「青森市教育長に聞く~不登校の子どもたちへの対応について」の聴講はじめ、教育分野の情報収集&意見交換を行いました。

ブログ

「青森市教育長に聞く~不登校の子どもたちへの対応について」の聴講

7/22の昼は、「超教育委員会」が主催するシンポジウム青森市教育長に聞く~不登校の子どもたちへの対応についてを聴講しました。講演者は、青森市教育長の成田一二三氏、司会進行は、第7回都政報告会でお招きした、慶応大学の石戸奈々子教授です。

いつも以上に長々と書きますが、休校措置として行われた遠隔授業がきっかけとなって本当に多くの子供たちが再び登校するに至ったという、本当に素晴らしいお話でした!

【参考】オンライン授業で不登校が減少 青森市の小中学校で(教育新聞 2020年7月22日)

青森市では、平成28年にいじめ重大事態が発生、それ以降、いじめの前兆である不登校の解消に取り組んで(※1、不登校を著しく減らした三鷹市の取り組みに似ています)きました。しかしながら、不登校の発生率は、中学校は減少傾向にあるものので3%弱、小学校では増加傾向で1%弱と、なかなか数字に表れない状態でした。

※1 青森市の不登校対策
(1)新たな不登校を生み出さない取組(自己肯定感・自己有用感)
 ①一人一人の子どもの自己肯定感、自己有用感を高める関わり
  ア 自己肯定感、自己有用感を高める活動の事例を冊子(「青森っ子」心つながる「いじめのない学校・学級づくり」)にまとめ、各学校へ配付
 ②欠席した場合の対応マニュアルの作成 
  ア 年間を通じた学校の取組や休み始めの対応ついて
    欠席1、2日での家庭訪問や面談
 ③開発的教育相談の実施
  ア 相談体制の推進(長期休業明けの面談、気になる子に対する面談) 
(2) 不登校児童生徒に対する取組 
 ①保護者、関係機関等との情報連携・行動連携
  ア 適応指導教室の通室児童生徒についての情報交換(教育委員会と学校) 
  イ 民間団体・民間施設との情報交換会
 ②開発的教育相談の推進(学校、教育委員会)
  ア 長期休業明け直前・直後の教育相談の実施

そのような中、青森市も3/2から一斉休校、4/20~5/22の間は分散登校になり、そのほぼ3か月の間、同時双方向のオンライン指導である遠隔授業を実施(※2)しました

※2 
昨年秋に13校で、AI学習教材を導入、紙ではなくドリルソフトを家庭で使用していた。これによって、どの生徒がいつ、どこまで、学習したかを把握できることがわかっていた。保護者とはメール配信システムを通じて連絡できるようになっていた。
当初、休校中は、子ども達にはプリントを持たせて家庭学習をさせようと考えた。一方、健康観察や様子をどう把握するかという課題があった。①のAI学習教材に、子どもとやりとりできる機能があったため、導入済の13校はこれを使おうとしたが、インストール型だったため、学校のPCではできたが、未インストールの家庭のPCからアクセスする場合、学校からの連絡はできるが、家庭から学校に返信できないことが判明し、断念。
3月中旬に、ある学校がzoomを使って健康観察や子供との会話をすることを提案、中2で試験的にやってみたところ、90%の家庭で対応可能、それだけでなく授業もできそうな感触。
3月末に、4校をzoomオンライン授業推進校に指定、可能であるという結論。
⑤4/5~、その4校でオンライン授業を本格的に開始、残りの58校については、オンライン授業推進4校に担当者を集め、授業のやり方を研修、翌週には全学校で試行。
4/20~5/22、全62校(小5以上~中3)で本格実施、小1から取り組む学校や、1日5時間やる学校もあるなど、ほぼ3か月の休みの間、同時双方向型のオンライン指導ができた。
⑦家庭からの遠隔授業(中学校)の参加率は、当初、87.5%が参加(9.3%は登校して参加)だったが、最終的に96.8%が参加した。

そうしたところ、この休校期間中の遠隔授業に、不登校生徒(中学校)の74.6%が参加、そのうち、92.5%が、5/25の学校再開後に登校、それから2か月弱が経過した現在も81.8%が登校しています(小学校は78.3%)昨年(同時期で50%弱、年度末に20%前後)と比べても登校できている子どもがとても多くなっています。

スクールカウンセラーが臨時休業中に遠隔授業に参加した子どもの意識を聞いた結果(①~③)とスクールカウンセラーの意見(④)が以下です。 以前、小中学校で不登校を経験した高校生の話を聞く機会がありましたが、まさに、①、そして③と合致するお話を聞きました。

① みんなが登校しないので、自分が登校しないことが負担にならない
② 新しい学習形態に興味
周囲の子どもの目を気にしなくてもよい
④ 勉強するのは嫌いではない

それでも登校できていない子ども達(40人)については、遠隔授業の働きかけを続け、内6人が参加、登校につながったそうです。今後は、
・スクールカウンセラーとのオンラインでの面談
・学級担任とのオンラインでの面談
・通常授業へのオンラインでの参加
を実施していくとのことでした。

Q&Aでも、参考になるやり取りが多数ありました。

【やろうとする教育の姿から環境が決まる】
・(予算不足が原因で)学校へのICT導入は進んでいなかった(PC端末は9人に1台の割合)
・AIドリル教材の使用のためにまずは通信速度を改善(全学校にモバイルルーターを配置)自宅の端末(25%はスマホ)と通信環境を使う形で開始
・環境がない生徒は登校しての参加を認めた
・来週から再開するオンライン授業(※)では、通信環境がない生徒には、地元企業の協力でモバイルルーターを貸与し、通信環境あるけど自分が使えるPC端末がない生徒には、学校の2,000台のノートPCのうち800台を貸し出す、それでも900人は登校することになるが、62校あるので密にはならない
※ 青森市は、エアコンが設置されていないこともあり、7/27~8/7の2週間は遠隔授業を実施
・少なくとも来月末には一人一台@青森市

