9/30の総務委員会では、最初に総務局の報告事項「令和3年度東京都公立大学法人業務実績評価」について質疑をしました。
東京都公立大学法人が運営する3機関、特に東京都立大学については、単年度主義では解決が難しい中長期的課題の解決や、専門性の必要な取り組みの支援など、都政のシンクタンクとして期待しています。今回も、「都政との連携」について伺いました。
都立大・管理職候補者研修
Q1 東京都立大学が実施している東京都の管理職候補者研修でEBPMを扱うべきと考えるが、扱っているか。扱っているのであれば、その中身は
A1(片山都立大学調整担当部長答弁)
東京都立大学では、都の人材育成部門と連携し、大学が持つ専門的な知見を活用した研修プログラムを職員等に提供。お話の幹部職員の育成を目的とした研修では、「証拠に基づく政策立案」いわゆるEBPMをテーマとした講座を実施。この講座では、政策の意思決定の根拠となる各種エビデンスの収集方法や、データの数理的な分析結果から意思決定を行う手法などを教授するとともに、具体的な政策分野を題材に、最適な意思決定の方向性やそのために必要なエビデンスなどについて、グループで討議するワークショップも実施
私は、ワークショップの資料も拝見させていただきましたが、概念は理解できると思うものの、知っているのとできるのとは別です。内閣府、産業労働局も、専門人材を含めた実施体制を整備しています。都のシンクタンクでもある都立大学のご専門の先生にも、都におけるEBPM推進の一翼を担っていただけるよう、要望しました。
都立大・大都市課題解決に資する学際的大型プロジェクト
Q2 大都市課題の解決に資する学際的大型プロジェクト10件以上を創設する目標について、達成に向けた進捗が不十分との評価。今後の取組は
A2(片山都立大学調整担当部長答弁)
都立大では、都の各局担当者から施策や課題などの説明をしてもらう「都事業説明懇談会」や、教員が各局担当者に対して都政課題の解決に資する研究等の提案を行う「施策提案発表会」など、研究者と都のマッチングの機会を提供。一方で、こうした過程によって組成される案件は、研究者個人のキャパシティや専攻領域を超えないものに留まることが多く、学際的な大型プロジェクトが実現しにくい状況。
こうしたことから、都立大では、TMUサステナブル研究推進機構において、各局の研究ニーズに合わせて、研究者のチームをアレンジしたり、外部の研究機関を参画させるなど、プロジェクトの組成を分野や組織の垣根を越えて進めていく。
大都市課題の解決に資する学際的大型プロジェクトの創設に向けた取り組みを担う「TMUサステナブル研究推進機構」について、
Q3 令和3年度に調整した東京都医学総合研究所との感染症対策に資する共同研究とは
A3(片山都立大学調整担当部長答弁)
都立大では、感染症対策分野における課題の解決に資する研究プロジェクトに本年度から着手。同大の強みは、細胞化学などのバイオ領域にあるが、こうした分野の知見を活かして、感染症対策に関し具体的な研究成果を上げていくため、医学分野に関する豊富な知見を持つ東京都医学総合研究所と連携し、学際的な共同研究を推進。現在進行している研究テーマは、「新しいワクチン開発戦略の構築」、「家庭用感染症検査薬の開発」、「細胞治療による感染症治療」の3件。
いずれも、都民、ひいては人類の益につながる、チャレンジングな研究。
国際金融の共同研究
続いて、これも「TMUサステナブル研究推進機構」を通じて、
Q4 令和3年度に開始した国際金融に関する共同研究とは
A4(片山都立大学調整担当部長答弁)
都立大では、昨年度から都の国際金融都市担当部門と連携し、グリーンファイナンスの活性化に資する研究を実施。東京にグリーン投資を呼び込んでいく上で、ESG投資等の投資先やグリーンボンドの発行体などの透明性の確保が求められるとされている。本研究は、こうした状況を踏まえ、情報開示の基準や投資の効果などを実証的な研究手法により明らかにすることを目指している。
