中央卸売市場 事務事業質疑 ~生産者の前向きな取り組みを消費者に伝えたい!

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11/5は、経済港湾委員会の委員として、初めて質疑に立ちました。この日は、中央卸売市場と、港湾局の事務事業が対象でした。初めての分野でもあり、事務事業全般を広く学んで質疑に挑みました。

特色ある市場づくりについて

少し古いですが、平成20年版の国民生活白書に興味深いデータがあります。日本とノルウェーの消費者力の違いを示したもので、日本の消費者が、価格に敏感であるのに対し、ノルウェーの消費者は、経済・金融、そして、生産者の環境・倫理的取り組みに敏感である、というものです(第2-3-12図)。

また、日本の残留農薬基準が甘いため、諸外国に輸出できない事態になっているという報道もありました。

生産者が取り組む、環境的、社会的取組として、

農業生産工程管理(GAP):農業において、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組
HACCP:平成30年6月13日に公布された食品衛生法等の一部を改正する法律で決められた食品等事業者が取り組むべき衛生管理
無農薬:生産期間中に全く農薬を使用しない農業
有機農業:化学肥料や農薬、遺伝子組換え技術を使わない、環境にやさしい農業
エシカル:地球環境や人、社会、地域に配慮するなど倫理的な取り組み
SDGs:経済発展と持続可能性の両立

などがあります。これらについて日本の消費者が理解し、相当の対価を払わなければ、取り組みが広がりません。生活文化局が都内スーパーマーケットでエシカル消費のPRに取り組むだけでは不十分です。

Q 市場において、これら社会的、環境的取組みの意義を、卸、仲卸業者に対して説明し、理解していただくことで、卸、仲卸業者が小売りに説明し、小売が消費者に説明するようになってはじめて、消費者が支払うことがでる、すなわちサイクルが回る。市場において、これらの社会的取組の意義について、卸、仲卸の理解を進めるべきと考えるが、見解を伺う。

A 消費者の生鮮食料品等に対するニーズが多様化し、「人や社会、環境に配慮した消費行動(いわゆるエシカル消費)」等の動きが高まる中、市場業者においても、こうしたニーズに対応する取組が見られてきている。具体的には、仲卸業者による、水産資源管理や環境配慮への取組を証明する水産エコラベルであるMELの流通加工段階の認証取得や、それを活用した業界団体による卸売市場流通モデルの構築を目指した情報発信の取組等が始まっている。こうした市場業者の意欲ある取組について、都は、中央卸売市場活性化支援事業により積極的に後押しする等、取組を促進していく

消費者が見た目を気にするために、味は同じでも格外の野菜が流通に載らず、生産者の負担になるとともに、食品ロスにつながるという課題は長く知られています。私は、消費者を育てることが、長期的には、生産者を助けることになると考える。中央卸売市場の役割は、

・消費者に対する迅速で安定的な生鮮食料品等の提供、
・生産者に対する確実で速やかな販路の提供、
・小売業者等に対する取引の場の提供

中央卸売市場には大きく分けて3つの果たすべき役割があります。

とのことですが、取扱量が減少する中、「日本の一次産業を支えるための消費者教育」も一部も担うべきであると求めました。

市場へのICT導入推進

世界では、米ウォルマートの実証実験が有名ですが、ざん耐性が高いという性質があるブロックチェーンを使って、生産地から小売りまでトラッキングする流れがあります。前段の生産者の前向きな取り組みやプロセスを全て改ざんなく伝えるだけでなく、スマートコントラクトを使えば、支払い遅延もなくせます。

中央卸売市場は、「中央卸売市場活性化支援事業」で、ICTを利活用する取り組みも支援していますが、日本のあらゆる業界のICT導入プロセスにおいて、民が主体の取り組みを放置した結果、データ・フォーマットが乱立、かつ、業者によるユーザ囲い込みによってデータ・フォーマット間の互換性が担保できないなどの問題が、繰り返し起きています。

Q 今後ICT導入に取り組む中央卸売市場においては、市場利用者の自主的な取り組みを支援するだけでなく、生産者・市場の国際競争力強化のため、最先端の技術動向についても調査・研究し、ビジョンをもってICT導入に取り組むべきと考える。日本は今が挽回の最後のチャンスだといっていい。世界有数の水産物市場である豊洲市場をはじめ、11の中央卸売市場の開設者である都は、ICTをただ導入するだけでは後追いに過ぎず、世界の市場と戦うビジョンをもって、DXの取組を能動的に進める必要があると考えるが、見解を伺う。

A ICT技術の進展により、物流の効率化が加速度的に進む中にあって、食品流通の中間結節点である中央卸売市場においても、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応が求められている。市場業務は、取扱品目や規格が日々変化する物品を様々な関係者が扱っており、かつ、その業務の中核を市場業者が担っていることから、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応に当たっては、都の取組はもちろんのこと市場業者と連携した取組が不可欠。このため、ICT技術を活用した新たなビジネス展開など、市場業者による意欲的な取組を、都は後押ししている。加えて、都としても、行政サービスにおけるICT技術の更なる活用を図るとともに、最先端技術に関する調査を進めるなど、市場業務のICT化に向けて取り組んでおり、時代の変化に即した中央卸売市場の実現を目指していく。

平成29年10月の、農林水産省の「卸売市場を含めた流通構造について」という資料によれば、「流通分野においても、様々な情報通信技術が導入されているが、卸売市場をはじめとして、生鮮食料品等流通分野においては情報通信技術の導入が遅れている」とされており、平成25年度の、食肉を除いた中央卸売市場にける「生鮮EDI標準や電子タグの導入状況」は、導入していないが74%に上ったことが示されています。そして、「導入されていない理由」は順に、
・「関係者の意思統一ができない」64%
・「導入のためのコストが高い」60%
・「物流業務の効率化が図られるか分からない」42%
であり、関係者を束ね、電子化の意義を説明するリーダーシップを担う組織がないと難しいことがわかります。

中央卸売市場における取引が減少するなかで、利用する事業者は中小零細が大半です。TPPなど自由貿易協定のもと、国を越えた交易が増加する中で、事業規模で劣る国内の一次産業の持続性を高める切り札が、事業者連携の高速化と最適化に不可欠なDXであることは間違いありません。なかでも、個々の生産者の生産、管理、流通プロセスにおける創意工夫を正しく記録、伝えることができるブロックチェーン技術は重要であると考えます。

単独でICT化を進められない事業者も少なくないことが予想されることから、中央卸売市場が、「最先端技術に関する調査」を踏まえた国際競争を勝ち抜くためのDX戦略を描き、卸、仲卸事業者のICT化の支援事業に都度反映するよう、要望しました。

ちなみに、我が会派以外の複数の議員が、市場の活性化の切り札は、市場関係者の「目利き力」だと発言していましたが、既に目利き力がありながらも市場流通量は減少しているわけで、どういうロジックがあってそのような主張をしているのか、全く理解できませんでした。

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