令和4年第3回定例会 総務委員会(3)~デジタルサービス局「東京のDX推進強化に向けた新たな展開」について

福島りえこ,世田谷区,都民ファーストの会,都議会議員ブログ

 9月28日に、スイスのビジネススクールIMDは、2022年の「世界デジタル競争力ランキング」を発表、ランキングの対象となった63カ国・地域のうち、日本は29位でした。2021年から順位を1つ落とし、2017年の調査以来、過去最低です。私がこれを紹介したのは、行政の取組が遅れている、けしからん、と言いたいわけではありません。私はこれは政治責任だと思っています。
 行政というのは継続性、そして信頼性に重きを置いております。デジタル化のように新しいことに取り組む、これに対して国民や都民の理解を得ながら進めていく、これをやるのは本当に政治家の役割だと思っています。この30年間遅れ、国益を損なったという反省に立ち、これに向き合って立ち直していく必要があると思います。
 私の娘は今21歳で、大学でデータサイエンスを学んでいます。知事の所信表明にあったように、「危機はチャンス」と私も娘にいったりしますが、私が30年前に置かれていた状況とは異なり、はっきり言ってマイナスからのスタートという状況です。これは大人の責任だと思いますし、政治家として先を見て、学び続けること、襟を正して取り組むことを表明しました。
 先の指標で、日本の低下が顕著だった評価項目は知識。前年から三つ順位を落として28位でした。加えて、人材不足デジタルスキル、そして国際経験の少なさと記載があります。先日、宮坂副知事から、都職員が先進的な取組を諸外国に視察に行く、という答弁がありました。大切な取り組みです。
 私からはまず、サービスデザインの徹底について伺いました(写真を撮影し忘れたので動画のキャプチャになります)。

サービスデザインの徹底について

 デジタル化の恩恵は、利便性の向上や効率化だけでなく、データを集めて分析、価値を生み出すことです。政策でいえば、実施した事業の実施前後や、適用/非適用で比較するなどにより、どのような効果があったのか、エビデンスを収集し次の事業設計に活かす、すなわち、EBPM(Evidence Based Polcy Making)が重要です。これを行うためには、データ収集や分析にもコストがかかる。つまり、事業設計段階で予算に組み込まれている必要があります。

「東京のDX推進強化に向けた新たな展開」では、「全庁のDX推進機能を強化し、サービスデザインを徹底する」とし、デジタルサービス局が旗振り役として事業検討や予算、企画の段階といった上流工程から関わるとしています。

Q1 上流工程から関わるにあたり、データ収集と分析を行う視点を持ち、事業検討段階から必要なデータを取り、事業の効果をエビデンスベースで把握・検証していくことが重要と考えるが、見解を伺う

A1(戦略部長答弁)
 デザイン思考を徹底し、質の高いサービスを提供していくためには、データを最大限に活用できる環境を整えることが重要であることから、現在、データの設計や収集、統合までのプロセスを定める「データ利活用ガイドライン」を年度内に策定すべく、検討。具体的には、民間の実務経験が豊富な有識者が参画するWGの下、実際の事例をユースケースとして取り上げて議論を重ね、そこで得られた知見を反映させることで、サービス開発の現場を想定した実践的なガイドラインを作成。
 今後、ガイドラインの浸透と遵守に向けた計画策定にも取り組み、上流工程からデータ収集や分析、効果検証を見据えた事業設計を行うなどデータに関する都庁全体の意識向上を図るとともに、EBPMの観点からデータの積極的な利活用や、事業の適切なマネジメントに活かしていく

大変前向きな答弁です!内閣府経済産業省などは、専門部署を作って推進しています。これらを参考にしつつ、「データ利活用ガイドライン」の中に具体的に書き込むことを要望しました。

加えて、これまでに聞き続き、以下を提案しました。

産業労働局は、都内中小企業の生産性向上を目的に「生産性向上のためのデジタル技術活用推進事業」を行っています。これについて私は、厚労省の「業務改善助成金」を先行事例として、都が事業の効果を把握するだけでなく、この事業を紹介する、介在する士業や専門家の皆様の意識や、中小企業に対するアドバイスを変えていく意味でも、事業効果を定量的に把握する仕組みを導入する重要性を訴え続けてきました。
 令和3年度からは事業前後で生産性について評価・報告するように改まり、さらに今定例会の補正予算案では、申請にあたり従業員の賃上げの計画提示を求めるなど、事業の実施が確実に都民の生活向上に結び付くよう、事業設計が更新されました。
 今後、この助成金を使って、財務会計や労務管理等で、民間クラウドサービスを導入する中小企業が増えるなかで、同意をいただくことを前提で、政策の効果検証に必要なデータに限って取得できれば、「リアルタイム」に、そしてより長期に政策効果検証ができるようになります。事業者側には、都の事業に申請するための書類を自動生成するようなサービスを提供することも考えられます。
 民間銀行では、既に、融資先からの財務に関する報告を回収するコストを下げるために、クラウド会計サービスの導入を働きかけていると聞いています。
 ここで述べたことは一例だが、デジタル化に関する事業設計においては、常に政策評価の観点をもっていただくことを要望しました。

