令和3年 事務事業質疑~デジタルサービス局② デジタルツイン

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次いで、デジタルツインをとりあげました。現実世界に実在しているものを、デジタル空間に再現する、という、オープンデータよりさらに、長期的(野心的)な取り組みです。

短期的に結果を出すのは容易ではないと思いますが、防災分野における危機感共有など、これまで成しえなかったことができる可能性もあります。加えて、政策の効果検証と立案(EBPM;証拠に基づく政策立案)に使うことも視野に入れることを求めました。

デジタルツイン

Q2 デジタルツイン実現に向け、どのように事業を進めているのか、今年度の取組について伺う。

A2 デジタルツインの実現については、昨年度は都民にデジタルツインをわかりやすく説明するため、街の混雑状況や地下のインフラ整備状況などの3Dイメージ動画を公開するなどの取組を推進。本年6月には、有識者等で構成する検討会を立ち上げ、デジタルツインの有用性の検証や、今後の目指すべき姿など、幅広い議論を展開。また、技術的課題や法的課題の解決につなげるため、特定のエリアにおいて、災害時の安全な避難経路を3Dビューアで案内する実証など3つのプロジェクトを実施。その他7月には、デジタルツインの情報発信サイトを開設。各局が管理する様々なデータを重ね合わせ、3Dビューアで表現することで、都民が実際にデジタルツインを、見て体感できるサイトとして発信を開始。

現実世界に実在しているものを、デジタル空間に再現する、という構想は、長期的には正しいと考える一方で、短期的には、時間的空間的にどの程度のメッシュでデータを取得するのか、有効数字はどうするのか、など、泥臭い話もある。メッシュが細かく、そして、有効数字の桁数が大きい、すなわち精度が高ければ高いほど、計算リソース、データ転送、メモリ ストレージがより多く必要になり、それに伴って必要なコストも消費電力も増える。

漫然とデータを集めると、「帯に短し、襷に長し」になりかねない。

Q3 デジタルツインにおけるシステム構築に向け、バスロケーションのようなリアルタイムデータを多く取り込んでいくと聞いている。サーバーの容量や、アクセス耐性、更に運営コストはどのように考えているのか、現状の想定を伺う。

A3 デジタルツインの構築にあたっては、今後様々なデータを取り込むことから、サーバーの容量や運営コストなどについて十分な検討が必要。今後、有識者のご意見をいただきながら、庁内各局のユースケースの検討を行うとともに、運営コストについて十分に考慮しつつ、状況に応じてサーバー容量を段階的に見直すなど、柔軟なシステム運営を目指す。

データの増大に対して柔軟に拡張できること、画像や3Dモデル等、多様なデータを扱えることなど、拡張性、柔軟性を重視したシステム構築を求めます。

Q4 国土交通省(が主導する、日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクトである)PLATEAUとの棲み分けをどのように考えているのか伺う。

A4 国土交通省のPlateau(プラトー)も都のデジタルツインもいずれも、都市空間を「3D都市モデル」と呼ばれるデータによって再現し、これを活用してまちづくりに新たな価値をもたらすことを目的。国のPlateau(プラトー)の役割は、3D建物データを中心とした都市モデルの整備及びその利活用を促進すること。都のデジタルツインは、Plateauのデータや今後都市整備局が整備する3D都市モデルを活用して、各局の業務で活用できるようなデータ連携基盤を構築し、庁内システムと連携できるようなシステムの整備を目指す。引き続き、庁内各局によるデジタルツインの活用促進に向け、有用なユースケースを紹介し活用を促すなど、積極的に働きかけ。

都のデジタルツインは、各局の業務で活用することを目的にしている、というご答弁。とはいえ、この取り組みを持続的にするためには、都職員の理解は大切。そのためにも、早い段階で成功事例があることは重要。

Q5 明確なニーズがあり、投資に見合う効果が出る事例を創出することが重要であると考えるが、見解を伺う。

A5 今年立ち上げた検討会では、防災・まちづくり・モビリティなど「スマート東京実施戦略」で掲げる9つの分野の中でも、近年、激甚化・頻発化している大規模災害・水害への備え等の防災分野から取り組むことが重要との議論。今年度は、発災時に必要な情報を視覚的に分かりやすく発信することを目指し、災害時の安全な避難経路を3Dビューアで案内する実証に加え、高潮ハザードマップや河川ライブカメラなどを3Dビューア上で重ね合わせて表示するなどの取組を開始。今年度末までに策定するロードマップ初版では、防災分野をはじめ、他の分野においても、どのようなものが有用であるか等について、関係各局と議論を深め、最大限の効果が発揮できるよう事例の創出に取組。

発生頻度の低い災害への備えは手薄になりがち。防災に生かすという観点は良いと思う。

ベータ版を拝見した。現状、ハザードマップや避難経路は静的データであるが、浸水エリアの動的な情報や、交通機関の運行状況やキャパシティなども考慮した、避難シミュレーションを行うとともに、これを可視化すれば、都の災害対策の精度を高めるとともに、都民の皆様にも、避難開始のタイミングの重要性など、よりリアリティを持って考えていただき、備えをしていただける可能性もある、と思えた。シミュレーションとなると、専門家や大学との連携も必要になろう。応援したい。

データを通じた官民連携の行政課題解決

オープンデータやデジタルツインについてとりあげてきた。データ提供や可視化により、都民や専門家が都の課題を理解したり、解決に参画する取り組みであることを確認した。

加えて、将来的には、EBPM、すなわち、データに基づく政策立案にもつなげるべきことを述べたいと思う。

私は、議員になって以降、継続して、EBPMの重要性を訴えてきた。少子高齢化が進む日本、そして東京においては、生産年齢人口の減少に伴い、収税額が減少する一方、社会保障費は増大する可能性が高く、これまで以上に、政策の精度を高める必要があるからである。

PDCAは常態化しつつあるが、これからは、事業の方向性が正しければよい、というレベルのプランや、執行率をはじめとするアウトプットによるチェックでは、十分ではない。今後は、各事業が、政策目標に対してどれだけ寄与したかという、アウトカムの視点での評価や、一つの政策に紐づく複数の事業のなかで、どの事業がよりアウトカムの達成に寄与したか、といった、事業間の比較も必要になってくる。

オープンデータやデジタルツインといった、データ流通のプラットフォームともいえる取り組みは、事業の実施前後の比較や、または、事業に参加したグループと、しなかったグループでの比較など、政策評価、そしてその結果を踏まえた政策立案にも、活用されるべきものであると考える。是非、EBPMという観点も視野に入れて、これらの事業を進めていただきたい。

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