3/15は、総務局の予算案と付託議案の審査を行いました。
総務局
災害時都民台帳システム
昨年9月に、自身の10回目となる都政報告会を「防災とコミュニティ」というテーマで開催し、専門家をまねていてワークショップも実施しました。ここで議論の中心になったのが、要配慮者の支援でした。福祉避難所への直接避難は地域の人の手伝いなしにはなしえません。一方で、要支援者の情報は、日々変わります。これを更新するとともに、個人情報保護に配慮しつつ、必要なタイミングで必要な範囲に共有したり、避難できたかどうかを把握するには、紙よりDXのほうが向いています。
都は来年度予算に「災害時都民台帳システム」を計上、「シントセイ3」の各局リーディング・プロジェクトにも掲載しています。
一方で、内閣府も昨年末から一部の自治体で「クラウド型被災者支援システム」の試験運用を始め、マイナンバーカードを使って避難所を利用する住民の把握や被災者台帳の作成、罹災(りさい)証明書のオンライン申請などができるという内容で、24年度からの本格運用を目指しています。
Q1 被災者一人一人の命を救うためには、防災DXの活用に当たり、被災者情報の一元的な把握に努めるとともに、区市町村との円滑な情報連携が求められるが、都の見解を伺う。
A1(八嶋防災対策担当部長答弁)都は、大規模災害発生時に、広域的な視点から都民の生活再建と復興業務に係る施策を速やかに進めるため、各区市町村が発災時に作成する被災者のデータを都及び区市町村間で共有するシステムを新たに構築。現在、国においてもシステムが開発されていることから、今後、国の動向等も注視しながら開発を進めていく。
現在、内閣府の「クラウド型被災者支援システム」は、自ら防災DXを構築できない基礎自治体向けに用意されたものではありますが、既存の基礎自治体のシステムとの連携も予定されています。つまり、ここに全国の基礎自治体からの被災者情報が集約されれば、そのうち、都民の情報のみ入手することで、来年度都が構築する、「災害時都民台帳システム」で集約する情報相当のものが入手できると考えます。
さらに、国のシステムは、発災直後から使えるものになっています。具体的には避難者の個人情報などをあらかじめスマホで集約したうえで、避難後は入った施設名や必要な物資、健康状態等を登録でき、避難所だけでなく、自宅避難含めた必要物資供給にもつなげられます。この領域は、まだ総務局の防災DXのスコープには入っていません。
本件は、昨日のデジタルサービス局の質疑でもとりあげ、都道府県も含めた一気通貫での情報連携が効果的であり、デジタルの有効な活用の視点から検討に参画する、との答弁を得ています。
現在、国のシステムはあくまでも基礎自治体向けのものであり、都道府県への情報提供は想定していないため、都のシステムとは競合しないということですが、住み分けを相談するのではなく、共通化、具体的には、システムの重複開発を避けるために、集約した情報の都道府県への情報提供を提案することを求めました。
帰宅困難者対策
「帰宅困難者対策オペレーションシステム」については、2月に王子駅の訓練でLINEアプリによる一時滞在施設への案内や受付などを見学しました。ベータ版で改良の余地があるようですが、紙や電話、ファックスなどのよる情報収集とは異なり、帰宅困難者に関する情報の速やかな把握と、誘導の支援につながると思いました。しかし、帰宅困難者は被害想定によれば約453万人とされています。
Q2 「帰宅困難者対策オペレーションシステム」の開発において、発災時に大量の帰宅困難者等が、情報を求めて一斉にアクセスした場合の対策をとるべきと考えるが、都の見解を伺う。
A2(八嶋防災対策担当部長答弁)帰宅困難者対策オペレーションシステムは、大規模災害時の帰宅困難者の滞留状況、災害発生状況等について情報を収集し、リアルタイムで情報発信することで、帰宅困難者対策を的確に行うことを目指し開発。システムの基盤となるサーバについては、アクセスが集中するなどしてサーバの負荷が過大になると、自動的にサーバの台数を増やすことができる機能を取り入れ、遅滞なく処理を継続することができるよう設計。それにより、約450万人分のアクセスに耐えられるようにするとともに、さらに多くのアクセスに対応できるよう検討。
想定以上のキャパシティを用意していることを確認しました。
事業所防災リーダー
現役世代に防災意識を高めていただくための重要な取り組みとして、事業所防災リーダーの登録状況や企業の防災組織の位置づけについて継続して確認してきました。今後、リーダーの登録数を増やすためにも、企業に、事業所防災リーダーの登録にメリットを感じていただけるような、都からリーダーに配信するコンテンツの充実が必要だと考えます。そこで、
