「令和6年 事務事業質疑」産業労働局③~都内一次産業の支援、スポットワーク対策

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一次産業振興

「新東京都GAP認証制度」取得者へのインセンティブの提案

 都は、適切な工程で農産物を生産する「新東京都GAP認証制度」を推進しています。東京農業の持続的な発展に向けては、食品安全や環境保全など高い意識を持った認証取得者を増やしていくことは重要である一方で、農業者からは、「やっと取得しても販売上のメリットが少ない」という声も聞かれます。

Q 認証取得者を増やすためにも、農業者がGAP認証を取得するメリットを実感できる取組が重要だと考えるが、都の取組状況について伺う。

(安全安心・地産地消推進担当部長答弁)
〇 都は、食の安全や生産性の向上に取り組む新東京都GAPの認証取得者の収益向上等に繋がるよう、認証農産物の流通拡大に取り組んでいる
○ 具体的には、駅直結の百貨店や大手スーパーなど都内8店舗で、GAPの意義を消費者にPRするGAP認証農産物の販売イベントを行う取組を開始
○ また、バイヤーを認証取得者の畑に案内し、生産管理を紹介するとともに直接商談を行うツアーを9月と10月に開催
○ さらに、来年2月には、大規模な食品展示会において、認証農産物の展示や生産者を紹介するPR集の配布を行う等、販路拡大につなげていく

 販路拡大を中心に支援がなされていることを確認しました。実際、例えば後継者が新しい品目を生産し、新規の販路を開拓する際には、GAP認証により信頼性を担保できるという効果があるとも聞いていますが、インセンティブとして十分ではありません。

 農業者が「GAPを取得して良かった」と思えるよう、新東京都GAPを取得した事業者が都の農業振興関連の助成を受けやすくなるなど、認証を取得したくなる制度設計を要望しました。

「トウキョウX」の研究再開の提案

 「トウキョウX」は都が開発したブランド豚で、柔らかい肉質や甘くさっぱりとした脂が特徴であり、根強いファンがいます。私もその一人です。しかし、スーパー等で見かける機会は少なく、その要因として生産農家が少ないことが挙げられます。

 畜産経営を新たに始めることは、餌代や防疫対策など、農家にとって負担が大きいうえ、東京では周辺の住宅への影響等もあって容易ではありません。都は、他県を訪問し生産農家の開拓に取り組んでおり、現在は、東京以外に4県で生産されていると聞いています。

Q そこで、トウキョウXの生産拡大に向けた、都の取組状況を伺う。

(農林水産部長答弁)
〇 都は、最新の防疫体制を備えた青梅畜産センターにおいて繁殖用の豚の生産を行うとともに、生産農家を増やす取組や飼育等のサポートを実施
〇 今年度は、都外の畜産団体を訪問して品質の高さや都の支援策をPRしたほか、現在生産する10件の農家に対して飼育方法に関する相談等にきめ細かく対応
○ また、畜産農家が購読する新聞等に、トウキョウXを生産するメリットなどの広告を掲載するとともに、生産者の声や販売の様子を紹介する動画を配信するなど、生産意欲を高める取組を行った

 トウキョウXを生産することで、高い収益が確保できれば、生産農家は増加します。東京に美味しいブランド豚があることを、より多くの方に知っていただくことはもちろんのこと、トウキョウXが平成9年7月に合成系統豚と認定されてから27年が経過するなか、生産者が増えにくい理由である、「出産頭数が少なく、育てにくい」という課題を克服した種の開発にも改めて取り組むべき時期にあると考えます。生産拡大に向けた取組も進めるようお願いしました。

グリーンツーリズムの推進

 農業経営については、資材価格の高騰など厳しい環境にありますが、その中にあっても、経営の多角化などへ意欲的に取り組む農業者が増えています。

 私はこれまでも、多摩エリアでの「グリーンツーリズム」の可能性を検討する必要性を指摘してきました。農林水産省の平成4年の資料によれば、グリーンツーリズムとは、農村と都市が相互に補完し合い、共生していくため、「緑豊かな農村地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ、滞在型の余暇活動」であり、栃木県のNPO法人が2012年から取り組むグリーンツーリズム事業は、事業開始以来、昨年は最多の宿泊数を数えるなど、息の長い取り組みが目を結びつつあるとのことです。

 東京の農地には、都心から近いという強みがあります。このような取組を広げることで、都民の方々にとっても東京の農業のみならず一次産業への理解促進や、さらには多摩エリアの活性化にもつながると考えます。

Q そこで、意欲ある農業者による収益力の向上につながる取組に対し、都はどのような支援を行っているのか、伺う。

(農林水産部長答弁)
〇 都は、農園のブランド化や六次産業化など経営改善にチャレンジする農業者に対する支援を実施
○ 具体的には、専門家を派遣し、農業者のニーズに応じた助言を行うほか、助言等に基づく新たな取組に対し経費を助成。10月末時点で、デザインやマーケティング等の専門家を313回派遣するとともに、農園のロゴマークやホームページの作成などへの助成について35件採択
○ この中で、旬の野菜の収穫体験ができる農家カフェの集客力向上に向けた経営分析や、自らが生産した野菜を使ったソースなど加工品の開発に対し支援を実施

