「令和5年 事務事業質疑」スタートアップ・国際金融都市戦略室

福島りえこ,世田谷区,都民ファーストの会,都議会議員ブログ

国際金融都市・東京構想

 都は、2017年11月に「国際金融都市・東京構想」を策定し、2025年、2030年のキャッシュレス決済比率やフィンテック企業数、資産運用業者数等を数値目標に定め、取り組みを進めています。

そのうちの「フィンテック企業数」については、ニューヨーク、ロンドン等と比較して、絶対数で大きく劣っている状況を踏まえ、都は、金融系外国企業の、東京への進出と定着に取り組んできました。

一方、我が会派はかねてより、金融系外国企業の誘致を都内経済の活性化や都民生活の向上につなげていくためには、数だけを指標にすることにはリスクがあること、質も重要であることを伝えてきました。

これを受けて都は、金融系外国企業の誘致について、企業の数だけではなく、質を高めるよう見直しを行ったと認識しています。

Q あらためて、質を高めるための見直しの内容を伺う。

(特区・規制改革担当部長)
〇東京進出の実現可能性を高めるため、昨年度から、原則として資産運用業者は運用資産残高が10億ドル以上、フィンテック企業については資金調達ラウンドがシリーズA以降など、一定規模以上の企業が発掘誘致の対象
〇また、今年度は、目標値を企業価値等の合計値を加味する形へ見直した。各資産運用業者の運用資産残高を合算して100億ドル以上、各フィンテック企業の企業価値を合算して10億ドル以上も目標値に加え、都内経済や都民生活の向上に寄与する可能性が相対的に高い企業の誘致を評価する仕組み。

昨年度からは運用資産残高や資金調達能力が一定規模以上の企業に、そして今年度からは企業価値等の合計値や、事業内容なども評価するように改めたことを確認した。そこで、

 昨年度の誘致対象の見直しを受け、どのような実績となったか伺う。

A(特区・規制改革担当部長)
〇昨年度は、先ほど説明した基準を満たす11社から、東京進出を正式に決議した投資計画書を取得し、発掘、誘致。
〇例えば、世界の約40の国・地域で事業展開し、従業員6,000名を超えるイタリアのフィンテック企業を発掘、誘致し、当企業は、昨年度中に東京進出。

今年3月の総務委員会のわが会派からの質問に対し、令和3年度の実績が15社であったとの答弁を得ているので、条件を高くしたことで数的には厳しくなっていることがわかります。

しかしながら、フィンテック企業の誘致は、この先、雇用創出や、技術、人材、情報などの集積による都内企業との連携、さらには、都民生活の利便性向上につながる金融サービスの提供など、国際金融都市東京に深く根付いていくことを考えると、その質の管理は重要です。引き続き質の維持に取り組むよう求めました。

加えて、我が会派の清水都議が、前職で国税局の国際課税に関わってきた経験から、先の委員会で、外国企業が国内であげた利益を、確実に日本への納税につなげる難しさについて指摘をしている。合わせて、現段階からの検討を要望しました。

スタートアップ支援拠点 Tokyo Innovation Base Tokyo Innovation Base

かねてより我が会派は、都内産業振興におけるスタートアップ支援の重要性を訴えてきました。

都は東京の新たな成長戦略における重要な柱の一つに、スタートアップの支援を位置づけ、昨年11月には、スタートアップ戦略「Global Innovation with STARTUPS」を策定しました。今後5年でユニコーン数、起業数、官民協働の実績をすべて10倍にする、10×10×10のイノベーションビジョンを掲げた野心的な戦略です。

この中における最も重要な施策の一つが、スタートアップの一大支援拠点「Tokyo Innovation Base(TIB)」です。日本版「Station F」の設置を求めてきた我が会派の要望に応えるものであり、高く評価するものですが、一方で、都はこれまで様々なスタートアップ支援の拠点を設置してきており、加えて、民間においても様々な事業者がコワーキングオフィスやアクセラレーションプログラムなどを提供しています。

こうした中でTIBは、イノベーションを巻き起こす中核的な拠点として、既存の施設と異なる役割を果たすことが期待されていますが、改めて

Q なぜTokyo Innovation Baseを設置するのか、見解を伺う。

 (スタートアップ戦略推進担当部長)
○東京は、大丸有、六本木、渋谷などの各エリアに、スタートアップの支援機関や大企業、大学等が集まり、それぞれが特色ある活動を展開している。
○こうした様々なエコシステムが一つの都市に内包されていることは、東京の強みである一方、これらが分散してしまい、全体像も見えづらいという課題がある。海外の関係者などからも「東京のどこにどのようなスタートアップがいるのか分からない」と聞くことが多い。
○このため、東京中のあらゆるプレイヤーが集まるプラットフォーム、TIBを構築し、国内外のスタートアップや支援関係者と結び付けていくとともに、連携・交流を通じて、より効果的な支援を展開することとしている。

