「令和4年度各会計決算特別委員会」第3分科会⑧~建設局(2)道路整備

都議会議員,福島りえこ,世田谷区ブログ

道路整備

都は都市計画に従って道路整備を進めるとともに、社会経済情勢の変化や道路に対するニーズを踏まえ、適宜、その必要性の検証も行ってきました。

昨年10月に、世田谷区三宿を南北に走る「三宿通り」(都道420号)が北へ延伸し、三宿二丁目から淡島通りの下代田東交差点までの約440メートルの区間が開通しました。今年7月に都のHPでは、開通から6か月後の利用状況として、淡島通りから玉川通りまでが直線でつながったことにより、12時間あたり約3,000台が通行する一方で、整備前のメインルートだった、多聞小学校前を通る道路の交通量が約4割減少し、近隣住民の安心・安全につながっていること、さらには、震災時の救急・救命活動のしやすさ、安全な避難路の確保、燃え広がらない安全な街の形成による地域の防災性向上も、多くの皆様が実感していることなどが紹介されています。

このように、必要性を精査したうえでの道路整備は、都民生活を支える社会基盤として重要であると考えます。

・令和4年3月31日現在、東京都における都市計画道路の完成率は、区部で66.2%、多摩・島しょ部では62.8%、
・事業中の路線は、区部で167km、多摩・島しょ部で145km

とのことであり、まだ道半ばです。

Q 道路・街路の整備について、令和4年度当初予算に対する執行率を区部と多摩島しょ部、それぞれについて伺う。


○都は、区部における放射・環状方向や、多摩地域における南北・東西方向の骨格幹線道路など、道路ネットワークを形成するうえで緊急性の高い都市計画道路等において、道路・街路整備を重点的に進めてきた。
令和4年度の道路・街路整備における執行率は、区部で57.5%、多摩・島しょ部で68.9%である。

区部で10%ほど低いものの、都内全域で取り組みが進んでいることを確認しました。

一方で、都民の皆様からは、テレワークの浸透など働き方改革や、自転車利用の増加など移動手段の変化、人口減少などを考慮して、道路整備の必要性を精査してほしいという声をしばしばいただいています。事業の推進にあたっては、都民の皆様のQOL向上につながるかどうかの検証を丁寧に行うとともに、既に完成した道路についての効果について丁寧に説明するなど、都民の理解協力を得るための取り組みを重ねて要望しました。

バリアフリー

東京2020大会を契機とし、様々な分野でバリアフリーが進んできています。本委員会の対象である昨年度は、東京2020パラリンピック大会1周年記念として様々な事業が展開され、また、2025年には、日本で初めてのデフリンピックを東京で開催をすることが決定しました。公共交通や道路などのハード面、心のバリアフリーなどのソフト面の両面でレガシーとして一層バリアフリーを加速させていく必要があります。

その中でも、高齢者や障害者を含めた全ての人が安全・安心に移動できる環境を確保するための、道路のバリアフリー化は、道路のバリアフリー化は、歩道の段差の解消や急な勾配を改善すること、視覚障害者誘導用ブロックを設置することなどがあります。

Q 都は、都道のバリアフリー化にどのように取り組んでいるのか、 令和4年度の実績を含めて伺う。

A
○都は、平成28年3月に策定した「東京都道路バリアフリー推進計画」に基づき、東京2020大会競技会場や観光施設周辺等の都道約90キロメートルと、駅や官公庁、福祉施設、文化施設などを結ぶ都道約90キロメートル、合計約180キロメートルの道路のバリアフリー化を推進。
○令和4年度は、本計画に基づき、大田区内の産業道路など約5キロメートルを整備し、累計約147キロメートルの整備が完了。

「東京都道路バリアフリー推進計画」では、令和6年までに約180キロメートルの整備完了を目指していますが、R04の進捗を外挿しても目標値には到達しません。加速を求めました。

ところで、都内の道路のほとんどを占めるのは区市町村道であり、都道のみバリアフリー化を進めても、障害を持つ方々は目的地にたどり着けない可能性があり、これを解決するためには、区市町村道の整備への支援は非常に大切です。そこで、

Q2 東京2020大会後、区市町村道のバリアフリー化をどのように支援してきたのか、令和4年度の実績を含めて伺う。

A 
○都は、東京2020大会の開催に向け、平成29年度から令和元年度までの間、競技会場等の周辺の区市道におけるバリアフリー化工事を対象として財政的支援
○また、令和2年度にはバリアフリー法に基づく特定道路を対象とした補助制度を創設し、区市町村に対して支援。
○この補助制度を活用して、令和4年度は、台東区など5区に対して支援を行い、約700メートルの整備が完了。
○引き続き、地元自治体と連携して、道路の面的なバリアフリー化を推進。

大会を契機に、区市へのバリアフリー化の補助制度が創設され、今も引き継がれていることを確認しました。

先日、『五体不満足』の著者である、乙武 洋匡(おとたけ ひろただ)氏の講演を聞く機会がありました。2017年に3か月ほど英国で過ごす機会がありましたが、当時、地下鉄などのバリアフリーは日本より劣っていたものの、街中では3ブロックに1人、カフェには1人は、車いすの方を見かけたとのことです。ハード面のバリアがあっても、誰もが自然に手伝う、ソフト面のバリアフリーが、これを実現している、との話でした。

今後は高齢化が進み、ますますバリアフリー化の必要性は高まっていきます。建設局はハード面の取組が中心になりますが、引き続き「段差のないまちづくり」を牽引するよう要望しました。

都道における暑さ対策に関する取組みについて

東京2020大会のもう一つのレガシーとして、都道における暑さ対策があります。

平成20年度からヒートアイランド対策の一環として進めてきた遮熱性舗装は、2020大会でも暑さ対策として活かされました。今年は、国連の事務総長が記者会見で「地球沸騰化」と表現した今年の猛暑でも、一定の効果を発揮していたと思われ、引き続き対策を推進する必要があります。そこで、

Q 都は、都道の舗装について、どのように暑さ対策を進めているのか伺う。


○都は、ヒートアイランド対策の一環として、千代田区や港区などセンター・コア・エリアを中心とした重点エリアを対象に、路面補修工事などに併せて、路面温度の上昇を抑制するための遮熱性舗装や保水性舗装の整備を推進

重点エリアを設け、路面補修などの機会にあわせて取り組みを進めているとのことだが、

 遮熱性舗装などに関する整備目標と、現在の進捗について伺う。


○都は、「未来の東京戦略・バージョンアップ2023」において、遮熱性舗装等を、2030年度までに245km整備するという目標を定め、整備を推進
○また、令和4年度は約10kmを整備し、累計の整備実績は約180km

目標に対して、順調に推移しています。今後は、これまで設置してきた舗装の更新の機会も捉えて、引き続き、着実に対策を推進していただくよう求めました。

無電柱化について

令和元年9月に上陸した台風15号が千葉県内で大規模な停電を起こしたことは印象に残っています。経済産業省の「電力レジリエンスワーキンググループ」がまとめた、「台風15号の停電復旧対応等に係る検証結果取りまとめ」によれば、停電の復旧(停電件数がピーク時と比較して99%解消)にかかった時間は約280時間と、近年の停電被害のなかでは突出しており、その理由は、記録的な暴風にともなう倒木や飛来物によって電柱の破損や倒壊が起こり、それによる断線が多かったことだとされています。

加えて、倒壊した電柱が道を塞ぐと、迅速な避難や、被害確認、救急活動、復旧作業などの遅延につながります。よって、無電柱化は、都民の命を守るための多変重要な取り組みであり、都は現在、令和3年に改定した「東京都無電柱化計画」に基づき、都内全域で無電柱化事業を実施しています。

 そこで、都道における区部と多摩地域の無電柱化の進捗状況について伺う。

A
区部では、令和4年度末までに833キロメートルが完成し、地中化率は約65パーセント。
多摩地域では、234キロメートルが完成し、地中化率は約22パーセント。
○引き続き、都道の無電柱化に積極的に取り組む。

まずは、センター・コア・エリア内の都道から取り組んだ経緯もあり、区部に比べて多摩地域で遅れがあることがわかりました。引き続きの推進、特に多摩地域での加速を求めました。

無電柱化を面的に進めるためには、都内の道路延長の約9割を占める区市町村道についても取り組みを進める必要があります。そこで、

 区市町村道の無電柱化に対する都の支援について伺う。

A2
○区市町村道の無電柱化を促進するため都は、平成20年度から国と合わせて工事費等の概ね4分の3を補助する財政支援を開始し、平成27年度に防災に寄与する路線も対象に加え、その後、補助対象などを拡充し、現在、設計費等は2分の1、工事費等は国と都で全額を補助。
○平成29年度には、設計及び工事費等を全額補助する無電柱化チャレンジ支援事業制度を創設し、整備実績のない自治体などに対して財政支援と合わせて技術支援も実施。
○令和4年度までに、世田谷区など累計49区市町村がこれらの補助制度を活用し、事業を推進。
○今後とも、区市町村と連携を図りながら、都内全域での無電柱化の推進に積極的に取り組む。

