「令和5年度都議会第3定例会」総務委員会④~総務局

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令和4年度東京都公立大学法人の業務実績評価

わが会派の、「令和4年第1回都議会定例会」の予算特別委員会の質疑を通じて実現した「Society5.0 時代に求められる 人材を育成する数理・データサイエンス副専攻コースの開講」が評価されました!

Q1 「数理・データサイエンス副専攻コースを開講し、想定を大幅に超える86 名の新規登録者を得た」とのことだが、中身、最新の実績、文理の内訳について伺う。

A1(都立大学調整部長答弁)
○ データサイエンスやAIを課題解決に活用できる人材を育成するもので、文理を問わず履修可能
○ 統計分析などの数学科目や、データ処理、機械学習に関する専門知識を学ぶ科目のほか、実際のデータを用いて課題解決に取り組む実践的な科目まで、体系的に学べる内容
○ 現在146名が履修しており、このうち、文系は25名

履修者が増え、文理を越えて履修されていることを嬉しく思います!

かねてより、教育の質を高めるためのEBPMの重要性を訴えてきました。卒業後の進路等への影響など、取り組みの成果検証も行うよう要望しました。

東京都立産業技術高等専門学校の特別推薦入試制度について

東京都立産業技術高等専門学校については「地元自治体と連携した特別推薦入試制度の入学希望者が増加」が評価されました。

Q2 品川区、荒川区と連携し、令和4年度は4名を受け入れたとのことだが、どのような入試なのか伺う。

A2(都立大学調整部長答弁)
○ 特別推薦入試は、ものづくりに意欲的な学生を受け入れるため、数学や理科などの科目で優れた成績を収めている中学生を対象に、中学2年生から3年生にかけて、高専で機械や電気などの体験型のスクーリングを行い、レポート提出や中学校長との協議を通じて、受検生の目的意識や適性を判定し選抜

基礎自治体、学校側と丁寧な調整のうえ、行われている事業であることを確認しました。


特に私は、将来のIT人材不足も見据え、新学習指導要領により小中学校にプログラミング、情報教育が必修化されたことを契機として、興味を持った子供たちがその分野をより学べる環境の整備について続けてとりあげてきました。

昨年7月に、東京都立産業技術高等専門学校を視察、情報セキュリティ技術者育成プログラムで専門性の高い教育が行われている様子を拝見しました。

Q3 早い時期から情報分野に関心を持つ中学生に、高専の学びを体験する機会を提供すべきと考えるが、取組状況について伺う。

A3(都立大学調整部長答弁)
○ ICTに関心を持つ中学生を対象とした体験型の勉強会を開催
○ 令和4年度の端末等を扱いながら体験を通してICT技術を学ぶ講座では、WEBサーバを構築するコースや、ドローンの自動制御プログラムを作成するコースなどを開催
○ また、情報セキュリティの重要性を楽しみながら学ぶ講座では、パスワードの文字の種類や桁数により、解読時間がどの程度変わるかを確かめる体験型プログラムなどを2日間にわたり実施
○ いずれも、中学生と年齢が近い産技高専の学生が講師やチューターを務めており、参加者から非常に高い満足度を得ている

この領域は特に、近い年代の生徒・学生同士で学びあう環境は効果的といわれています。

好きなこと、社会に出てやりたいことに早めに気く大切さ

私は、学びをはじめとする成長過程において、好きなこと、社会に出てやりたいことに早めに気づくことは次の2つの意味で大切だと考えています。委員会室で今期より利用可能になったモニターを使って説明しました。

東京都議会 常任・特別委員会中継(4:50:25以降)

(1)限られた学びの時間を何に使うか

【図1】の四角一つ一つは時間で、高校の「普通科」であらゆる教科を満遍なく学ぶ様子を模式的に示しています。

普通科を選択する理由の一つが、将来の選択肢を狭めたくない、というものではないでしょうか。私自身も、高校進学時には将来の職業イメージを持てずに、高校の普通科に進学しました(ちなみに私の母校の千葉県立船橋高校には理数科もありました)。

【図1】

しかしながら、高校時代に学習に割ける時間は程度の差はあれ限られています。自分が進みたい職業や学びたいことがはっきりしていれば、必要単位以外を専門的に学ぶ時間に充てることで、強味ができたり、突出した能力を獲得することができます。それを示したのが【図2】です。

私は、大学進学時にも職業は具体的にイメージできておらず、理学部(化学科)を選びました。しかしながら、東芝という民間企業の研究所で働くにあたっては、工学部で学んできた人の専門性、さらには「東芝学園」という企業内学校で高校卒業以降、東芝で技術開発するためのスキルを習得された方の専門性には、驚かされまたし、支えられました。まるで自分の手足のように測定機を扱える様は、知識として知っている、実験実習で何回か使ったことがあるレベルの私とは、まさに雲泥の差でした。

中学卒業時点で、自分が好きなこと、やりたいことが分かっている人が、進学先として専門学校や高専などを知り、選択できることは大切です。企業が「神山まるごと高専」はじめ、高専での人材育成に着目するのはこのあたりに理由があると考えます。

【図2】

(2)何のために学ぶか

2点目は、何のために学ぶか、です。【図3】は、私が考える「日本における教育と就労の現状」を示す概念図です。就労するまでは教育サービスを受ける側であり、就労後の社会への貢献と大きな断絶があります。

私自身は就職して希望した研究所に配属されたのですが、成果主義のもと、同僚、後輩、先輩が全てライバルであること(大学では相談すれば何でも教えてもらえました)、さらには、自分が何をしたいかを毎日のように問われ、提案できないなら存在価値がないことを知り(今となれば当然ですが、大学では修士課程までは研究テーマの設定は先生や先輩が相談にのってくれていました)、愕然としました。

【図3】

本来は【図4】に示したように、教育サービスを受ける意識から社会への貢献意欲に徐々に切り替わるなかで、「何をしたいか」から「何を学びたい」という学びの動機が生まれるのが自然であると感じます。

【図4】

これを実感したのがコロナ禍での経験です(「コロナ禍で私が経験したこと(子ども発か、保護者発か)」参照)。日本の学校に通う生徒の保護者の皆様から(受験を控える)我が子が通常の授業が受けられるように早期のオンライン授業を望む声を大変多くいだたいた一方で、インターナショナルスクールに通う生徒の保護者様からは「子どもが学校にある3Dプリンタを使って、医療現場で不足しているフェイスシールドを作り提供したいというので、区内の医師会につないでほしい」というご相談を受けたのです。非常時にも通常通りの学習サービスを享受したい日本の生徒(というより保護者)と、社会を担う側に転じる生徒に大きな違いを実感しました。

私からの提案がきっかけとなり、会派要望になり、今年度から都が事業化に取り組んでいる(私も視察に行きました)、米国発祥のコンピュータークラブハウスを参考にした「子供向けデジタル体験向上プロジェクト」があります。ここで興味を持った子供たちが、東京都立産業技術高等専門学校の体験型の勉強会や特別推薦入試制度を知り、目指せるような環境にしていただきくよう、要望しました。

第三期中期目標期間東京都公立大学法人業務実績評価

TMUサステナブル推進機構

「第三期中期目標期間の終了時に見込まれる業務実績評価書」には、

「大都市課題に資する学際的大型プロジェクト創設について順調に実績をあげているとは言い難い、東京都と連携した共同研究やプロジェクトは、研究の活性化や都政への貢献につながるため、さらなる取り組みの強化を望む」

とありました。私は以前より、継続して、都立大が都のシンクタンクであってほしいと求め、令和3年度にはアカデミズムの立場から都政の課題解決に資する調査研究を推進する「サステナブル推進機構」も発足しました。今回の「都市課題解決」の評価は3(予定通り)であり、

「東京都との連携を推進するため、行政ニーズと研究シーズとのマッチング機能の強化に取り組んでおり、都連携事業の件数は令和元年度に大幅に増加し、その後高い値を維持している」