 上流工程から関わっていくための高度専門人材として、プロジェクトマネージャー、システムアーキテクト、UI/UXデザイナー、アプリケーションエンジニア、インフラエンジニア、セキュリティエンジニア、が挙げられていますが、これらの人材は、利便性の向上や効率化のためのサービス開発を念頭に 置いた体制です。

 先に述べたデータ利活用を推進するには、大量のデータから、統計や最適化など、数学的手法を用いて合理的な判断を行えるように意思決定者をサポートする、いわゆるデータ・サイエンティストが必用です。

Q2 そこで、都のDXを推進していくためには、データの利活用を行うデータ・サイエンティストを含めた推進体制を構築していくべき

A2(調整担当部長答弁) 
 都庁各局のDXを推進していくためには、都庁内部の人材に加え、都庁外部で高度な知識・技能等を有する人材を専門分野ごとに確保していく必要。このため、新たに設立を目指すGovTech東京では、高度なデジタル人材を多数登用していくこととしており、例えば、大きなプロジェクトの管理を行うプロジェクトマネージャーや、システムの最適化を牽引するシステムアーキテクトをはじめ、データの分析や利活用を行える人材など、DX推進に必要な多種多様な人材を確保。こうした専門人材を有する新団体とデジタルサービス局が協働体制を構築し、データ等の活用も視野に入れながら、各局の事業がより効果的なものとなるよう、事業検討段階など上流工程から参画していくことを目指す。

データの分析や利活用を行える人材を含め確保できていることを確認しましたが、IT人材は不足しています。都は、人材をプールしシェアリングする取り組みを行うとのことですが、絶対数を増やすための、教育・育成も重要です。

Q3 そこで、都が実施している、デジタル人材の育成の取組について伺う

A3(戦略部長答弁)
 都では、本年2月、「東京都デジタル人材確保・育成基本方針」を策定し、職員のデジタル力向上を図るため、「東京デジタルアカデミー」を新設。今年度からは、ICT職向けにさらなるデジタルスキルの向上を図るための体系的な職層別の研修を実施しているほか、全職種の職員が受講できる、ノーコード/ローコードツールの活用スキルなどを身に付けるワークショップ型のリスキリング研修などを実施。
 今後も、デジタルテクノロジーの進展を踏まえつつ、研修内容の充実を図り、都庁内の効果的な人材育成を進めていく

私からは、より広く、若い年代からの育成について提案しました。

 これまで私は、小中学校でのプログラミング教育、さらには、都立高校での情報教育について、その重要さを訴え、拡充について繰り返し取り上げてきました。特に、高等学校の情報における選択科目となっている「情報II」は、デジタルを作って価値創造をする側になるために必要な内容であり、都立高校における積極的な開設に向けた取り組み、さらには都立大学での入試で評価することを求め、前向き答弁を頂います。しかしながら、まだまだ足りません。
 米国ボストン発祥の「子どもたちがいつでも安全に無料でテクノロジーに触れられるコミュニティーの場」として、コンピュータクラブハウスがあります。1993年にマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボが協力して博物館につくったのが始まりだといわれており、人種的マイノリティーや低所得層の子どもたちにテクノロジーの利用機会が開かれる場であり、パソコンやタブレットのほか、3Dプリンター、レーザー加工機、最近だとドローンやVRなどの機器があり、大人がメンターとなって、子どもたちと協力して好きなことを一緒に追求できる場になっています。現在は世界19カ国100カ所以上に設置されているそうです。
 プログラミング教育やSTEAM教育というのは、機材をそろえるだけで多額のお金がかかってしまう領域です。親にそもそもリテラシーがあって、家庭にPCなどがあったり、月数万円という高額な授業料を払える家の子供は、作る側のデジタルとの付き合い方に早々に触れることができますが、家計にゆとりがないご家庭では、デジタルに触れるといっても、一人で過ごせるようにゲーム機を与えられるなど、触れ合い方が異なる傾向があります。
 デジタルの消費者ではなく、デジタルを使って創造する側になるための教育機会を平等に設けることは、これからを生き抜く子供達にとっても、そして、東京が国際競争力を持つためにも、重要です。東京は、高度IT人材が集積している場所でもあります。この地の利を生かして、より多くの子供達が、家庭の経済力の差なく、プログラミングに限らず、動画制作、音楽制作などデジタルによる表現活動を自由に行える場所を増やし、育む、といった、教育政策にとどまらない取り組みについても、視野に入れていただくよう、要望しました。

