民間調査によれば、2040年には国内で1100万人分もの労働力が不足すると予測され、労働力不足に対するあらゆる取組みが必要です。知事は第4回定例会の所信表明で、「人が制度に合わせるのではなく、これからは人の生き方に制度を合わせる」と語りました。都としても、育児や介護、高齢化などどんなライフステージにあっても、働く意欲のある都民が活躍できる環境整備をさらに進めていくべきです。
私が「ウーマンオブザイヤー2011」大賞を受賞して以降の1年間、様々な女性活躍のシンポジウムにゲストとして呼ばれましたが、そこでスウェーデンでは勤務時間の長さに関わらず管理職になれることを知りました。ここから取り組みがはじまった時短勤務でも管理職になれる中小企業への支援が、多様な正社員制度等の普及へとまた一歩前進しました(女性の手取りを増やす取組)。
また、学生起業家とのTIBでの意見交換から受けた指摘、利用者のステイタスを明らかにする仕組みについても導入が決まりました!(TIB利用者のステイタス把握)
女性の手取りを増やす取組
特に未活用のエネルギーとされているのは、女性の力です。我が国の女性活躍は、緒についたばかりであり、出産などのライフイベントで、キャリア形成との二者択一を迫られたり、家族のケアのため働く時間を削るのは、いまだ多くの場合女性です。男女間の賃金格差も主要7カ国で最も大きく、能力を正しく評価し女性の手取りを増やす取り組みが求められています。
私たちは、こうした状況を是正していくことを都に求め、女性のリスキリングやキャリアアップの支援などが進んでいます。
Q 都は、女性が仕事を通じて力を発揮していく流れを確かなものとするため、時短勤務でも管理職になれるなどの先進事例を中小企業に展開していくことにより、手取り収入を増やし将来の安心にもつなげる取組を一層強力に推し進めていくべきであると考えますが、松本副知事の見解を伺います。
A(松本副知事・産業労働局)
○ 女性が仕事を通じて持てる力を存分に発揮し、経済的な自立や将来への安心を手に入れることができるよう、積極的に後押しすることは重要である。
〇 都は、eラーニングによる訓練と専門家の助言を一体的に提供し仕事の選択とキャリアの幅を広げる支援等に取り組んでいる。今年度は、パート入社の女性を部長に抜擢した企業等の優良事例の紹介や、短時間勤務者の役職への登用等と併せて男女間の賃金の差異を公表する企業に対し奨励金を支給する取組も開始した。
〇 今後、様々な状況に応じ一層力を発揮できるよう多様な正社員制度等の普及を図るとともに、そうした仕組みを取り入れる企業へのインセンティブなどを通じ未来への原動力である女性の所得向上に力を入れていく。
介護離職対策(介護休暇を取る同僚への報奨金)
国の調査では、親の介護を行いながら働くビジネスケアラーについて、男女ともに、50歳から54歳の層の割合が最も高くなっており、管理職や責任ある立場にある方も多いことが想定されます。これらの世代の介護離職は、職場や社会にとって大きな損失となりますが、来年は団塊の世代全員が75歳以上となり、介護ニーズが増大する、いわゆる「2025年問題」が現実のものとなります。
介護離職を防ぐには、介護休業の取得が重要ですが、実際には、職場の理解が得られず、やむなく退職するケースも少なくありません。私たちは昨年度男性の育業促進に向け、代替要員の確保だけでなく、育業を支える同僚に対する支援を行うよう要望し、都は今年度より育業取得した同僚に報奨金を支給する企業への支援を開始しました。
Q 介護休業についても、同僚を含めた職場全体で支える環境づくりに向けた後押しが必要と考えますが、知事の見解を伺います。
A(知事・産業労働局)
〇 超高齢社会が進展する中、介護と仕事の両立は多くの方が直面する課題である。業務の中核を担う社員の方が介護によって離職を余儀なくされることは企業にとっても重大な損失であり、対応は待ったなしだ。
〇 都は、介護休業制度の充実などに取り組む中小企業等に対して、奨励金を支給している。介護と仕事の両立に取り組む企業や従業員の体験談の紹介なども行っている。
〇 今後、介護休業を取得する人の同僚の負担感を和らげる効果的な取組について支援を検討する。これにより、介護に直面した方もそれを支える側も互いに気兼ねなく、職場全体で誰もが働き続けられる仕組みづくりを後押ししていく。
事業承継
労働力不足に加え経営者の高齢化も課題です。都内経済を支える中小企業の経営者の平均年齢は60歳を超えており、事業承継を適切に行い、次代に経営のバトンを渡していかなければ、これまで培ってきた技術やノウハウが引き継がれず、東京の活力が失われることにもつながりかねません。