【オンライン併用ならではの新しい授業の形】
・5/25~学校再開したが、多くの学校が、学年全クラスで同じ授業(一人の先生が各クラスのモニターに登場)、他の先生は、ティーチングアシストとしてサポート
・2波がきたときに進度の差がなくなる
・これまでは、一人の先生が一つの学級に責任を持っていたがチームで分野に責任を持つ(そのほうが教育の在り方としていい、という感触がある)

対面との住み分け】
・本道は対面であり、皆で発展した議論を行うには、まだ集まってやったほうが大切だと思う。
・夏休み後半は、いじめの重大事態にも関わるので、直接対面して様子を把握したいと考えている
・子どもに、夏休み後半の授業を、遠隔と通学どちらがいいかを聞いたら、子どもは遠隔が、先生は対面が多い

【AIドリル教材】
基礎の定着(個別最適化学習)は効果的、学習時間の短縮につながる
・紙を渡してテストをする形では、先に進んでいる子供は無駄な時間を過ごしている
AIドリル教材を入れた先進事例では、中2の秋~クリスマスまでの間2か月で、ほぼ2年生の学習分が終わり、3年生まで終わった人も出てきた
先生の働き方改革という意味でも、生徒の端末に問題送って、子どもが解くと、自動集計、採点ができるので、労働時間の短縮につながる
・校長、教頭を除いた(教える仕事のある)先生1200人に、6~7月で使い方の研修を実施
・基礎基本をどうやって定着させるか、にエネルギーを注入してきたが、それはICTのほうが効果的、これからの授業の形は大きく変わる
・これまででは、端末数が限られていたため、週1~2回の利用だったが、今年は全学校に入る、従来はeライブラリー(無償)を使用、秋には全学校にQubena(有償)が入る予定

【保護者の声】
・ツイッター等によれば、大半は賛成
・端末は一人一台で家庭に持ち帰らせることができるようになるが、通信料の課題は残る
・これまではスケジュール管理のための冊子を、保護者から徴収した費用で購入していたが、いらなくなる、紙ベースでかかっていた費用を削減するなどして、(AIドリル教材の費用がかかったとしても)保護者負担は減らせるのでは

【先生の声】
・夏休み中の遠隔授業が負担という声や、登校日を増やすべき、という声もあった。
・最初なので、負担が高い面もある
・これから青森市の子供たち全員が一人一台の端末を持つ、先生の限界を子どもの限界にしてはならない
若い先生が存在感を示している(従来は年配の先生が存在感が大きかった)
・多くの先生が見ている前で授業をする緊張感はあるが、先生の研修にもなっている
・集計採点などの時間が削減できる

【財源】
・昨年、2,000台以上のPCを更新(更新時期)したが、それでも負担
・公務支援システムのための学校の先生用のPC導入も大変だった
・GIGAスクール構想の補助金があるから一人一台ができる、地方都市だけではできない、国の支援が大事
・今後も更新がある、40市町村の首長が、国には買い替え時期の支援も訴えている

【ネットワーク】
・100MではAIドリル教材を使うにも遅い
・早く取り掛かった学校はコンピューター室が1G
・62校で回線が1本だったのを各5本にするとともに、速度も10倍、かつ、全教室でWi-Fi
→全教室でストレスレスになる予定

【セキュリティ】
・当初、端末はコンピューター室のルーターにしかつながらにように設定されていたが、そのままでは家庭に持ち帰ることができない
・セキュリティを強くしすぎると使い方に柔軟性がなくなる。明快な回答があるわけではないが、ある程度緩めておかないと、発想豊かな使用法にはならない

何をしたいか、という意欲があれば、AIドリル教材の導入事例があったとはいえ、9人に1台環境からでも半年弱でここまでやれること、そして、生徒と先生のために、(これまでも求めてきましたが)オンライン学習環境をできるだけ早く導入、整備し、研修を充実するべきことを改めて実感しました。

区立弦巻中特別支援学級の体罰再発防止に関する意見交換

弦巻中の特別支援学級の保護者様から、体罰案件(30世教指第835号)の再発防止に関して半年ほどご相談を受けています。この日も、これまでの進捗の説明と今後の進め方についてzoomで4回目になる打ち合わせをしました。

「教育委員会や教育庁の関係者だと思って相談できなかった」というお話を踏まえて、「学校問題サポートセンター」が中立的な立場で相談に乗ることをわかりやすく伝える工夫や、二度と体罰を起こさないための、「体罰調査」や「事実確認」の今後のあり方について、意見交換を行いました。

オンライン教育推進に関する意見交換

保護者様から、オンライン教育の推進状況の学校や地域間格差の問題を多数ご相談いただいています。この日も、ある団体とzoomで2回目の意見交換をしました。

国はGIGAスクール構想の前倒しの補正予算を組むなどこれまでにない予算をつけてオンライン教育を推進しており、都もOffice365導入など、クラウドベースの環境整備に前向きです。しかしながら、地方自治体となると、財源の問題や関係者の数が増えることもあって、取組みの差が出ているのが実情です。

教育庁には、オンライン教育が進んでいない場合はその理由を確認する調査を既に求めていますが、登校再開後に、PC端末が脇に積まれているようなことがないように、オンライン教育が実施されているかの調査も重要だと考えています。

「令和2年都議会第3回定例会」にむけて準備を進めます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました