客船誘致の事業評価
令和7年度予算と同時に発表された都の政策評価では、「客船誘致の推進」が評価対象となっており、主な成果指標として、客船入港回数の増加を掲げています。これは、客船誘致の進捗を端的に理解する指標として設定していることは理解するものの、ワイズスペンディングという観点からすると、費用対効果の視点も大事です。都のクルーズ客船受け入れにかかる施策について、経済効果などの要素も考慮して取り組んでいくべきだとの立場から質問しました。
東京港では、コロナ禍後のクルーズ客船寄港回数が順調に伸びている一方、クルーズ客船が寄港可能なバースが1つしかないことから、予約の重複などにより、寄港を希望しながらも叶わないケースが多数発生していることは、これまでも本委員会の質疑で度々とりあげられてきました。
東京港に寄港するクルーズ客船は、乗客定員が1000人を超えるケースも多く、東京に大きな経済効果をもたらしています。逆に言えば、寄港希望に応えられないケースが多くなれば、逸失利益が大きくなります。そこで、
Q 令和5年及び令和6年のクルーズ客船の寄港回数と予約の重複により寄港ニーズに対応できないケースが何件あったか、それぞれ確認する。
A
○東京港におけるクルーズ客船の寄港実績は、令和5年は49回、令和6年は72回
○また、予約の重複により寄港ニーズに対応できなかった事例は、令和5年は50件、令和6年は53件
クルーズ客船の直近の寄港実績が着実に伸びている一方で、その寄港実績に匹敵するぐらいの寄港ニーズに対応できていない状況にあることがわかります。
過去の経済港湾委員会での質疑によれば、都は約3,000人が乗船するクルーズ客船の1回の寄港で約2億円の経済効果があるとしています。令和5年、6年において、寄港ニーズに対応できなかった客船が同規模の船かどうかは不明ですが、単純計算では、年間約100億円の経済損失につながります。
都は、本年6月から晴海ふ頭の受け入れ再開を公表していますが、これにより一定程度、逸失利益を軽減することが期待できます。そこで、
Q 晴海ふ頭におけるクルーズ客船の寄港見込みについて伺う。
A
○ 東京港は、都心に近く、観光地へのアクセスに優れ、国際空港にも近いことからクルーズ客船の寄港ニーズは、近年極めて高い状況にあると認識
○ 晴海ふ頭については、銀座などの都心に至近の距離に立地していることから、富裕層が多く乗船する中小型のラグジュアリー船を運航するクルーズ船社を中心に利用したいとの声が多く寄せられている。
○ ご質問の晴海ふ頭の寄港見込みであるが、令和7年は受け入れ再開時期が6月ということもあり、現時点では10件程度であるが、令和8年は50件程度
○ 日本のクルーズ船社による積極的なラグジュアリー船事業への投資の拡大などによりクルーズ市場が活性化する中で、今後、晴海ふ頭への寄港数もさらに拡大することを見込んでおり、これに伴い、経済効果についても増加していくものと認識
晴海ふ頭の再開は逸失利益の軽減につながると考えますが、晴海ふ頭を利用できない大型クルーズ客船の東京港への寄港ニーズも増加しています。
都はこれまで、2014年に策定した「東京クルーズビジョン」に基づいて、クルーズ客船の誘致に取り組んできましたが、ビジョン策定から10年が経過し、コロナ禍も経て、東京港に寄港するクルーズ客船の大型化や、オリエンタルランドによる東京港を主要拠点としたクルーズ事業への進出など、東京港をめぐる環境は大きく変化しています。加えて、世界的なクルーズ市場の更なる拡大や、国内の船会社が運航するクルーズ客船の倍増など、東京港への寄港ニーズが一層高まる可能性が浮上しています。
もう1バースを増設する必要性や、大井ふ頭の再整備における臨時受け入れ機能の確保の必要性など、今後のハード整備の必要性について議論するため、客船誘致に関する事業評価において、客船が停泊できないことによる機会損失と、これに伴う経済損失の評価に取り組むよう、要望しました。
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