市場会計の健全性の確保について
事務事業質疑、そして、委員会質疑を通じて、改修工事と並行して、昨年2月の監査で指摘された点について取組みを進めることを要望してきました。 具体的には以下の2点です。
1) 令和9年以降の次期経営計画の策定に向けて、令和8年度までに、個別の建物における維持更新の計画と市場単位のマスタープランを策定するとともに、それまでの毎年の詳細なスケジュールを策定
2) 中央卸売市場全体の機能を最適化するための、市場全体の施設整備に係る長期的かつ具体的なロードマップの作成
各市場の状況に応じた改修工事が「ボトムアップ」であるとすると、この2点は、地方卸売市場も含めた市場ネットワークから、各市場の役割や機能を精査し、各市場の設備の計画に落とし込む、という「トップダウン」であり、これらを並行して行うことを求めるものです。そこで、
Q 令和7年度の取組について伺う。
A (市場政策担当部長)
○ 都は、これまで実施した劣化度調査の結果などを踏まえて、各市場の主要な建物について、改修、建替え等の方針を定め、維持更新計画の策定に取り組んでいる。
○ 来年度は、建物の利用状況等も踏まえて維持更新計画をとりまとめるとともに、この維持更新計画を踏まえ、市場会計の財政状況や各市場の取引実態や活性化に向けた取組状況などについて、業界と継続的に意見交換すること等を通じて検証し、市場全体の最適化に向けた長期的な施設整備の方向性を検討していく。
財政状況や取引実態などを共有し、共に方向性を検討していくことは大切ですが、関係者が集まる日程の確保が容易でないこともあり、実際のところ1年に1度の開催になっていると聞いています。
令和8年度までの個別の建物における維持更新の計画と、市場単位のマスタープランの策定に間に合うよう、取組みの加速を求めました。
市場業者への経営支援について
中央卸売市場を持続的に運営していくため、私たちは一貫して、市場業者の皆様がデジタル技術を活用し、販路開拓や業務効率化さらには経営力を高めるための支援を求めてきました。引き続きの支援も必要です。そこでまず、
Q 都はこれまで、市場業者のデジタル技術の活用に向けた取組に対して、どのような支援を行ってきたのか、今年度の実績と効果も含め、具体的に伺う。
A(事業部長)
○ 都は、市場業者がデジタル技術の活用により生産性や収益性の向上が図られるよう、「中央卸売市場経営強靭化推進事業」において、販路開拓や業務効率化に資するデジタル化の取組に要する経費の一部について補助
〇 令和6年度は、SNSと連携した販売管理システムの導入やスマートフォン表示に対応したホームページの構築など、令和7年2月時点で50件の取組に対して支援を実施
〇 この補助区分を利用した市場業者からは、「販売管理システムの導入により、適切な価格設定が可能となり、取引先との信頼性の向上につながった」、「入金データの自動入力化により、業務の効率化や正確性が著しく向上した」、「売上データ入力の自動化により、作業時間が削減され、営業等他の業務に充てられるようになった」との効果があったと報告をいただいている
〇 また、市場業者の経営上の課題に関する相談対応等を行う経営相談員として、令和6年度は、DXの専門的な資格を有する中小企業診断士を新たに加えるとともに、昨年11月には、この専門家と連携し、「デジタル化の進め方」をテーマとした市場業者向けの経営セミナーを開催
市場業者のデジタル技術を活用した取組を、都が継続して後押するとともに、業務改善にもつながっていることを確認しました。一方で、市場業者の中には資金的余裕がない事業者も多く、物価高騰の影響の長期化や労働力不足など、厳しい経営状況も続いています。
よって、より多くの市場業者が業務のデジタル化に取り組むためには、経営強靭化推進事業における支援を強化するなど、より強力なインセンティブが必要です。そこで、
Q 市場業者のデジタル化をより一層推進していくため、経営強靭化推進事業において、都は、今後どのような支援を行っていくのか、伺う。
A (事業部長)