現在進行しているものは、中小企業等のESG情報の開示内容等の課題を明らかにする研究、及びグリーンボンドの充当事業がもたらした環境へのインパクトを定量評価するモデルケースの提示を目指す研究の2件。
環境に考慮しているとうたいながら実際には考慮していない「グリーンウォッシュ」や、それのESG版の、ESGウォッシュなどが問題になっています。また、金融商品は、格付けや認証が重要です。グリーボンドで先行する都が、これのインパクト評価に取り組むことは責務であり、他国に有利な物差しを先に作られないためにも、重要な取り組みです。
都立大・TMUサステナブル研究推進機構の研究
TMUサステナブル研究推進機構で扱っている研究について事前に確認したところ、従来の都との連携事業にに比べて意欲的な内容だと思いました。紹介動画をいくつか見たところ、最後に都政との関連について触れています。そこで、
Q5 一歩進めて、例えばフレキシブル太陽電池の長期健全性を確保する技術の開発に成功すれば、設置エリアを現状の何倍に増やせるのか、血管障害予防に成功すれば、健康維持にどれほど寄与し、医療費を削減できるのか、インパクトを見積もっていただくとともに、関連領域のロジックモデル策定に協力いただくのがよいのではないか
A5(片山都立大学調整担当部長答弁)
証拠に基づく政策立案、EBPMにおいては、政策がどのようなメカニズムで社会に効果を及ぼすのかの因果関係を明らかにする、ロジックモデルの構築や、その効果の大きさを定量化することなどが重要。
都立大の研究においても、その成果が社会に対してどの程度メリットをもたらすのかについて、定量的に示すことは、研究プロジェクトの効果を分かりやすく説明する上でも有用と認識。こうした取組には技術的な課題もあるものと考えられることから、今後、どのように情報等を示すことができるかなどについて、大学と議論を進めていく。
私の前職は研究開発でしたが、そこでも、実現したらどれだけ社会的インパクトがあるかを説明して、研究開発費を獲得していました。定量的な評価が進むことを期待します!
都立大・都事業の質の向上に資する連携
東京都との連携実績(2021年)を拝見したところ、専門人材として、都政の意思決定や教育に関わる連携が大半でした。なかでは、政策企画局の「GBのインパクト評価の検証」、そして、産業労働局の「『GO TOKYO』のアクセスログや各種統計データの分析」が興味深いと考えます。
Q6 都の事業そのものの質の向上を目的とした連携を増やしていくべき
A6(片山都立大学調整担当部長答弁)
都立大は、都政のシンクタンクとしての役割を果たすため、都の政策や事業の効果をテーマとした研究を積極的に推進。昨年度においても、お話のような研究のほか、例えば、水道水源林の土砂流出防止効果などインフラを対象とした案件も実施。政策の効果をデータに基づき検証・分析する、こうした実証的な研究は、施策や事業の改善などを検討する際、有用なエビデンスになると認識。こうした研究の成果を都の各担当部局にPRしていくことにより、都と連携した実証研究の実績を着実に積み上げていく。
東京都立産業技術高等専門学校(品川キャンパス)と、東京都立産業技術大学院大学(品川シーサイドキャンパス)の視察について
7月20日に、総務委員会として、東京都立産業技術高等専門学校(品川キャンパス)と、東京都立産業技術大学院大学(品川シーサイドキャンパス)を視察しました。その後、各校とやりとりしたことを含め、ご紹介しました。
東京都立産業技術高等専門学校
まず、情報分野の専門性の高さに関心しました。現在、東京都の採用は22歳以上ですが、ストレートに高専を卒業すると20歳です。高度IT人材として採用できる枠組みの検討を要望しました。
また、(机上検討だけでなく)「手を動かすこと」の重要性について興味があり、視察後に質問をしました。