との記載があります。また、

「社会との価値共創を取組の柱に掲げる第四期中期目標期間においては、都政の重要課題をテーマとして設定し、教育、研究、リカレント教育など幅広い分野で大学を挙げて取り組むなど、都立の大学ならではの取組を一層推進することを期待する。」

とあり、一歩前進と言えるかと思います。とはいえ、「第四期中期目標期間に向けた課題及び法人への要望」の欄には

「東京で活躍する多種多様な主体と連携し、都政課題と2大学1高専の専門的知見とを結びつけ、新たな価値の創造に取り組んでいくことを期待」

とさらなる取り組みを求められています。

今定例会の知事の所信表明では「ニューヨークを中心に都市課題の解決に貢献するコロンビア大学と、研究や人材交流等を進める覚書を締結いたしました。全国的な学術研究のネットワークを持つ東京大学とも手を結び、国内外の大学と連携の輪を広げます。」と表明されました。ここは都立大学であってほしかった、というのが私の率直な想いです。

Q4 サステナブル推進機構の実績はどのようになっているのか、また今回、どう評価されたのか、あわせて伺う。

A4(天野都立大学調整部長答弁)
○ 第三期において、大気から二酸化炭素を効率的に回収する技術の研究や、柔軟で耐久性があり様々な場所に設置できるフレキシブル太陽電池の開発など、都政課題の解決に向け延べ14件の調査・研究を実施
○ 第三期における同機構の実績は概ね良好との評価

国際金融に関する共同研究

課題先進都市である東京のリーダーである小池都知事が、少子化対策、GX、国際化、などに注力してきたことを評価します。これらの領域で大きく改善、進捗が認められれば、世界に発信できます。

Q5 令和3年度に開始した国際金融に関する共同研究の成果について伺う。

A5(天野都立大学調整部長答弁)
○ ESG情報の開示等に係る研究は、企業は社会貢献やリサイクル等に関心が高い一方、投資家は取締役会の改革といったガバナンスに関心が高いなど、意識にギャップが大きいこと等を示した
○ グリーンボンドに係る研究は温室効果ガス削減効果を定量化するモデルを構築し、海外都市との比較などにより、東京における上下水道施設の省エネ化事業による削減効果が大きいことを明らかにした。

これらの共同研究は終了したとのことですが、特に後者について、温室効果ガスの定量化のためのモデルができたのであれば、都の2050年カーボンハーフ達成に向けた全事業について適用し、削減効果の把握と事業のブラッシュアップに活用するべきではないでしょうか。年度で事業を実施する都に対し、長期的な取り組みができるところが特徴の一つでもあるので、引き続き連携に努めていただくことを要望しました。

都政課題解決に向けた連携強化

Q6 令和4年第3回定例会総務委員会で、「都の事業そのものの質の向上を目的とした連携を増やしていくべき」と質疑したが、実績について伺う。

A6(天野都立大学調整部長答弁)
○ 都政のシンクタンクとしての役割を果たすため、各局と連携して、政策や事業の効果をデータに基づき分析し、その改善を検討する際に有用なエビデンスが得られる実証的な研究を実施
○ 令和4年度からは、建設局と連携し、水辺空間の魅力向上や賑わい創出等に資するため、隅田川の河川整備事業による人流や周辺住民の意識の変化を定量的に分析する研究に着手

隅田川の河川事業による人流の評価については、手前みそですが私からの提案もきっかけになっています。質疑を通じて、港湾局が「水辺のライトアップ事業」の評価をロケーションデータで実施(コロナ以前とコロナ中の人出を、例えばライトアップした天王洲エリアと、ライトアップしていない浜離宮で比較して、天王洲エリアで有為に伸びているなど)、これを隅田川河川事業担当者にも紹介しました。

都民からお預かりした税金をもって行う事業を、執行し終わりではなく、効果検証を通じて政策の質を高めていく、EBPMにつながる取り組みでの連携を引き続き進めていただくよう要望しました。

