「女性活躍の輪(WA)」の戦略的展開
世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダーギャップ指数の2024年における日本の順位は、前年の125位から幾分持ち直して118位となりましたが、依然として低迷しています。
私にとって、女性活躍推進は、政治家として取り組む3つの柱のうちの一つです。
一般質問では、女性活躍に取り組む中小企業へのインセンティブとしての制度融資の女性活躍推進枠「TOKYOウィメン・ビズ・サポート」の対象拡大を取り上げましたが、それ以外にも、キャリアアップを目指す女性向けの講演会の対象者に、登用する側の男性管理職も加えていただいたり、都営住宅にお住まいのシングルマザー向けの就労支援セミナーを創設、今日午前中にも都内で開催していただくなど、当事者や専門家の声を聴きながら、都内に暮らす女性お一人お一人が、自分の持てる力を発揮できる社会に向けて提案を重ねてきました。
いうまでもなく、小池知事就任以降、東京都は、多角的に女性活躍推進に取り組んできました。
私のところにも、東京都女性ベンチャー成長促進事業「APT Women」に参加して、仲間ができて起業につながったという声や、「レディGO!ワクワク塾」に参加し、小さい頃からの夢であった学校の先生になれた、という声が届いています。こうした声から、女性活躍の裾野を拡大していく上で、同じ志を持つ女性たちがつながり、交流できる機会を増やすことの重要性を改めて認識したところです。
Q 都は、来年度の新規事業として「女性活躍の輪(WA)」の戦略的展開に取り組むとしていますが、これまでどのような女性同士の交流の場を設け、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
A(働く女性応援担当部長)
○ 都はこれまで、女性経営者や女性起業家等が相互に繋がり、情報交換やビジネス上の交流を可能とするネットワーク構築を支援
○ 女性経営者を対象とした「NEW CONFERENCE」では、直面する課題の共有とともに、相互の交流を深める機会を提供し、今年度は過去最高の1,240名が参加
○ また、経営者の意識改革や職場の文化の変革を促す「東京女性未来フォーラム」では、企業内での女性活躍に向けた課題や解決策などについて意見交換が行われた。今年1月に開催し、約1,800名が参加
○ さらに、女性起業家の成長を支援する「APT Women」も実施し、経営の知識を提供し、海外展開のきっかけにつながるプログラムを提供。これまで280名を支援し、昨年度までに総額約198億円の資金調達に結びつけた
○ 来年度はこうした取組を女性活躍の輪「Women in Action」の下、一体的に開催し、女性の経済分野における活躍を促す機運を更に高めていく
これまでの各種事業において、参加者同士のネットワーク構築を意識して実施してきたこと、また、「APT Women」の成果として、昨年度までの280名の参加者による資金調達が、総額約198億円になった、との答弁がありました。知事が常日頃、「女性の力は未利用エネルギーである」と述べられてきましたが、そのポテンシャルを示す数字だと思います。
この資金調達額は、スタートアップについてのデータベースを調べた値であると聞きました。女性活躍のみならず、スタートアップ振興策の成果検証方法として有用であり、高く評価します。
また、来年度はこうした取組を女性活躍の輪「Women in Action」の下、一体的に開催し、女性の経済分野における活躍を促す機運を更に高めていく、との答弁がありました。
私は前職で、育児休職後に復職した後に取り組んだ、眼鏡なし3D液晶テレビの製品開発に世界初で成功するという幸運に恵まれたことで、女性と経済活動をテーマにしたAPEC2011に、日本から選ばれた女性イノベーター2名のうちの1名として招待されました。ここで、当時のヒラリー・クリントン長官が、女性の地位向上には法制度の整備だけでなく、人の意識や社会・文化を変えるという“Social will”(社会的意思)の形成が必要である、というスピーチをされたことが印象に残っています。
女性の地位向上がこの国のソーシャル・ウィルになるよう、引き続き都が女性活躍をけん引していただきたくよう要望しました。
「はたらく女性スクエア」の総合相談窓口
とはいえ、中小企業で働く大多数の女性にとっては、未だ、身近なロールモデルが圧倒的に不足しています。
昨年末、「東京ウィメンズプラザ」の「働く女性のキャリア形成に向けた講演会」て、私がウーマンオブザイヤーの大賞を受賞したときの日経ウーマンの編集長で、日経BP社で執行役員も務めた女性リーダーの講演を聴く機会がありました。学びの多い講演でしたが、なかでも印象的だったのが、男性には「この人でも管理職が務まるんだ」という、別の意味で勇気づけてくれるロールモデルもいる、という話です!