私自身は、手を動かすことの重要性を、型は大学・大学院で学びましたが、実感したのは、前職東芝での研究開発でした。机上で立てた仮説を、実験を通じて検証したり、統計的手法をもって分析をすることで、新たな気づき、そして発見発明につながることを何度も体験しました。発明協会の21世紀発明賞を受賞するなどしましたが、(コンピューター・シミュレーションでもいいですが、)基本的には手を動かさなければ、発明発見はないと断言できます。一方、創造性が重視される今の時代になっても、日本における教育が、知識獲得に偏重していることに危機感を持っています。また、進路選択をしないまま、選択肢が広いという理由で、普通高校、総合大学、と進学することで、結果的に専門性が磨かれないという課題もあります。
そこで、手を動かすことの重要性を示せないかを問い合わせたところ、機械工実習に対する学生アンケートをご紹介いただきました。
・実習前後で、機械操作に対する不安が解消されたり、機械加工に対する興味が沸いたりするなど、授業内容に対する理解が深まるとともに、学習意欲が高まるなどの副次的な効果があった
・「卒業生調査」では、産技高専で学んで身に付いたこととして、「理数と専門の工学に関する知識」や「問題解決能力」、「情報収集力」、「行動力」、「協調性」、「論理的思考力」が身に付いた
すべての、特に科学技術分野に進学を希望する高校生に、手を動かすことの重要性に気づいてほしい。そのためにも、机上検討が中心になりがちの都立高校(進学重点校)との交流、まずは文化祭、ひいては学際的プロジェクトなど、お互いに刺激を受けられる取り組みを要望しました。
東京都立産業技術大学院大学
15年も前になりますが、私は世界初の製品開発に向けて、4拠点を結ぶテレビ会議を週1回のペースでしていました。そこで気づいたことは、「情報共有はできても創造的な議論は難しい」ということです。創造的な議論をするためには、新しい、生煮えの意見を言ったときに、そのコミュニティがそれらを前向きに受け取ってくれるかどうか、メンバーの顔色や反応を見てとらえる必要があります。前向きに受け入れてくれる、という状態を「心理的安全性」というそうですが、既に心理的安全性が確保されているメンバー間であればオンラインでも創造的な議論はできるかもしれませが、まだできていない場合は、現在のオンライン技術を使っても、難しいと考えています。
テスラやホンダはテレワークをやめようとしている一方で、東芝やNTTコミュニケーションはテレワークを推進しています。私は、テレワークをやめようとしている会社は、テレワークが創造性を阻害すると判断したのではないか、と想像しています。そして、東京都もテレワークを推進するにあたり、その課題についても把握しておくべきと思っています。
東京都立産業技術大学院大学では、通信環境を充実させ、テレワーク(テレスタディでしょうか)を可能にしているということだったので、創造的活動と対面の関係に関するお考えを伺ったところ、「アキテクチャ概念」というものを教えていただきました。
・構成要素の相互依存性に注目すると、インテグラル型(擦り合せ型⇒要素を擦り合せて創っていく傾向)とモジュール型(組合せ型)に大別できる
【地域】日本の企業はインテグラル型(擦り合せ型)でものを創る傾向があり、
アメリカ、中国、韓国はモジュラー型の傾向
【分野】自動車開発はインテグラル型(擦り合せ型)の傾向があり、
PC開発はモジュラー型で行われる傾向
【技術】新規性が高い技術領域の開発はインテグラル型(擦り合せ型)の傾向があり、
成熟した技術領域の開発はモジュラー型で行われる傾向
・客観的・論理的に考えると、モジュラー型の場合、基本的に分けやすくなる「切れ目」があるということが特徴であり、モジュラー型はテレワークが進み、インテグラル型はテレワークに親和性が低い、となる。
とのことでした。都内、そして都庁内にテレワークを進める際の参考にしていただきい旨、伝えました。
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