Q7「未来の東京戦略」とより連携し、都市課題解決で成果を上げていくべきと考えるが、見解を伺う。

A7(天野都立大学調整部長答弁)
○ これまで、高度金融専門人材の育成や未知のウイルスにも対応可能なワクチン開発に関する研究など、「未来の東京」戦略に掲げるプロジェクトに貢献する取組を実施
○ 令和5年度からも、小規模な太陽光発電を活用したグリーン水素の製造に関する研究や、津波の発生を音波や磁気などの変化によって迅速に検知するシステムの開発などを開始
○ 今後も、各局の施策に貢献する研究や人材育成など、都立の大学ならではの活動を推進

全ての研究が該当するとはいわないが、都という実証フィールドがあることは魅力のはずです。そのような思いを持つ研究者を集めることも必要に思います。

東京都との連携事業の推移を、件数、資金面などで示したことを評価します。

Q8 「令和4年第2回都議会定例会」総務委員会で、「都立大学の研究費に占める東京都からの補助の割合は、都立大学の研究が東京都から必要とされているかどうかの指標のひとつにはなりうる」と述べたが、進捗を伺う。

A8(天野都立大学調整部長答弁)
○ 使途の定めのない運営費交付金や学生納付金などの自己収入を財源として、毎年度、一定額の基本的な研究費を確保
○ 一方、各局との共同研究などに要する経費や「未来の東京」戦略など都施策に対応して実施する研究事業に要する経費として、都が法人に措置する額は各年度の事業内容により変動しており、平成29年度は合計3.5億円程度が、令和4年度は合計8.5億円程度に増加

伸びていることを確認しました。

教職員のダイバーシティについて

東京都の「パートナーシップ宣誓制度」を踏まえて、「配偶者」等を対象に含む教職員の休暇・休業等制度について、「パートナーシップ関係の相手方」等を対象に加えるなどの見直しを行ったことを評価します。

一方で、特に理系分野で女性教授が少ないと言われている。有為な女性教員の確保・育成においては、「女性教員比率は20.3%となり、引き続き20%以上を維持した」との記載があります。

一部の大学では、女性研究者支援は新段階に移行しており、教授・部局長・副学長への登用について数値目標を設定するケースも出てきています。

女性教員比率が高い分野が偏っている(例えば、都立大なら、健康福祉学部)事も知られています。理学でまとめてしまうと、物理、化学、数学、情報科学などの女性研究者の割合が低い分野がマスクされてしまいます。

Q9 文理・学科、役職別の女性教員の割合について伺う。

A9(天野都立大学調整部長答弁)
○ 令和5年5月時点の女性教員比率は、文系学部等は約25%、理系学部等は約11%、保健系学部では54%
○ 理系学部等においても女性教員が25%以上を占める学科が3学科ある一方、5%未満となっている学科も4学科
○ 職層別は、教授は約16%、准教授は約25%、助教等は約26%と、このうち副学長や学部長等の役職に就いている者の女性比率は約17%

保険系学部が数値を引き上げていることが判明しました。職層別はあまり偏りがないように見えますが、これも学科別に示すと、別の側面が見えてくると考えます。

アメリカでは STEM分野の多様性を上げ、女性とマイノリティがその能力を十分に発揮できるように、1980年に「理工系科学技術機会均等法(Science and Engineering Equal Opportunity Act)」を制定し、取り組んでいます。

Q10 米国同様に、文理・学科、役職別に、男女別データ解析と現状把握をすすめるなど、ダイバーシティを戦略的に進めるべきと考えるが、見解を伺う。

A10(天野都立大学調整部長答弁)
○ 都立大では、第四期中期計画において女性教員比率を24%以上とすることを目標に掲げ、多様な人材が活躍できる環境を整備
○ 令和4年度に設置した東京都公立大学法人ダイバーシティ推進委員会の下、目標の達成に向けて、現状や課題、ニーズを踏まえ取組を推進

第四期中期計画では、文理・学科、役職別の目標はない、という答弁でした。しかしながら、今回の質疑を通じて、それでは不十分であることを示しました。男女共同参画の推進には、社会に出る一歩手前の学生を取り巻く社会的環境や文化が与える影響は無視できません。新設された東京都公立大学法人ダイバーシティ推進委員会で、文理・学科、役職別の目標についても併せて検討していただきたい旨、要望して質疑を終えました。

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