 生産以外に事業を広げようとチャレンジする農業者を後押しすることは、東京の農業振興、ひいては貴重な緑である東京の農地の保全にもつながります。

 加えて、一都三県に住む人口が日本の総人口の3割を占めるなか、帰省先も都会という子供も増え、一次産業に触れる機会もなくなっています。6次産業の中の対象にグリーンツーリズムも含め、これを広げることは、東京の子供達に田舎を持たせたり、さらには一次産業に対する理解を深め、持続的な消費につながる賢い消費者に育つ(エシカル消費)、さらには、就労の選択肢に入ることにもつながると考えます。

 このように、東京の農業が果たせる役目は少なくありません。引き続き、農業者に寄り添った支援を行うこと、その中にはグリーンツーリズムの拡大も視野に入れることを求めました。

林業振興のための「多摩木材センター」の拡張と「混植」の検討の提案

 都は、にぎわい施設などに多摩産材を活用する取組を後押ししており、駅舎や商業ビル等、多摩産材を使った施設が着実に増えています。こうした需要に応えるには、山林で伐採・搬出された丸太を円滑に製材所等に流通させることが重要です。

 しかし、多摩産材の丸太を取引する唯一の市場である「多摩木材センター」の現状の規模では、搬出量の増加に対応できず施設の老朽化も進んでいることから、都は機能強化を検討していると聞いています。

Q そこで、多摩木材センターの機能強化について、都の検討状況を伺う。

(農林水産部長答弁)
〇 都は、多摩産材の流通量の増加を図るため、日の出町にある多摩木材センターの機能の強化に向け検討
○ 現在、市場を管理運営する多摩木材センター協同組合と、必要な規模や効率化に繋がる設備等について検討を進めている
〇 また、これと並行して野生動物等への影響など周辺環境の調査を実施

 センターからは、供給量拡大に向けて、選木機の導入や敷地面積の最大限の拡張を求める声が届いています。こうした市場機能の拡張は、森林循環を促進していくうえで重要であり、着実に進めていただくよう要望しました。

 また都は現在、伐採した場所に花粉の少ないスギやヒノキを植林していますが、林業の担い手不足が進む中、広葉樹の植林についても検討するべきではないでしょうか。広葉樹には、

・育成の速度が遅いため、伐採の頻度が少ない
・家具やフローリングに用いられる広葉樹材の輸入が減少し、国産広葉樹の需要が高まるなか、針葉樹より取引額が高い

という特徴があります。また、針葉樹だけでなく広葉樹も植えることを「混植」と呼びますが、「混植」には、

・病気の感染拡大や害虫の大発生を抑える。
・水の浸透能が増し洪水や渇水を防いだり、様々な根が張ることで土砂崩れにも強くなる。
・広葉樹は秋に色づいたり枝ぶりが多様になり、景観が美しくなる
・生物多様性の担保

といった効果があるとされます。以上の理由から、広葉樹などへの植え替えも、事業設計において考慮することを求めました。

適正な労働環境の確保について

スポットワークに関する啓発

 近年、面接や履歴書等が不要で、空き時間に単発で働く、いわゆる「スポットワーク」や「スキマバイト」が急速に拡大してます。こうした働き方は、必要な働き手をタイムリーに確保したい企業と好きな時間に自由に働きたい求人側双方のニーズに合致し、人手不足の解消に一役買っています。

 一方、こうした働き方は、社会保険に加入できず、また実際の現場では「労働条件が事前の内容と違った」「報酬が適切に支払われなかった」などの問題も生じており、極めて深刻なケースでは「闇バイト」と呼ばれる犯罪に巻き込まれることも危惧されます。

Q 都は、スポットワークの求人企業や働き手に対し、適切な啓発を行うべきと考えるが、その取組について伺う。

A(雇用就業部長答弁)
〇 都はこれまで、非正規労働者の方にとって働きやすい職場環境を実現するため、毎年11月を非正規労働月間と定め、労働相談情報センターにおいて、労働セミナーや相談会の開催、電話等での相談を実施
○ 今年度は、使用者・労働者の双方を対象に、副業・兼業をめぐる動向等に関するセミナーを開催し、いわゆるスポットワークの注意点やそうした働き方を紹介するプラットフォームを利用する場合のリスク等についても周知
○ こうした取組を通じ、時間を効率良く活用する新しい働き方が、適切に行われるよう啓発

 今月「フリーランス新法」が施行され、ようやくそうした働き方をする方への取組が進み始めたように、新しい事業形態が制度化されるには時間がかかります。既に報道でも問題が指摘されているなか、スポットワークについて、都ができることに着手することを評価するとともに、事業者にも参加を呼び掛けることを要望しました。

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