働く女性への総合サポート事業の一環として、9月11日に青山にオープンした「はたらく女性スクエア」の総合相談窓口には、相談する時間がない、相談できる人が身近にいないといった働く女性に対して、抱える悩みをしっかりと受け止め、対応する役割が求められています。
Q そこで、「はたらく女性スクエア」の総合相談窓口の実施状況と、来年度に向けてどう取り組むか伺う。
A(事業推進担当部長)
〇 はたらく女性スクエアの総合相談窓口では、働く女性のキャリアアップや育業との両立等に関する悩みに対して、キャリアコンサルタントと、管理職経験者等のメンターが相談に応じている
〇 この窓口では、女性社員や管理職が利用しやすいよう、対面に加えて、オンライン等での相談も行い、平日の夜や土曜日も運営
〇 今年度は9月の開設から2月末までに、キャリア相談を1,350件、メンター相談を416件実施
〇 来年度は、保健師等の専門家による健康相談も開始し、女性が抱える健康課題と仕事との両立の相談等にきめ細かい対応を行っていく
概ね半年の実績からは、女性のニーズに応える取り組みができていることがわかりました。来年度は健康相談も開始するとのことで、重要な取り組みであり、引き続きの取り組みを応援しました。
女性管理職の育成
女性活躍推進法が成立して間もなく10年、この間、企業において女性が活躍できる行動計画の策定・公表、管理職に占める女性労働者の割合や男女間の賃金格差の公表などの取組が行われるとともに、国も、プライム市場に上場する企業の女性役員の比率を2030年までに30%以上にする目標を掲げています。
私は先に述べた製品開発で、当時、子育て中でありながら、工場や生産技術研究所の、様々な専門家と連携して取り組む、製品の構造を決定するチームのリーダーという重責を負ったことが、大変ではありましたが、その後、マネージャー職を務めたり、様々チャレンジをするにあたって、自信になりました。女性管理職を育てるためには、女性がリーダー役を務め、重要な意思決定の場に参画するなどの経験を積む機会が重要です。
機関投資家の投資判断においても、女性役員比率を考慮する傾向があるなか、経営を担う女性の人材が不足する企業では、女性の社外役員を置くことで女性役員比率を高める実態がありますが、これによって社内の女性の育成が軽視されるようなことがあってはなりません。
Q 企業の持続的成長につながるため、社外からの人材確保だけでなく、社内で人材を育成し、意思決定の場に参画する女性を増やしていくことが必要であると考えるが、都の取組について伺う。
A2(働く女性応援担当部長)
○ 社内から登用できる女性役員を増やしていくためには、将来、経営の中核を担う意思決定層において力を発揮できる人材を育てていくことが必要
○ 都は今年度、リーダーを目指す女性向けに、マネジメントに必要な知識やスキルを学べる全4回のプログラムを2期実施し、約50人が参加。来年度は規模を3期に拡充し、女性リーダーの育成を強化
○ また、女性活躍に課題を感じている企業を対象に、多様な人材を生かす経営や、長期的な女性の育成手法等をテーマとした交流会を、来年度は8回から11回に拡充して実施
○ さらに、計画的に女性管理職を増やす取組を行う企業に奨励金を支給し、後押しする事業も、引き続き実施
○ こうした様々な取組を通じ、女性の登用を促進
特に子育て中の女性に対して、管理職や企業側は配慮から、また、女性自身も迷惑をかけたくないという思いから、サブリーダーを務めるケースが少なくありません。しかしながら、30代、40代、リーダーを務めるのと、サブリーダーを務めるのでは、経験値が大きく異なってきます。
しばしば、女性管理職を選びたくても能力がある女性がいない、と話す経営者がいますが、もし社内にそのような女性がいないのであれば、足りないのは、能力ではなく経験であり、育成に失敗していると自ら話しているようなものです。
既に都庁内においては、知事就任以降、女性を管理職に登用する文化が根付いており、今のような話は珍しくもないと思いますが、中小企業はまだまだです。都庁内での実績も含め、役職者に登用し経験することで女性がリーダーとして育つことを、プログラムや交流会、そして企業の経営者に伝えていただくよう、要望しました。
女性の処遇改善
女性の処遇について、昨日発表された2024年の全国調査のデータでは、フルタイムで働く女性の賃金は、男性を100とすると74.8と8割に満たない水準にとどまっています。
一方で、私がウーマンオブザイヤーの大賞受賞者として出席した女性活躍関連のシンポジウムの一つでは、スウェーデンから参加したパネリストが、パートタイマーでも管理職になれると紹介していて、衝撃を受けたことを覚えています。
Q 都は、私たちの提案に応え、今年度から短時間労働者などの非正規従業員の処遇改善に取り組む企業の支援を行っていますが、短時間労働者でも管理職に登用する取組内容の申請状況と今後の取組を伺います。
A(雇用就業部長)
〇 都は今年度、女性活躍推進法に基づく行動計画を作成し男女間賃金格差を公表する企業が、役職手当の支給対象となる女性社員を増やすなどの取組を一つ以上行う場合に30万円の奨励金を支給する支援を開始
〇 この支援では、短時間労働者など非正規社員の登用が可能な役職を新設する取組も支給対象としており、この取組に関する申請は、令和7年1月末までに19件受け付け
〇 来年度は、女性管理職の増加など、一つの取組ごとに30万円を支給する仕組みとするとともに、非正規社員に退職金制度を導入する場合に10万円を加算することとし、最大100万円を支給する新たな支援を開始
〇 これにより、女性管理職比率の向上と男女間賃金格差の解消を一層促進
中小企業にはまだまだハードルの高い事業かと思っていましたが、短時間労働者でも管理職に登用する取組内容の申請が19件あったということで、前進が見られて嬉しく思います。
女性管理職比率の向上と男女間賃金格差の解消に向けた取り組みを多角的に行うことで、最大100万円支給という、より力強い後押しへと事業が展開していることを評価します。
最後に、米国では、2010年より連邦政府の公共調達のうち5%(約3000億円)を女性経営者に優先発注する「女性優先調達プログラム」を開始しています。女性経営者の定義は、主要株主が女性で、かつ51%以上株式を保有すること、とのことです。女性経営者が育ってきた暁には、都でも検討できると思うので、紹介しました。
コメント