Q3 事業所防災リーダーに配信する情報発信の内容を充実させるべきと考えるが、都の見解を伺う。
A3(八嶋防災対策担当部長答弁)事業所内での災害対策の旗振り役となる事業所防災リーダーの設置拡大のためには、都から、情報発信する内容が企業の防災対策に役立つことをリーダーや企業に実感してもらうことが必要。そのため、今月中に、登録されたリーダーごとに、マイページとしてWebサイト「事業所防災リーダーオフィスページ」を開設し、有益なコンテンツを提供。今後、このページを活用して、リーダーや企業の防災力向上のための教育・研修を実施できるよう検討。
現在、単身世帯・高齢者増といった社会環境の変化、そしてコロナ禍による地域の防災訓練の回数減少など、地域防災力の今後については多くの課題が指摘されています。これもコロナ禍の影響で、テレワークという新しい働き方が生まれたことを踏まえ、私はこれまで、在宅で仕事をしている人が地域防災の新たな担い手になるような取り組みを求めてきました。
都は、1月に公表した地域防災計画の修正素案において、「2030 年度(令和12 年度) までに、首都直下地震等による人的・物的被害を概ね半減する。」という新たな減災目標を設定し、これの達成に向けた主な取組として、都は「地域防災力の再興元年」として、テレワーカー等を地域の新たな担い手として活躍できるようにするための方策の具体化を掲げたことを評価します。事業所防災リーダーに配信する情報発信の中でも、地域防災の意味や仕組みを伝えるとともに、具体的な参加方法を伝えるなど、地域防災力向上にもつながる取り組みにしていただけるよう要望しました。
共助の担い手としての事業者への期待
先に述べた、都政報告会「防災とコミュニティ」の参加者からいただいたお声に、「地元企業」に対する期待もありました。私の地元世田谷区桜新町には、駅に近い場所に「準工業団地」があります。高さ規制が緩いためにマンションの再開発が進み、もともとあった工場のトラックの出入りが騒音としてクレームを受けるなどの逆転現象が起きています。このような場合に、事業者が地域防災の担い手であることが伝わることは、地域の皆様との良好な関係構築にもつながるものと考えます。
Q4 このように、共助の担い手として期待される「事業者」が活躍できるようにするための取組を進めるべきと考えるが、見解を伺う。
A4(八嶋防災対策担当部長答弁)災害時において事業所は、地域の一員としての救助活動等を行うこと、事業継続を通じて地域の経済活動や雇用を支えるなど地域住民の生活の安定化に寄与することといった役割を求められている。そのため、行政や地域との協定締結や、事業所防災計画の作成促進等により、災害時において事業所が自らの役割を果たすことができるよう、セミナー等で周知。
地域防災に協力する役割を伝えると同時に、地域の皆様にもその役割を事業所が担っていることを伝えていただき、地域防災力の向上につなげていただけるよう要望しました。
マンション防災
昨年5月の新たな被害想定では、都心南部直下地震では、閉じ込めにつながり得るエレベーターの台数は22,426台と想定されています。都は、この問題に対し、エレベーターの早期復旧のため、関係団体と連携した全国的な応援体制の構築を促進しており、これを評価するものですが、消防機関やエレベーターの保守会社などが救出救助にかけつけるにしても、道路の被災状況等により、相当な時間がかかる恐れがあり、閉じ込められた人は、命の危険にさらされます。私は、これまでも総務委員会で、マンション管理組合とエレベーターの保守・点検を手掛ける会社と合同で、マンションの住民によるエレベーターの閉じ込め救出が行われた事例があることを紹介してきました。住民による救出は、エレベーターの保守会社ごとに定めた適正な手順を踏む必要があり、平時から、閉じ込め救出のための訓練を行っておく必要があります。
住民により閉じ込め救出訓練は、ここにきて広がりを見せており、3/11には、東京・港区が主催し、お台場にある33階建てのタワーマンションでも実施されたとの報道がありました。しかしながら、まだご存じない方も少なくありません。そこで、
Q5 マンションのエレベーターの閉じ込め救出訓練を周知すべきと考えるが、都の見解を伺う。
A5(八嶋防災対策担当部長答弁)首都直下地震の際には、都内で多数のエレベーターが停止し人が閉じ込められるケースが想定されることから、今回の地域防災計画修正案において、関連業界によるエレベーターの早期復旧に向けた全国からの応援体制の構築を新たに対策として位置付けた。加えて、住民と保守会社とでエレベーターの閉じ込め救出訓練を行っている事例などについて、今後、住民や管理組合等に、セミナー等を活用して周知。
