2001年より経産省主導で取り組んだ「産業クラスター計画」は、その後の検証さえされていません。一方、ドイツの「産業クラスター政策」は、現在も機能しています。
私が考える両者の違いは、中小企業の競争力を大企業並みに高めるという目的が明確であることと、クラスターを形成するために必要な要素、すなわち、インダストリー4.0というデータ基盤の整備と、その分野の世界的研究者をリーダーに据えることを具体化、実現したことです。
都は昨年1月に、「中小企業振興ビジョン」を策定しました。個人的には、ドイツの「産業クラスター政策」に匹敵するような戦略を描いていただきたかったのですが、ここでは、業況DIの改善、そして働き方改革を本当の意味で成功させるためにも大切な、「生産性」をとりあげます。
Q 中小企業振興公社が行う、「生産性向上のためのIoT、AI、ロボットの導入支援」の生産性の面での評価は。
A この事業では、ICTツール等の導入に必要となる経費に対する助成を行っており、助成金の申請時には生産性向上の目標数値などを盛り込んだ計画を立ててもらい、助成金の審査に活用。本事業を通じて、バーコードを活用した出入庫管理システムを導入して、在庫管理業務の合理化につなげたケースや、各従業員が個々の端末から、生産状況を把握できるデータベースを構築し、生産管理の効率化を図ったケースも出ており、中小企業の課題解決に寄与
Q 「東京都生産性革新スクール」卒業生が所属する自社での生産性革新の実績は。
A スクール修了生によるこれまでの改善報告では、製品の検査工程のレイアウトや作業員の動線を改善し、作業の円滑化に結び付けた事例や、煩雑に放置されていた資材などを、色分けしたラインで区画を定めて整理することにより、在庫の管理を容易にした事例あり。今後も、中小企業による生産性向上の取組を後押しするため、企業の現場で着実に改善の成果に導くことのできる人材を育成。
いずれの成果も、定性的、エピソード的なご報告でした。少なくとも「生産性向上のためのIoT、AI、ロボットの導入支援」事業は、事業設計時に生産性の目標値を設置したわけですから、測定は容易なはずです。生産性向上のための事業については、生産性の数値の報告を義務づけるべきと要望しました。
例えば、厚生労働省取り組みですが、「業務改善助成金」という制度では、生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成しています。また、生産性の伸び率が「生産性要件」を満たしている場合、労働関係助成金を割増すなどしています。
「事務事業質疑④ ~女性役職者育成」において、士業や各種窓口の皆様に期待するところを述べましたが、産業労働局の所管する事業を、賃金の上昇や、生産性の向上などで評価できるよう制度設計することで、各種窓口や、士業の皆様も、生産性の側面のアドバイスをすることになります。報告を義務付けることが、関わる全ての人々のマインド改善につながるという効果が期待できることもお伝えしました。
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