「令和5年都議会第4回定例会」総務委員会

福島りえこ,世田谷区,都民ファーストの会,都議会議員ブログ

 「東京都震災復興マニュアル 復興プロセス編」では、復興の「基本目標」として「協働と連帯による「安全・安心なまち」、「にぎわいのある首都東京」の再建」を掲げ、復興を進めるための5つの視点と5つの方針を定めており、

その方針の1つめには、「地域復興の課題、将来の市街地像や地域づくりの進め方について、地域の皆さんがすみやかに協議を始められるよう支援する」との記述があり、そのための取組の一つとして都は「地域復興協議会」の仕組みを提示しています。

 この「地域復興協議会」とは、被災地域の住民や事業者等が主体的に参画し、住民同士が協力して復興に取り組む核となる組織であり、平時からの組織づくりや、事前の復興後の街づくりの検討などが求められています。

 このように大変重要な組織なのですが、不勉強ながらその仕組みについて私は知りませんでした。都議会の議事録を「地域復興協議会」で検索したところ、8年前の総務委員会での松葉委員の質疑が最後です。

 地域復興協議会の仕組みやその活動について、地域活動を担う住民等に知ってもらうことが重要と考えるが、都の認識と取組について伺う。

(防災対策担当部長)
○地域復興協議会は、被災地域の住民や事業者等が主体的に参画し、地域力を生かして復興に取り組むための核となる組織であることから、地域活動を担う住民等に、その仕組みや活動内容、運営等について周知することは重要
○このため、災害時に防災活動のリーダー的存在となる人材を育成する防災コーディネーター研修において、地域復興協議会を核とする復興プロセスについて取り上げるなど、理解促進に努めている。
○なお、防災コーディネーター研修は、平成30年度から年1回、50人程度の募集枠で実施しており、昨年度までに計262人が受講

例えば、大規模地震が発生してから一定時間、安全な場所に待機する「一斉帰宅の抑制」については、都は東京商工会議所の調査を活用し、毎年、認知率を測定しています。

震災からの地域復興の中核組織が「地域復興協議会」であることとその役割についても、担い手となる都民の皆様に周知する必要があります。認知率を測定して取り組むべきであることを指摘しました。

また答弁では、防災活動のリーダー的存在となる人材として「防災コーディネーター」を育成してきたとのことだが、少なくとも中学校区に1人ぐらいは必要ではないでしょうか。都内の中学校は平成30年時点で610校とのことです。偏在しないように配慮しつつ、目標値をもって研修を継続して実施するよう要望しました。

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「地域復興協議会の母体となる組織」の項には、「自治会・町会、まちづくり協議会、マンション管理組合、エリアマネジメントを実施する団体のような地域づくり組織や自主防災組織など、平常時の地域活動の状況に応じ様々な団体・組織が母体となることが考えられます。」との記載があります。

 これらの団体・組織を挙げた理由について伺う

(防災対策担当部長)
○ 復興を円滑に進めるためには、住民同士が地域の復興に向けた課題を把握し、強い意欲を持って主体的に復興のあり方について協議していくことが重要
○ このため、その核となる地域復興協議会は、平時の地域活動の状況に応じ、町会・自治会をはじめさまざまな団体が母体となるものである。

答弁にあった、「平時の地域活動の状況に応じ」という点が重要だと考えます。

被災地において本格的な復興までの時限的な生活の場として仮設市街地を整備する「時限的市街地」という概念が提示されています。「時限的市街地」は仮設の住宅、店舗、事務所等から構成するとしていたが、今回の修正で、その定義に集会所被災者支援拠点が追加されました。

Q 時限的市街地の定義に集会所、被災者支援拠点を追加した経緯を伺う。

(防災対策担当部長)
○ 平成30年度に開催した「東京都都市復興基本計画検討委員会」において、有識者委員より「過去の震災では集会所や地域支えあいセンターのような被災者支援施設が重要な役目を果たしたことを踏まえ、時限的市街地にこうした施設が含まれることを明確にすべき」という意見を受けた。
○ このような意見を踏まえ、時限的市街地の定義に「集会所、被災者支援拠点」を追加

有識者の「過去の震災では集会所や地域支えあいセンターのような被災者支援施設が重要な役目」を果たしたという発言がありました。

日頃、コミュニティ活動が行われている場所が被災後も活動拠点になったということは、場所があるというだけではなく、平時のネットワークも機能したのだと思われ、改めて日頃のコミュニティが重要であるということが示されました。

ひとつ前の質問で「地域復興協議会の母体となる組織」として、自治会・町会、まちづくり協議会、マンション管理組合が列挙され、平時の地域活動の状況がポイントになるとのやり取りをしました。

