令和3年 事務事業質疑~政策企画局 合計特殊出生率 他

都議会議員,福島りえこ,世田谷区ブログ

東京都内の自治体は、住民参画を要件とする「スーパーシティ」構想に名乗りをあげていない点を課題として、2回目の募集に向けた積極的な取り組みを求めましたが、前向きな答弁はありませんでした。

「合計特殊出生率2.07」については、EBPM(証拠に基づく政策立案)を採用するなど、確実に成果をあげるよう、引き続き求めていきます。

スーパーシティ構想

国はSociety5.0の実現を目指した施策を打っているが、その一つに「スーパーシティ」構想がある。これは住民が参画し、住民目線で、2030年頃に実現される未来社会を先行実現することを目指して、昨年に国家戦略特別区域法を改正して実現したものである。昨年12月から今年の4月まで募集され、そこには全国で31の自治体が提案を行ったが、都内の区市町村は含まれていない。

Q1 都は区市町村に対してどのように働きかけてきたのか伺う。

A1 法改正直後に都内全区市町村に対してスーパーシティ構想の概要について情報提供。実際の公募開始に先立って、区市町村連絡会を開催し、内閣府も招いて説明を実施。

スーパーシティに選定されるためには「広範かつ大胆な規制・制度改革」が求められており、また、選定されたのちには住民投票などの住民合意を得ることとされている。このような「規制緩和」と「住民参加」は「スーパーシティ」構想の肝であると思う。

国では公募で申し込んできた全ての自治体に対し、規制改革などの再提案を要請するなど、選定にむけては高いハードルがあることは理解している。しかしながら、このような意欲的な取り組みである「スーパーシティ」構想に都内の区市町村が挑まないのでは、東京は他の地域からも遅れてしまうのではないかと危惧している。

Q2 「スーパーシティ」構想は次の募集もあると聞いているが、今後に向けて区市町村に対してどのように働きかけていくのかを伺う。

A2 今後、スーパーシティの先行事例を紹介するなど、引き続き情報提供を実施。意向のある区市町村に対しては、関係部署とも連携しながら助言等。今後とも区市町村に対して、きめ細かく情報提供や説明を実施。

「今後とも」ということで、従来と同等の取り組みをする、という、後ろ向き答弁です。

爆速のDXに取り組む都として、都内自治体から手があがらないことにもう少し危機感を持つべきように思う。国際的な都市間競争に挑む都ができなくて、なぜ他の自治体にできるのか。

私は、「住民参加」という観点は、東京都のような大都市にこそ必要だと考える。

1,400万人という都民に対して127名の都議会議員ということは、単純計算では1人の議員が10万人強の都民の声を代弁することになるが、現実には難しい。一方、都も、生活文化局が一年に一度、「都民生活に関する世論調査」を行ったり、都民の声というメールや電話による相談窓口を設けたりはしているが、タイムリーかつより多くの都民の声を公平に集める必要があると考えているのではないだろうか。

欧州では、プラットフォーム上で、住民が議論し意思決定するような取り組みもなされているが、日本人はそもそも議論があまり得意ではない。しかしながら、デジタルを使えば、住民参加のハードルを下げ、すそ野を広げられる可能性がある。

例えば、建設局で試行中の、道路の補修箇所を都民に伝えてもらう、マイシティレポートというプラットフォームを用いた取り組みは、参加人数はまだ限定的だが、デジタルネイティブが増えるにつれ、広がることが期待できる。警視庁でも、SNS情報をリアルタイムに収集・分析することにより、警備を要する行事やイベントの人出予測、突発的な群集の出現等の情報を早期の把握、災害発生時の被災状況の迅速な把握や要救助者の早期発見、帰宅困難者の滞留状況把握などを検討していると聞く。

大都市だからこそ困難な民意の把握と政策への反映、つまり、「住民参加」について、都が区市町村を啓発・先導することを要望する。

チーム2.07プロジェクト

「未来の東京戦略」の記載はムーブメントが中心に見える。確実に結果に結び付けるためには、ムーブメントだけでは十分ではない。

Q1 まず、チーム2.07プロジェクトの進捗について、伺う。

A1 チーム2.07プロジェクトにおいては、「チルドレンファースト」の社会を創出することを目的として、都、民間企業、大学、NPOなど多様な主体が連携し、「子供の意見」「子供の参加」を基軸にした「こどもスマイルムーブメント」を推進していく。戦略的にムーブメントを展開するため、有識者、経済団体、ネットメディア、スタートアップや子育て関連NPO等に参画いただく、官民推進チームを設置し、現在、取組のキックオフに向けて調整を進めている。

若者からは、結婚・子育てするには収入が現在も将来の見通しも十分ではないと聞く。出生率の向上・回復と、結婚、出産、子育ての阻害要因の除去・緩和について、ロジックモデル化・体系化し、さらには、政策の効果をEBPMで検証するなど、一つずつ、着実に成果を上げていかなければ、目標値の達成は難しいフェーズに来ていると考える。ロジックモデルを作るのは簡単ではないが、仮でもいいので作って検証し、精度を高める、に正面から取り組む必要あり。

Q2 出生率2.07に向けた今後の進め方について伺う。

A2 子育てに対する経済的、精神的な負担感、将来への不安、社会からの孤独感など、さまざまな要因を背景として、少子化は我が国の大きな課題。そのため、未来の東京戦略においては、目指すべき2040年代の姿をビジョンで示し、その実現に向けて、戦略の1である「子供の笑顔のための戦略」において、政策目標を設定した上で、妊娠、出産、子育ての切れ目ない支援の充実などのきめ細かな具体的な施策を盛り込むとともに、社会のマインドチェンジを促すムーブメントを、いわば車の両輪として進める。引き続き、政策の効果を検証しながら取組を推進

最後の「政策の効果を検証しながら」が大切。引き続きとのことだが、検証方法はバージョンアップが必要。

今年と2019年のノーベル経済学賞は、自然実験ランダムサンプリングといった、政策の効果測定にデータと統計的観点を盛り込んだことが評価された。2019年の受賞の際には、40代、50代の研究者の受賞に驚きの声もあったと聞く。つまり、今評価し、世界に普及する必要があると財団も判断したということ。出生率はじめ、世界が今抱えている問題は、解決が難しいものばかり。単年度では解決が難しく、また、答えも見えていないからこそ、統計的に有意差があるかどうかのシビアな検証が必要になっている。
私は22年間研究開発の現場にいたからこそ、事前に想定していた結果と、実験結果が異なることを何度も経験してきたし、手を動かす重要性がこの身に沁みついている。人は見たい方からしか物事を見ないと思ったほうがいい。客観的なデータが教えてくれる、頭を冷やしてくれることは多い。
英国から始まったEBPMを諸外国は本気で取り組みものにしようとしている。日本の知が集まっている首都東京で、出生率という困難な問題こそ、EBPMで地道に成果を上げていただきたい。

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