知事はこのたびの三期目の公約において、事業承継をより一層進めていくための新たな施策を打ち出しており、多くの経営者が期待しています。
Q 中小企業の事業承継を支援し、東京の産業の更なる発展に向けて取り組みを加速させるべきと考えますが、知事の見解を伺います。
A(知事・産業労働局)
○ 中小企業は都内経済を牽引する原動力であるが、その多くは後継者の確保などに悩み事業承継に迫られている
○ これまで相談窓口の設置やアウトリーチでの支援を展開し、円滑な承継を後押ししてきたが、更なる重層的な取組が必要だ。
○ そこで、経営者が安心して事業の承継ができる「TOKYO白馬の騎士ファンド」を 年明けに民間の出資も受けて作り上げる
○ また、創業希望者と後継者が決まっていない企業をマッチングする仕組みづくりや、承継に必要な自社の価値を評価する際の負担の軽減、M&Aにより統合された企業が新たな事業を展開できるようなサポートにも力を入れる。
〇 これらにより、中小企業の事業承継を加速させ、持続可能な成長を実現させていく。
賃上げ支援
さらに東京の経済を成長させるためには、中小企業が価格転嫁を促進し、従業員の賃金を引き上げ消費行動を促す、成長と分配の好循環を作り出すことが必要です。
都はこれまで、中小企業の価格転嫁を後押しするため、アドバイザーを派遣し、原価管理の体制づくりを支援していますが、さらなる取組みが必要です。例えば、スタートアップが提供するオンライン指導やオンデマンド教材などの、時間や場所を選ばない方法を活用することで、中小企業のデジタル人材育成において大いに成果が上がっていると聞いています。加えて、給与や原価が将来的な経営に与える影響などを試算できるAI等の技術を提供するスタートアップもあると聞いています。
Q こうしたスタートアップが持つ価格転嫁や賃上げに必要なコスト管理をデジタル技術を活用して容易に行えるツールなどを、中小企業も使えるよう後押しするべきと考えますが、都の見解を伺います。
A(産業労働局)
○ 中小企業が適正な価格で取引を行い、賃上げにつなげていくためには、自社の経営に必要なコストを適切に把握することが重要である。
〇 このため都は、原価管理の手法を学べるセミナーを開催するとともに、アドバイザーが企業を訪問し製品やサービスごとの原材料費や労務費などの計算をサポートしている。
○ 今後は、都内中小企業が価格交渉などを効率的に行えるよう、AI等の革新的な技術を持つスタートアップ等と連携した支援策の拡充を検討していく。
カスハラ対策
私たちはこれまで、働く意欲を損なうカスタマーハラスメントに対する毅然とした対応を求めてきました。第三回定例会で、全国初となる条例が成立して以来、カスタマーハラスメントへの関心は一層高まっています。
カスタマーハラスメントを未然に防止する対策の一つとして、録音や録画による記録の保全があげられます。一部自治体では、SNSへの投稿などから職員を守るため、施設内での録音・録画を禁止する対応も見られますが、録音・録画は、正しく運用されれば、証拠として役立つのみならず、サービスを提供する側も受ける側も、冷静な態度を維持できるという効果も期待できます。
Q 都は、カスハラの未然防止や事実確認に役立つ録音や録画などの対策が、自治体を含めた広い現場で導入されるよう取り組むとともに、こうした防止対策について、住民やお客様との良好なコミュニケーションを促すツールとして理解が得られるよう啓発していくべきですが、見解を伺います。
A(産業労働局)
○ 条例により自治体を含む幅広い現場で取組が浸透するよう後押しするとともに、条例の正しい運用を通じ顧客等との良好な関係づくりを促すことは必要である
○ 都は、自治体や民間事業者が条例に基づき防止措置を講ずるための指針を作成することとしており、その中で事実を記録することを推奨していく。
〇 今後、団体などに向け年度内に作成する共通マニュアルにおいて、未然防止策として、録音や録画の効果的な活用方法や、傾聴など接客対応の重要性も伝えていく。
〇 また、録音などに必要な機器を導入する事業者の支援も検討するとともに、現場での正しい運用を促す。
TIB利用者のステイタス把握
東京の成長を牽引し、イノベーションの起爆剤となるのがスタートアップです。都はスタートアップ支援の拠点として「Tokyo Innovation Base」を整備していますが、かねてより私たちは、施策の精度を高めるため、利用者のステージや属性について明らかにすることを求めてきました。