町会・自治会
都が発行する「東京都区市町村年報」によれば、都内23区と26市の49区市で、自治会、町内会など地縁団体の数は、現在の定義で集計を始めた2016年には8,931だったが、2022年には8,787と144減少しています。
加えて、総務局が先月まとめた「東京の自治のあり方研究会 中間報告」では、自治会・町会が抱える問題点として
・役員の引き受け手がいない    66.5%
・役員の高齢化・固定化       44.8%
・人手不足           39.3%
が挙げられています。

マンション管理組合
私はマンションに居住していますが、マンション管理業務はマンション管理会社に委託しており、マンション管理組合は、管理会社が策定した年度計画や修繕計画、予算・決算を承認する組織として存在しています。このようなマンションは少なくないのではないでしょうか。当然、地域復興協議会の母体となる組織、として挙げられているとは考えていないことが想像できます。

これまで、防災関連で「コミュニティ活性化」の重要性をとりあげても、町会・自治会については、生活文化スポーツ局の「地域の底力発展事業助成」が担っており、それ以外については政策企画局が取り組む「みんなの居場所創出プロジェクト」と、どうしても他局の仕事になりがちです。

また、わが会派は、約900万人の都民がマンションに居住しているものの、町会・自治会への加入率が低いことに着目し、マンション住民に対する働きかけを継続して求めてきました。

総務局防災部が、防災学習セミナー「東京防災」アプリ防災ブックのリニューアル等において、マンション防災に関する情報を拡充してきたことを評価します。そして、啓発にとどまらない取り組みとしては、住宅政策本部が、防災資器材の購入を助成する「東京とどまるマンション」事業を強化、生活文化スポーツ局も、来年度に向けて、町会・自治会とマンション住民が連携した防災活動の予算提案をしています。他局の取組はいずれも大切なものですが、防災や震災からの復興においては、コミュニティの活性化に加え、網羅性が重要になります。

P18にある「地域復興協議会に関するQ&A」には、まさに私と同じ質問、「東京では地域コミュニティが存在せず、地域協働復興の取組はできないのでは?」があります。

これに対して、「東京では、コミュニティが希薄という声が聞かれるところですが、平常時から、地域における相互支援ネットワークづくりの構築や地域のケア能力の向上など、行政としてもコミュニティ再生に積極的に取り組んでいきます。」と記載がありますが、記載した通りに、ぜひ積極的に取り組んで頂きたいと思います。そのために、総務局防災部が、都内コミュニティ活性化に果たす役割を明確にするべきだと思います。

私からは、コミュニティの網羅性と活力を把握し、各局の事業に対してフィードバックをかけつつ、網羅性と活力を維持する役目を提案します。

(1)ソーシャル・キャピタルによるコミュニティの活力の網羅的な調査

政策企画局の事務事業質疑で、「TOKYO強靭化プロジェクト」のアウトカム指標としても提案しましたが、都内のコミュニティの活力と網羅性の把握を目的に、ソーシャル・キャピタル系の評価が役立つと考えます。災害時要援護者の支援はもちろん、災害復興においてコミュニティが機能するかどうかを、例えば、地域における「日頃挨拶する人の数」、「災害が発生したら気遣う人の数」、さらには、「災害が発生したら避難を手伝う人の数」などを、サンプリングでよいので評価し、これをコミュニティ活性化策のブラッシュアップに活かしていただきたいと考えます。

ちなみに、子供政策連携室で実施した「とうきょう こども アンケート」では、私の提案により「子供が困っていたら近所の人が助けてくれる」などのソーシャル・キャピタル系の設問を導入、幸福度が高い子供で「そう思う」と回答する子供の割合が高いという結果が得られています。

N(サンプルサイズ)が2000強しかないために、地域としては23区と多摩部の比較しかでしかできていない(結果は、差がない)ですが、総務局防災部として、全数調査でなくていいので、都内62区市町村で比較ができるサンプルサイズで、経年変化を追う形での調査を行うことを提案しました。

(2)町会・自治会などの組織への未加入者に向けた取り組み

総務局は大学生向けの防災学習セミナーを今年度から新たに開催するなどしていますが、プル型の施策であり、要請がないと機能しません。

例えば、江東区は、関東大震災から100年という節目の年となる今年、自助による区民の防災力の更なる底上げ、防災啓発の一層の推進を図るために、防災カタログギフトを区内全世帯に配付し、7割の世帯から申し込みがあったと聞きます。防災意識の向上につながったのではないかと思いますが、これに加え、例えば申請するにあたって、
・自らが所属する、またはするべき町会・自治会の選択(少なくとも認識していただく)
・平時の防災関連の情報提供や、発災時の連絡手段としてメアドの提供やSNSの登録
(町会・自治会に加入しなくても、せめて情報が届くようにする)
などを課せば、都民の行動変容につながるのではないでしょうか。