東京データプラットフォーム(TDPF)について

行政サービスの利便性向上・効率化はもちろん、データを使って価値創造するという観点から、私は、プラットフォームの重要性を都議会議員1年目から訴えてきました。

Q4 海外の先進事例について「国から自治体まで一気通貫でデジタルサービスが提供され、満足と信頼を得ている」とあるが、大変大切な視点である。都はこれを目指すべき

A4(調整担当部長答弁)
 海外のデジタル先進都市では、国がIDや基礎的なデータを整備・管理し、自治体等がこれらを活用してサービスを提供し、住民の高い満足度や信頼度につながっている。
 今回公表した新たな展開では、効率的で一貫性のあるサービスに向け、区市町村と協働した共通化・共同化に向けた取組や、マイナンバーやGビズIDの活用やデータ連携など様々な分野で多面的に国との連携強化を掲げており、こうした取組を新団体とも協働しながら戦略的に展開

行政の発注は、公平な競争を目的に入札をベースにしており、複数事業者が応札できること、そして、いったん入札に応じることができた事業者は、仕事を継続的に受注したいという目論見もあり、仕様に独自性を盛り込みがちです。この結果、藤井あきら議員もよくとりあげる「ベンダーロックイン」が起こってしまいます。既に、国内のプラットフォームと呼ばれるものは、乱立かつ、システム間で連携をとるのに苦慮する傾向にあります。

Q5 都が構築するデータプラットフォームは、各主体が有するデータを相互活用、統合分析できるように、調整を図り、さらには国と接続する役割が都にはある。財政規模が大きく、デジタルサービス局を国に先駆けて設けた都が、まず、国内のモデルとなるような取り組みを行うべきと考えるが、具体的な進め方について伺う

A5(データ利活用担当部長答弁)
 都は、官民を問わず、広くデータ流通を促進し、利活用を進めるための基盤として、東京データプラットフォームの構築に取り組んでおり、今年度は、仮想データ連携基盤を整備。本格稼働に向け、取り扱うデータとしては、まず都及び区市町村の行政データを中心に揃え、順次交通など公共性の高いデータ、民間データへと分野を拡大していくことを予定。また、国の進める分野間データ連携基盤「DATA-EX」とも、接続を想定
 東京データプラットフォームを介し、国や自治体、民間事業者など様々な組織がつながることで、データの相互利活用を推進し、新たなサービス創出を促す先駆的な取組を都から展開

私からは、以下を提案しました。

 都内基礎自治体の取り組みの中で最善と判断した取り組みについて、全自治体に展開することを都の役割とすることで、都内基礎自治体は、それぞれ良かれと思うものがトライできるようになります。
 都が、そのなかで優れているもの、実績の出ているものを選んで都内に展開できれば、統合が図られるとともに、自らプラットフォームを整備できない自治体の支援にもなります。事業者を指定すると競争を阻害することになりますが、仕様を共通化する分には問題ありません。検討を求めました。

DXを牽引するデジタルサービス局長の決意の確認

Q6 最後に、「東京のDX推進強化に向けた新たな展開」に掲げた取組の牽引役として、DXの実現を目指す、デジタルサービス局長の決意を伺う。

A6(デジタルサービス局長答弁)
 区市町村を含めた東京全体のDXを推進するためには、都庁内部の強化だけではなく、民間など都庁外部のリソースを活用し、内外の力を結集してイノベーティブなサービスを生み出していく必要。そのための新たなプラットフォームとして、今回「GovTech東京」を設立する構想を打ち出すとともに、今後取り組む展開方針を8つの切り口で示した。そこでは、質疑頂いたデータプラットフォームの構築や、ID戦略おける国との連携、データ分析に基づいた各局や区市町村のサービス開発など、多岐にわたる内容を盛り込んでいる。東京全体のDXを実現するためには、こうした取組をスピード感を持って総合的に推進していかなければならない。
 そのためには、DXを推進する政策企画機能をもつデジタルサービス局と、高度な専門性を活かしたサービス開発機能をもつGovTech東京の2つの組織がフラットな協働体制を構築し、一体となって取り組んでいく必要。局内で大いに議論し、知恵を出し合いながら、この新しい体制を作り上げていきたいと考えている。従来にない枠組みにより、都民に質の高いサービスを提供し、東京全体のDXを推進するという、この新たなチャレンジに、局一丸となって積極果敢に取り組んでいく

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