の取組に対し、今年度は9月末現在で161件の奨励金を支給して支援

 これらの取り組みは、性別や年代によらず、仕事への前向きな取り組みが適正に評価される環境整備につながると考えます。引き続きの取り組みを求めました。

男性役職者を対象とした啓発の重要性

女性管理職や女性リーダーの育成について、私は、日経ウーマンが主催するウーマン・オブザイヤー2011の大賞を受賞した際に、女性活躍について講演したり、国内外のリーダーとパネル・ディスカッションをするなどの機会に恵まれました。その際に気づいたのが、女性管理職や女性リーダーが生まれる背景には、性別によらず登用してくれた上長がいたこと、その結果、責任ある立場で経験を詰むことができたので、その経験をもってさらに上の役職を目指すことができた、ということです。

 この経験を踏まえ、令和2年の事務事業質疑では、女性役職者の育成を目的としたイベントの対象を女性だけでなく、男性役職者をも対象にする必要性について述べました。これを受け、男性役職者を対象とする事業が拡充されたことを評価するものです。

 しかしながら、先に述べたジェンダーギャップ指数が示すように、いまだ取り組みは途上にあり、企業の現場でも、女性管理職を増やすために必要だと思う施策として、
 「経営層が女性活躍推進のリーダーシップをとること」、
 「性別に関係なく配属を行うこと」
が重要とされています。

 女性管理職を増やすためには、経営者の理解やマネジメント、女性が多くの経験を積み重ねることができる環境づくりを加速する必要があります。

Q 経営者にはまだまだ男性が多い現状を捉え、どのように働きかけを行っているのか伺う。

(働く女性応援担当部長答弁)
○ 都はこれまで、女性経営者や女性首長が参加する「NEW CONFERENCE」「びじょんネットワーク」等において、その活躍等を後押し。
○ 女性管理職の育成には、男性も含めた経営者の意識改革や職場の文化の変革も必要であることから、昨年度から新たに、「東京女性未来フォーラム」を開催。
○ その中で、男性経営者からも、女性の登用を進め、誰もが能力を発揮しやすい職場づくりに向けた取組を紹介。参加企業とともに意思決定層への女性の登用を進めていくことなどを宣言。
○ また、男性管理職向けに、女性のリーダーを育成するノウハウ等を習得できる研修を年8回実施。今年度は10月末までに4回開催し79人が参加。
○ こうした取組を通じ、男性の意識改革を促し、行動変容につなげていく。

女性と経済をテーマにしたAPEC2011に、女性イノベーターの一人として出席した際に、ヒラリー・クリントンさんが「女性活躍の推進にはソーシャル・ウィル(社会の意思)」が重要だと述べておられました。引き続きの機運醸成を求めました。内閣府発行「共同参画」からの抜粋です。

「東京くらし方会議」における年収の壁への対策の進捗確認

 女性の登用を進める上での課題は多岐に亘り、男性の意識改革のほか、「年収の壁」もその1つに挙げられます。

私たちの「103万円・130万円の壁対策」の要望を受け、都は昨年度、年収の壁を含む働き方や生き方を議論する「東京くらし方会議」を設置しました。

Q 会議において議論された内容と、議論を踏まえた取組について伺う。

(働く女性応援担当部長答弁) 
○ 昨年度、「東京くらし方会議」では、委員の意見をまとめた意見集を公表。正社員で働き続けた場合と専業主婦の場合では、生涯収入に約2億円の差が生じることを明らかにした。
○ また、会議の中で、社会保障制度に関する正確な理解を促していくことが重要との意見あり。
○ 都は今年度、会議での議論を踏まえ、「年収の壁」等についての正確な理解の促進と、キャリア・ライフを考えるきっかけを付与する動画を配信。
○ また、誰もが自分事として働き方の見直しを検討できるよう、世代ごとに働き方を変更した場合の生涯収支を試算できるツールを公開
○ これらについて、SNSや交通広告等を通じて広く周知し、女性活躍を促進

 先月の衆議院選挙の結果を受け、国では103万円の壁について具体的な議論も始まっていますが、待遇面に加え、遣り甲斐、つまり先に述べた「性別や年代によらず、仕事への前向きな取り組みが適正に評価される」環境整備も大切に思います。両面からの取り組みを改めて要望しました。

「TOKYOウィメン・ビズ・サポート」の活用状況

 これらの女性活躍関係の事業の対象になる企業数は合わせても数百社程度に留まります。一方で、制度融資を利用する中小企業は全体の52%、約22万社を数えます。これを女性活躍推進事業の拡大に活かせるのではないかとの私からの提案に応え、都が設けたのが、女性活躍の推進を後押しする制度融資のメニュー「TOKYOウィメン・ビズ・サポート」です。

Q まず、この「TOKYOウィメン・ビズ・サポート」のこれまでの利用実績について伺います。

(金融部長答弁骨子)
〇 都の制度融資では、女性活躍の推進に取り組む中小企業を支援しており、令和2年度の制度開始から令和6年9月末までの融資実績は、72件、約25億8千万円
〇 令和5年度は24件、約7億4千万円、今年度は9月末時点で既に31件、約12億2千万円と昨年度実績を上回っており、利用は増加

「TOKYOウィメン・ビズ・サポート」の利用実績が徐々に延びていることを確認しました。

 現状は、女性活躍関係の事業に手を挙げた事業者が、「TOKYOウィメン・ビズ・サポート」を利用できるようになっていますが、制度融資のなかでも条件が優遇されていることをアピールすれば、女性活躍に興味がない事業者に対して訴求することも期待できるのではないでしょうか。