コミュニティの活力度と網羅性を高める取り組みを検討するよう、改めて要望しました。

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「地域復興協議会」には、地域のより多くの当事者が参画し、緊密に話し合いや意思決定を進めることが望まれます。しかし、被災時には多数の住民等が地域外に避難したために対面による開催に困難をきたしたり、聴覚障害などユニバーサルコミュニケーションが求められる状況も考えられます。

Q 地域復興協議会の運営について、オンラインによる課題の説明や意見集約するような仕組みも必要と考えるが、都の見解を伺う。

(防災対策担当部長)
○多くの住民等による意見集約や合意形成などが行われる地域復興協議会の運営においては、デジタル技術の活用も含め、それぞれの状況に応じた効果的な手段が用いられることを想定

想定するだけでは不十分であり、事前の備えがあったほうがいいのは明らかです。しかしながら、「地域復興協議会」も知られていないようでは、事前の準備は困難であることが予想されます。例えば「防災コーディネーター研修」で具体的な事例を示すなど、事前の備えが進む取組みを要望しました。

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災害時にいち早くがれきを撤去したり、破損したインフラを補修するに当たり、重機は不可欠です。一方で、現在都内で稼働している重機の中には、都外から搬入されるものも多いと聞きます。災害時に被害の大きかった地域に十分な数の重機がなければ、復興の遅れにつながりかねません。

 都内における重機の数と分布を把握するなど、迅速な復旧復興に備えるべきと考えるが、都の見解を伺う。

A(防災対策担当部長)
○ 都は、災害時に道路や河川などの応急措置や障害物除去を迅速に行えるよう都内の建設業界の団体と「災害時における応急対策業務に関する協定」を締結
○ この協定に基づき、団体は会員が保有する災害時に稼働可能な建設資機材等を把握し、平時から都に報告するとともに、災害が発生した場合には、都の出動要請を受け業務を実施することとしている。
○ また、発災時には交通規制を実施するなど、建設重機をはじめとする災害応急対策に使用する緊急通行車両を優先して通行させることとしている。

建設業には、職人の高齢化・若年層の入職者の減少、低い労働生産性、多重下請け構造といった大きな社会的課題があります。この状況を受け、23区の過半数では公契約条例を締結する動きもあります。都の財務局も、我が会派の求めに応じ、今年度、都発注工事の下請け次数の調査に取り組んでいるところです。総務局防災部においては、災害復興を担う建設業界の持続可能性に留意し、必要に応じて適切な支援を行うよう要望しました。

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被災時において被災者が生活や事業の再建を進めるに当たり、支援策に関する情報はたいへん重要です。さまざまな支援策があっても必要とする被災者が見つけられなければ活用できません。

 今回の復興プロセス編の修正において、被災者支援に関する情報発信をどのように強化するのか伺う。

(防災対策担当部長)
○ 今回の復興プロセス編修正案では、都が実施する被災者向けの支援制度を一覧化したページを新たに設け、各種給付金や住まいなどの支援制度を、被災後の生活再建における困りごとに応じた分類により掲載
○ 今後、修正案の確定に向けた作業と合わせて効果的な情報発信についても検討

「東京都震災復興マニュアル 復興プロセス編」に記載してあるだけでは不十分ではないでしょうか。広報東京都、都のHPに加え、防災関連情報が集約されていると都民が認識しつつある、「東京都防災」アプリを活用するべきです。また、新たに紙ものを作って配布するのであれば、「東京防災」ブックと同じサイズにすれば、マンション防災リーフレット等と一緒に保管してもらえるのではないでしょうか。検討を求めました。

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復興プロセス編の修正では、関東大震災の教訓として新たなページが設けられています。

 「関東大震災からの学び」のページに、行政が行う地震に強いまちづくりと、地域力を生かした地域協働復興の連携を記載したねらいについて伺う。

(防災対策担当部長)
○ 大規模な被害からの一日も早い復興には、自助・共助に根差した住民主体の復興に加え、行政による多様な施策が的確に機能することが不可欠
○ 関東大震災から100年が経過し、都民を取り巻く環境や求められるまちづくりが変わっていく中でも、自助・共助と公助の取組を車の両輪として展開していくことが極めて重要であることから、今回改めて発信するもの

「地域社会の再編成 町内会の形成」の項には、「関東大震災において、 町内での住民組織が配給・救援・相互扶助において一定の役割を果たしたことから、 町内会の整備と事業振興は強く意識されるようになりました。結果として地域社会の再編成が行われ、町内会組織が増加しました。」との記載があります。

これまで、この町会・自治会の持続可能性に課題があることを示してきました。記載は評価するものですが、十分ではないことを改めて指摘するとともに、改めて、総務局防災部には、コミュニティの活力の把握と網羅性について責任を持って取り組んで頂くことを求めて、質疑を終えました。

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