例えば、北欧やのスタートアップやVCと東アジアのVCやLPをつなぐアライアンス「NAVA」では、スタートアップがどこまで資金調達を受けているかがわかるキュレーションサイトを設置したり、国内民営のスタートアップ支援拠点では、スタートアップの成長段階やステータスに応じたフロアを設け、投資家やパートナー企業の交流や知識共有を活発化しています。
Q TIBにおいても利用者のステータスを把握する仕組みを導入し、効果を確認しながら、利用者が求める事業を展開すべきと考えますが、見解を伺います。
A(スタートアップ・国際金融都市戦略室)
○ 世界で活躍するスタートアップを生み出すには、シード期、レイター期等の成長段階や直面する課題に応じた適切な対応が求められる。
〇 現在TIBでは2万人を超える方がアプリの利用者登録をしているが、こうした課題に応えるため、今後機能を強化し、事業領域や成長段階、それぞれが抱える課題などを登録できる仕組を導入する。
〇 これにより把握したスタートアップの情報を活用して個々のニーズに応じた支援を提供できるようにするとともに、成長の状況を継続的に把握し、特に有望な企業への支援を展開することで、世界に羽ばたくユニコーンの輩出に繋げていく。
インターナショナルスクール設立支援
不安定化する世界情勢や各国の税制変更等があり、東京に拠点を構えたい世界の投資家や起業家が増える一方で、ハードルとなるのがインターナショナルスクールの不足です。これに対し都は、これまで国家戦略特区を活用したインターナショナルスクールの整備を進めてきました。
Q 私たちの要望を受けて実施した、誘致拡充の候補となるインターナショナルスクールの実態調査を踏まえ、具体的な支援スキームを検討し、整備につなげていくべきと考えますが、見解を伺います。
A(スタートアップ・国際金融都市戦略室)
○ 高度外国人材を呼び込むにはインターナショナルスクール等の教育環境の充実が重要である。
○ これに向けた実態把握のため、都は先般、学校運営者や関係事業者、日本在住の外国人の方やそのご家族、外国企業、行政も交えたラウンドテーブルを開催した。関係者からは、適地や事業協力者の確保等の課題が寄せられたほか、子供達の長期休暇中の居場所づくりや地域との交流など、生活環境を含めた様々な課題について議論が交わされた。
○ 今後、こうしたネットワークの強化を図るとともに、課題解決に向けた学校等への効果的な支援方策を検討し関係自治体や事業者等と連携した取組を進めていく。
生成AI活用支援
労働力不足の救世主となりうるのはAIなどの新たなテクノロジーの活用です。私たちは生成AIの活用について、議会などで度々活用を提案し、これに応え都は職員の勉強会やアイデアソン、ガイドラインの整備をし、生成AIの活用を進めてきました。先日12月5日には、AIの第一人者である東京大学の松尾豊教授を座長に、世界から注目されるスタートアップ企業「Sakana AI」共同創業者の伊藤錬(いとうれん)氏等をメンバーとした、東京都AI戦略会議を開催しています。
Q 生成AIの技術は日進月歩で進んでおり、職員が生成AIを駆使するだけでなく、更なる活用促進も進めていくことが重要です。専門家の英知も踏まえ、都は、将来を見据えて、AIを活用した都民サービスの向上に取り組んでいくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
A (知事・デジタルサービス局)
〇 都庁のDXを次のステージへと押し上げるためには、進化を続けるAIの徹底活用が不可欠。
〇 都はまず、職員の業務効率化を加速させるため、GovTech東京の技術力で、全庁で 活用できる生成AIプラットフォームを開発している。来年度には、会計事務等から利用を開始し、職員の生産性向上を実現。
○ 次なる挑戦は、都民サービスの変革である。その実現に向け、この度、日本のAI界を牽引する専門家からなる東京都AI戦略会議を設置。
〇 会議では、効果的な行政分野でのAI活用や、デジタル広聴の高度化、AIガバナンスなどに加え都民サービスの革新につながるAI開発や人材育成についても多角的にご議論。
〇 最先端の知見をもとにAI戦略を策定し、行政サービスのゲームチェンジャーとなり得るAI技術で、都民サービスを飛躍的に向上
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