Q そこで、女性活躍に取り組む中小企業の裾野を一層広げるため、女性活躍の推進を後押しする制度融資のメニュー「TOKYOウィメン・ビズ・サポート」を拡充するとともに、制度融資を利用する事業者に、女性活躍の推進に繋がる各種事業を効果的に周知していくべきと考えますが、今年度の取組について伺います。

(金融部長答弁骨子)
○ 都は、働き方改革に自発的に取り組む中小企業が、女性活躍の状況を国のデータベースで公開した場合に、負担軽減を図る特例制度により、資金繰りを支援
〇 今年度は、より多くの事業者による女性活躍に向けた取組を促すため、融資利率を優遇する新たなメニューとして設けるほか、利用の要件となる対象事業を拡充
○ また、多くの中小企業とのネットワークを有する金融機関を通じて、この融資メニューの紹介に加え、女性活躍を後押しする都の支援策を周知するほか、働く女性を応援する企業向けのセミナー等でも広くPR
〇 これらの取組により、女性の活躍推進に取り組む中小企業を後押し

 例えば、経営者や役職者が、女性活躍に関するシンポジウムを定数の制限がないオンラインで視聴し、それを踏まえた取組みを宣言するなどの要件にすれば、対象となる企業数の制限をなくすことができます。より多くの事業者が参加できる要件の検討を要望しました。

就労困難な人に向けた支援

シングルマザーなど女性への就労支援について

 私たちはこれまで、女性が抱える様々な実情に寄り添い、就業相談等を身近な地域で受けられるよう都に求め、都は令和4年度「女性しごと応援キャラバン」を開始しました。

 また、今年度からは、これも私たちからの求めに応じて、都営住宅に入居するひとり親に対し、住居や児童手当といったセーフティネット系のサービスの提供だけでなく、自らが持つ能力と可能性に気づくことを目的とした、出張型の支援も開始したことを評価します。

Q こうしたきめ細かなサポートを通じて、東京しごとセンターの様々な支援メニューにつなぎ、女性の就労を後押ししていくことが重要であるが、都の取組の状況を伺う。

(事業推進担当部長答弁)
〇 都は、育児中の女性等を対象としたアウトリーチ型の就労支援として、セミナーと就業相談会をセットにした女性しごと応援キャラバンを都内各地で実施
〇 実施に当たっては、SNSや求人情報誌など様々な媒体を活用するほか、区市町村とも連携して周知を行い、10月末時点で53回開催し3,332人が参加
〇 また、今年度新たに関係局と連携し、都営住宅に入居するひとり親などの女性を対象としたセミナーや生活相談等を組み合わせた就労支援を都内各地で実施、10月末までに6回開催、43名が参加
〇 いずれの参加者もしごとセンターに登録するなど継続的な支援につなげている

 しごとセンターは毎年3万人強が新規利用し、約4割が就職に結びついていると聞く。

 私はこれまで3回、都営住宅入居者向けの取組を視察させていただきましたが、自身の能力の過小評価に加え、就労に求められる能力の過大評価が重なり、就労に向けて踏み出せない様子も改めて認識したところです。また、セミナーでは、現時点では子育てなどで就労時間が制限されていても、長期的に社員を育てる意欲がある企業の存在を知らせたり、就労に生かせる能力に気づかせる工夫などが盛り込まれており、終了時には参加者が就労に前向きになっている姿が印象的でした。

 引き続き、この事業を通じて一人でも多くの方をしごとセンターにつなぎ、希望する就職を実現できるよう取り組んでいっていただくよう、お願いしました。

困窮者への就労支援について

 所得格差が拡大し、これまで中間層だった方も炊き出しに並ぶといった報道もあります。また、労働人口の大きなボリュームゾーンである就職氷河期世代が中高年となる中、このまま状況が改善されなければ多くの方が貧困に陥る可能性も指摘されています。

 こうした方々の就労の後押しが急務であるが、無職や非正規の方が転職するにしても失業給付が少なく、仕事を辞めてからの就職活動は死活問題です。

 都は、私たちの要望を受け、令和2年度からトライアル就労を通じて収入を得ながら正規雇用に結びつける事業を開始しており、困窮している方にこそ、こうした支援が届かなければなりません。

Q そこで、こうした支援策について、どのような成果があったのか、また、現在の取組内容を伺う。

(雇用就業部長答弁)
〇 これまで都は、就職氷河期世代や正規雇用を目指す方に対するトライアル就労による支援を実施し、昨年度は、1,989名の求職者を企業に派遣し、618名の再就職を実現
〇 今年度は、建設や運輸等の人手不足業界の仕事を理解するセミナーや、業務に必要なスキルをeラーニングにより習得する講座を組み合わせ、採用意欲の高い企業への就職を後押しできるよう充実を図っている
〇 また、リスキリングのノウハウを専門家が伴走型で助言しながら、企業の現場で2か月間派遣により働き正社員として就職するきめの細かい支援を実施

 知事選前には、都庁舎下などでのNPOによる食料支援と福祉事業の充実を訴える報道が繰り返されました。既に福祉局には、福祉事業を紹介するなどしてきたことを確認しているが、特にコロナ禍以降は、若い人や職を失った人も見かけるとの報道もありました。

 先に述べた都営住宅にお住まいのシングルマザーへの就労支援と同じように、産業労働局には、自身の相談先を福祉だと思っている方に、「収入を得ながら就労にチャレンジができる」支援や、職業訓練など都の充実した就労支援を伝える取り組みが必要だと思う。支援機関と連携するなど、困窮している方に必要な情報が届くようしっかり取り組むよう、お願いしました。

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