防災に寄与する路線など重要度が高い路線や、初めて取り組む基礎自治体については、無電柱化に取り組む際の自己負担がかなり軽減されていることがわかりました。最初に実施する際のハードルが高いとも聞く。全ての自治体が一度は無電柱化事業を経験できるよう、丁寧な取り組みを求めました。

山岳道路における道路災害防除事業について

今年も、九州北部、秋田、千葉、茨城など全国各地で土砂災害が相次ぎました。土砂災害には様々なタイプがありますが、とりわけ、山岳道路が土砂崩れに見舞われ集落が孤立することは、何としても避けなければなりません。

山岳道路において対策を考える際、課題となるのが、急斜面や樹木が生い茂るという状況では、的確な状況把握が難しいことであると聞いています。

一方、デジタルサービス局は「デジタルツイン実現プロジェクト」を推進、立体的に地形を把握する技術である三次元点群データを取得、防災等に活用する取り組みが始まっている。そこで、

 山岳道路を土砂災害から守る道路災害防除事業の取組について、三次元点群データの活用状況を含め、令和4年度の取組状況を伺う。


○令和4年度、奥多摩町の国道139号や御蔵島村の一般都道223号線など25路線で、斜面崩落を防止するのり枠や落石を防止する防護柵の整備などの道路災害防除事業を実施
○航空写真をもとに現地踏査等を行い、緊急度の高い箇所から対策を実施
○さらに、令和4年度からは、三次元点群データを用いた高精度な地形図から災害要因を抽出し、緊急度を確認する作業の精度向上の取組を開始

令和3年7月に発生した静岡県熱海市伊豆山地区の土石流災害では、静岡県が点群データを用いて、産学官連携で算定、発災から数時間で崩壊の原因となった盛土の存在や崩壊土砂量を算定しました。また、令和4年9月の台風15号で発生した、同じく静岡県の島田市の採石場跡地からの土砂流出においても、やはり点群データを使って崩落量を特定、人力では1週間以上かかるところを2日の作業で済み、復旧作業に入るタイミングを早めることができたとのことです。

都においては、引き続き、道路災害防除事業を進めるとともに、最新技術も活用し、事故発生後の対応の加速に努めていただくことを要望しました。

都道における浸透ますの設置について

雨水を地中に浸透させることは、本来の水循環を再生し、河川の水量の平準化につながります。そうした中、道路は都内面積の約1割を占め、その中で都道の占める面積は2割を超えるため、雨水の浸透を考える上で、大変重要なインフラだといえます。

都においては、これまでも、豪雨対策の枠組みなどにおいて、浸透ますの設置が進められてきたと聞いていますが、

Q 都は都道における浸透ますについて、どのような考え方に基づき設置を進め、その結果、全体のうちの何か所で設置されているのか伺う。


○都は、豪雨対策の一環として、豪雨対策基本方針に定められた神田川や柳瀬川などの対策強化流域を中心に、浸透ますの設置などを推進
〇その結果、都道上の約17万箇所の雨水ますのうち、約4千箇所が浸透機能を持つ雨水ます

約17万箇所のうち、約4千箇所の設置ということは、設置率は2.4%です。まだまだ設置できる余地は大きいことがわかりました。

我が会派は、緑や自然の持つ雨水浸透性などの機能をまちづくりに生かす「グリーンインフラ」について、令和元年11月平成30年度公営企業会計決算特別委員会以降、国内外の先進都市の取り組みを紹介するなどして、継続的に都の取り組みをもとめてきました。先の第3回定例会のわが会派の代表質問に対し、知事からは「全庁一丸となって、取組を前に進めるとともに、区市町村や民間事業者による導入も促進するなど、取組の輪を社会全体に拡大していく」との答弁を得ています。

道路に浸透ますを設置することについては、水質の問題や、地下水位が高い場所については設置が難しいことなど、いくつかの課題があることは承知しています。一方で、先の善福寺川界隈などでは、見た目で美しいこともあり、住民が自宅や地域にグリーンインフラを導入、その維持管理に関わるなど、住民自らが雨水浸透の必要性を理解し、豪雨対策を行政まかせにせず、主体的に関わっていただける効果も認められています。

道路の新設時や何らかの改築を行う際などを中心に、雨水浸透ます、さらには、バイオスウェルなどのグリーンインフラの設置についても検討を進めていただくよう要望しました。

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