都は、住宅政策本部ではありますが、来年度から「東京とどまるマンション」への登録推進策として、防災に資する備品の補助などを設けます。この機も利用しての働きかけを要望しました。
在宅避難者を想定した日頃からの備え
首都直下地震発生時の大きな被害から自分の命を守るためには、自助の取組による事前の備えが重要です。都が昨年公表した新たな被害想定で明らかになった、都民の身の周りに起こりうる災害リスクを念頭に置いた上で、自分だけでなく、家族の命を守るためにも、水、食料はもとより、携帯トイレや日用品等、絶対に必要な物資がどれくらい必要なのかを考え、日頃から備蓄しておく習慣が不可欠です。持病を抱える家族がいる場合、ペットを飼っている場合など、各世帯によっても必要な物資は一律ではないことから、自ら備えることが肝要です。そこで、
Q6 関東大震災から100年を契機に、都民の日頃からの備えを一層進めるための取組を進めるべきと考えるが、見解を伺う。
A6(八嶋防災対策担当部長答弁)都民一人ひとりが「自らが防災の担い手」であるとの自覚を高め、家庭内での備蓄をはじめ、家具類の転倒・落下・移動防止、災害時の安否を確認する方法の取り決め等の防災対策に取り組む必要。このため、都として、関東大震災100年を契機にリニューアルする防災ブックに加え、東京備蓄ナビなど様々な媒体を通じて啓発。
先に述べた、国の「クラウド型被災者支援システム」国のシステムでは、避難物資の支給等も管理できる仕組みになっています。ここで、私の考えとして以下を述べさせていただきました。
・避難物資やトイレの必要性について都は啓発し、準備は基本的には都民自ら行うべきこと。
・準備した人が損をするような仕組みであってはならないこと(準備しなかった人には後から応分の費用負担を求めるなど)。
・支援対象の財政状況は考慮すること
「都庁版・越境人材」の育成
続いて、都職員の人材育成について伺います。DXなど、社会全体のアップデートが必要な中で、リスキリング文化の定着や、グローバルな視座を持った人材の育成、分野を横断して課題を解決できる人材の育成は極めて重要です。民間企業における取り組みの推進と並行し、都職員こそがその効果を体感し、成果につなげていくような、事例を率先してつくっていくことが必要です。そこで、まず、今般、都職員の海外出張も再開されましたが、
Q7 コロナ前に知事が打ち出していた、海外への職員派遣を強化するとしていた取り組みも再び強化すべきですが、見解を伺います。
A7(人事部長答弁)ご指摘の「国際競争力強化プロジェクト」については、今年度から渡航を再開しており、来年度は現地調査の規模を500人に拡充。加えて、海外大学院等への派遣人数の拡大など、より多くの職員に国際的な視野を広げる機会を提供し、新たな発想で政策立案できる職員を育成。
海外派遣を強化することを確認しました。
今の取組をはじめ、都庁職員が社会全体のアップデートを牽引できるよう、従来の領域にとどまらずに知見を獲得していくことは極めて重要ですが、このためには、部門間・庁外・民間・海外と様々な形で行き来をする、「都庁版・越境人材」を育てていくことが欠かせません。採用の在り方についても見直しが必要です。民間の労働市場においては雇用の流動性が非常に高まっており、優秀な人材ほどステップアップを重ね、自らのキャリアを高めていく時代になっています。都の職員も、これからは、国や区市町村・民間と様々な形で行き来を繰り返しながら、絶えず自身を成長させ続けていくことも必要ではないかと考えます。そこで、
Q8 民間企業等への人事交流の拡大や、いわゆる「出戻り」を対象とする柔軟な採用制度の構築などの取組により、「都庁版・リボルビングドア」を実現し、都職員を越境人材として育成していくべきと考えますが、局長の見解を伺います。
A8(総務局長答弁)社会情勢が急速に変化する中、複雑多様化する都政課題を解決していくためには、職員が積極的に都庁の外へ出て、新たな発想を取り入れ、絶えず成長し続けていくことが必要。これまでも都は、国や区市町村、民間企業など職員を派遣してきたが、「シン・トセイ3」では、スタートアップなど新たな派遣先の開拓や派遣人数の拡大など、都庁外への人事交流を一層推進していくこととした。また、退職した職員が再び都庁で活躍するための仕組みの創設など、採用制度の見直しにも取り組んでいく。こうした取組を通じて、官民の垣根を越えて活躍できる人材の育成を進めていく
こうした取組を着実に進め、都庁の職員が率先して外へ出て、多様なプレーヤーとの協働を重ねることで自らの成長に繋げ、ひいては、困難化する社会課題の解決にあたり、牽引役となって活躍できるような人材になっていくことを期待することを述べました。
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