東京都シルバーパス制度と支援級の運営について

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6/24は終日都議会にて、調査研究や地元の陳情への対応などを進めました。冒頭の写真は退庁時に見た都庁です。上空の雲にも、医療従事者への感謝の青色が映っていました。

■東京都シルバーパス制度

「高齢者の社会参加を助長し、もって高齢者福祉の向上を図ること」を目的とする「東京都シルバーパス制度」は、年間の事業費180億円と大きく、また、区市町村民税が非課税かどうかで負担金に大きな差がある(※)こともあり、何かと議論の多い事業です。

※ 非課税の方又は令和2年度の経過措置(利用者の負担軽減の延長)の方:1,000円
課税の方:20,510円

このため、平成30年度に、「東京都シルバーパス制度を持続可能なものとしていく」ことを目的に、都内全区市町村(島しょ部一部除外)に在住の20歳以上の都民17,000人を対象とした、調査研究が行われました。私はこの調査研究に多いに不満があります。

持続可能かどうかを調査するのであれば、コストの観点が不可欠です。すなわち、目的とする高齢者福祉や、社会参画に対して、シルバーパス制度が年間180億円投資したなりの効果があるかどうかを検証するべきではないでしょうか?しかしながら、今回の調査は都民の意識調査であり、持続性の検討には不適切だと考えます。

<シルバーパス利用者のパスに対する評価>
「役立っている」と「まあ役立っている」の合計が 95.8%と、利用者の多くがシルバーパスを評価している。
→シルバーパスを使ったほうが費用を抑えられる人が利用しているのだから当たり前。

<70 歳以上でシルバーパスを持っていないと回答した人(47.2%)がパスを所持していない理由>
「シルバーパスが利用できる交通機関をあまり利用しないため」:43.8%
「自分・家族の車やタクシーを利用しているため」:31.9%
と、環境によってシルバーパスの利用に違いがある。
→公共交通機関を利用しない、利用しづらい人が所持していない。

<70 歳以上の普段の外出回数の比較>
「週 5 回以上」外出している人:シルバーパス所持者46.9%、未所持者46.9%と差がない
バスの平均利用回数:シルバーパス所持者 5.3 回、未所持者 1.0 回と差がある
と、シルバーパスが高齢者の移動手段の選択に影響を与えている
→原因と結果が逆。バスを含む公共交通機関を利用しない、利用しづらいからシルバーパスを所持していないため、バスの利用回数が少ないのは当然の結果。

<シルバーパスの利用目的>
「買い物」:約 6 割
「通院」:約 5 割
「趣味の活動」:約 4 割
日常生活や社会参加のために活用されている。20,510 円パスの利用者は 1,000 円パスの利用者に比べて「趣味の活動」や「通勤」が多い。
→シルバーパスが定額であるため、日常利用が多い人が所持するのは当然。住民税課税者が20,510 円パスを所持しているので、「通勤」が増えるのも当然。

<利用者負担額に関して>
(住民税非課税者の負担額)「1,000 円」について
「安いと思う」:全年齢の合計で 49.7%、70 歳以上でも 44.6%
「適切な金額だと思う」:全年齢の合計で 36.6%、70 歳以上で 36.8%
(住民税課税者の負担額)「20,510 円」について
「高いと思う」:全年齢の合計で 32.9%、70 歳以上では 28.3%
「適切な金額だと思う」:全年齢の合計で 32.3%、70 歳以上で 25.1%
→「高齢者の社会参加を助長し、もって高齢者福祉の向上を図ること」に対し、年間180億円という事業費が適切かどうかを判断するべきで、事業費等の情報を持ち合わせない調査対象者に聞く意味がない。利用者の感覚で利用者負担額を決めるつもりなのか?

<シルバーパスの事業費用に対する考え>
全年齢の合計では、
「費用が増加しないよう、制度を見直すのがよい」:25.7%
「本人が負担する金額を上げるのがよい」:22.8%
「本人が乗車ごとに一定額を支払うのがよい」:21.0%
「都の税金による支出を増やすのがよい」:15.5%(年齢別にみると、20 歳代は 8.2%、70 歳以上は 17.6%
→調査書の「はじめに」では「シルバーパスに都が税金から支出する金額とシルバーパスの利用者が負担する金額の合計は約 251 億円となっています。」としか書いておらず、うち180億円を税金から支出していること、この事業が一般財源5.4兆円の約0.3%、すなわち、約1/300を占めているという説明はない。これらの情報を持ち合わせない調査対象者が適切な事業費用を判断できるのか?

<シルバーパスのこれからのあり方に対する考え>
「今のままでよい」:シルバーパス所持者が 49.4%
「未所持者」: 20.2%
と、パスの所持の有無によって考え方に違いがある。自由意見欄に多数の意見、要望の回答あり。
→所持したほうが得な人が所有しており、その所持者が、今のままで良いと答えるのは当然。

最後に、「今回の調査によって、シルバーパスの利用状況や、利用者を含む幅広い年代の都民の制度に対する考え等について、その概要を把握することができた。一方で、今回の調査の回答の背景にある高齢者を取り巻く地域の状況や環境など、さらなる把握が必要な事項も明らかになった。」とあります。しかしながら、繰り返しになりますが、「東京都シルバーパス制度を持続可能なものとしていく」ことを目的とする調査で、都民の(わかりきった、もしくは判断するには情報の乏しい中での)「考え方」を調査する意味が分かりません。こんな調査、私が監督者だったら、【絶対に】認めません。

「高齢者の社会参加を助長し、もって高齢者福祉の向上を図ること」がシルバーパス制度の目的であれば、まずはその目的が達成されているのか、例えば、シルバーパスの所持者に対して、パスが高額になったり、制度自体がなくなった場合に、どの程度、どの類の外出が抑制されるかを調査するべきではないでしょうか。

最終項の「都における高齢者の社会参加に関する様々な施策のあり方を検討する中で、シルバーパスのあり方を検討していくことが必要である。」とありますが、様々な施策と比較検証可能な、本当の意味での事業の持続性を検討できる、まともな調査をしていただきたいです。

医療費の適正利用の評価に使われる、国保データベース(KDB)を用いて、健康寿命に与える影響を調査をしたいと考えた場合に、取り巻く法律の調査もしました。

■支援級の運営について

地元中学校の支援級に通うお子様の保護者より、指導上の課題の連絡をいただいてから約半年、教育長と再発防止策を継続して詰めています。少しずつ歩み寄れていると思います。

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