Tokyo Innovation Baseは、スタートアップ支援に関わる都内のあらゆるリソースとつながり、国内外のスタートアップや支援関係者と結び付けていく、巨大なハブの機能を目指していくと理解しました。このような役割は、これまでのインキュベーション施設では担ってこなかったものであり、東京都だからこそできる新しい取組だと考えます。次に、

Q2 こうしたプラットフォームを創り上げていくために、TIBではどのように取組を展開していくのか、見解を伺う。

A2(スタートアップ戦略推進担当部長)
○TIBでは「みんなで創る」をコンセプトに、スタートアップ支援に関わる多くの関係者を巻き込みながら活動を展開することとしている。多様なバックグラウンドのプレイヤーに、東京都とともにTIBの活動を担っていただき、それぞれが持つネットワークを通じて多くの人を呼び込む。
○具体的には、民間支援機関などのキーパーソンに広く声をかけ、TIBの企画・運営に参画していただくとともに、イノベーションの創出やスタートアップの成長に取り組む企業・団体等を「TIBパートナー」と位置付け、連携して、人々が集い交流する様々なイベント、プログラムなどを実施していく。

我が会派のメンバーも、TIBの発展、そして東京のスタートアップ育成に資すると考える関係者に数多くつなげてきました。魅力的な人、そして最新の情報が集まれば、さらにそこに人、モノ、カネが集まってきます。行政がこれをつかさどるという大変チャレンジングな取り組みです。引き続き会派を挙げて応援することを表明しました。

さて、TIBは、11月のプレオープン後は、当面、イベントの開催からスタートし、順次機能を拡大し、来年5月に本格オープンする予定と伺っています。つまり、このTIBの黎明期にどのようなイベントを開催していくのか、これがTIBの評価やプラットフォームとしての求心力に大きく関わってきます。何事も初めが肝心です。単なるイベント会場に留まらない、東京の新たなイノベーションハブに相応しいラインナップが必要と考えます。そこで、

Q3 TIBは、どのようなイベント会場を整備し、どういう考え方でイベントやプログラムを展開していくのか、見解を伺う。

A3(スタートアップ戦略推進担当部長)
○TIBは、多くの人々が集まり、交流し、イノベーションを生み出す拠点として、多様なイベントに対応できる施設とする。ステージが設置された大型のイベントスペースのほか、セミナーなどにも活用できる中規模の会場も設置する。
○プレオープン後は、パートナーとなった企業・団体等と連携し、スタートアップ・エコシステムの発展に資するプログラムを重点的に実施していく。
○若者のアントレプレナーシップの醸成、スタートアップのグローバル展開や海外の投資家等の呼び込み、地方のスタートアップの成長の後押し、大学等研究者のシーズの事業化などの取組を想定している。

エコシステムの発展に資するプログラムを重点的に実施していくとの答弁でした。私からは、TIBを持続的に発展させていくため、二点要望しました。

(1)アントレプレナーシップを育む取組として、ぜひ大学生だけでなく、我が会派の要望を受け、デジタルサービス局が今年度より検討を開始した「子供向けデジタル体験向上プロジェクト」など、将来の夢や方向性が見えつつある小学生、中学生を対象としたイベントなども、TIBで積極的に実施していただきたい。TIBのイベントで起業を身近に感じたり、全力で取り組む大人を見て憧れを抱いた子供達が、成長して再びTIBにやってきて起業を目指すというように、この拠点が若い世代にとって何かに挑戦する場として定着していけば素晴らしいと考える。
(2)自分で一から事業を立ち上げた、世界一にまでした、という経験をもつ先輩が、起業を目指す若者に対して指南をする仕組みの構築である。実はこのような経験をした世代は、リタイアにさしかかっているが、自ら成し遂げた人にしか伝えられないことがあり、次世代育成にも想いを持たれている。業家として成功した方が、TIBを訪れる若者のメンターとなって成長を後押しすることで、TIBで育った若者は、また次世代を育てていくだろう。このような良い形の伝統をぜひ作っていただきたい。

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