〇 中央卸売市場経営強靭化推進事業において、市場業者のデジタル技術の活用の取組を推進する補助区分は、多くの市場業者にご活用いただいている一方、都に対し、日々変化するデジタル環境に迅速に対応するため、さらなる支援を求める声も寄せられている
○ そのため都は、令和7年度に制度を拡充し、DX推進枠の補助率を2分の1から3分の2に引き上げるとともに、補助上限額を300万円から600万円に倍増させることで、市場業者のデジタル技術のさらなる活用を後押し
〇 都は今後も、市場業者の稼ぐ力の向上に資するデジタル化の取組が、より速やかに経営力の強化につながるよう、引き続き支援に取り組み
市場業者の経営力を高めるデジタル化の取組の一層の加速のため、引き続きのサポートを要望しました。
市場業者への経営支援について
3月に大田市場、そして豊洲市場で行われた、意見交換用の資料には、他自治体の市場との比較が記載されていました。自治体によって事情は異なるものの、比較により都の課題が見えてくる可能性もあることから、より詳細な分析を求めました。
一方、先の事務事業質疑では、中央卸売市場の行政的機能については、その部分のコストは一般会計で対応することを提案しました。
Q 都民に対する説明責任を果たすことを前提として、一般会計で負担すべき行政的経費と市場使用料で負担すべき営業的経費の対象の見直しに向けた検証を行っていく、とのことだが、取組み状況について伺う。
A(財政調整担当部長)
○ 一般会計からの繰入れについては、これまで、現場取引業務の指導監督等の公正取引の実現を目的とした業務などを対象としてきた。
○ 加えて、繰入れの対象となる経費のあり方について、災害対応やデジタル化対応、環境問題への取組など、市場を取り巻く環境の変化に応じて、中央卸売市場が果たすべき社会的な機能や役割の発揮に向けて、見直しを図る必要があるものと認識している。
○ 今後、業界との意見交換においても、市場が社会的インフラであることから、市場の公共的役割に配慮した財政運営が必要であるという視点から、地域社会との共生などの卸売市場の社会的課題への取組や、行政的経費の対象及び一般会計での負担状況などについて、業界と議論を深めていくことで、行政的経費の対象となる事業の検証をさらに進めていく。
災害対策、デジタル化対応、環境問題への取組み、地域社会との共生といった、個別の項目ごとの積み上げだと、全体感が捉えられません。
卸売業が縮小傾向にある背景には、大手スーパーの台頭やインターネットの普及により、直接取引が拡大していることがありますが、例えばこれらの事業者の流通のための経費と、中央卸売市場の流通機能を維持するための経費を比較することで、中央卸売市場がその機能を維持するために必要な費用、行政的費用が検証できるのではないでしょうか。私たちにもわかりやすい形で示していただくことを要望しました。
最後に市場長の見解を伺いました。
Q 持続可能な市場経営の実現に向け、令和7年度は、どのように取り組んでいくのか、市場長の見解は。
A(市場長)
○ 中央卸売市場が将来にわたって生鮮品等流通の基幹的役割を果たしていくためには、今後の人口減少や市場会計の厳しい現状などに向き合い、持続可能な市場経営の実現に向けた取り組みを進めていくことが重要。
〇 そのためには、市場取引の活性化に向けた取組を強化しながら、市場全体の機能の最適化に向け、市場施設の計画的な維持更新や市場のネットワーク形成などに取り組むとともに、強固で弾力的な財務基盤の確保等を図らなければならない。
〇 7年度は、DXの推進等による市場業者の稼ぐ力の強化を図るとともに、施設の利用実態と財政計画との整合性を図りながら、建物毎の維持更新計画を策定する。また、市場運営費の縮減や未利用施設の活用など収入確保の取組を強化していく。さらには、市場の公的な役割を踏まえ、一般会計で負担すべき経費の対象についても、検証を更に深化させていく。
〇 今後も、持続可能な市場経営の実現に向け、市場局職員が一丸となって、スピード感をもって取り組んでいく。
コメント