「令和5年都議会第1回定例会」総務委員会③~政策企画局

福島りえこ,世田谷区,都民ファーストの会,都議会議員ブログ

3/14は総務委員会にて、政策企画局、デジタルサービス局の予算案と報告事項に対する質疑が行われました。私の質疑を紹介します。

政策企画局

「『未来の東京』戦略 version up 2023」

 「『未来の東京』戦略」について、予算特別委員会でも訴えてきたとおり、政策の精度向上のため、政策立案におけるEBPMの推進が重要です。

Q1 そこで今回、「『未来の東京』戦略」のバージョンアップがなされたが、データの活用・検証について、どのように取り組まれたのか伺う。

A1(計画調整部長)「『未来の東京』戦略」においては、目指すべき2040年代の東京の姿をビジョンとして示し、その実現に向け、達成すべき政策目標を設定し、その達成のために具体的な施策を積み上げ、三か年のアクションプランとして示している。
施策の推進に当たっては、これまで行ってきた取組の把握や分析等に基づき、政策を強化していく必要がある。先日、公表した「『未来の東京』戦略 version up 2023」では、政策ダッシュボードにより把握した成果や課題を踏まえ、政策の強化を図った。また、政策目標について、マイルストーンとなる中間目標を新たに設定するとともに、進捗状況をグラフで視覚化するなど、データの積極的な活用を図った。
引き続き、データも活用しながら施策の効果を検証し、政策目標の着実な達成に向け、取組を推進していく。

エビデンスベース、という言葉とともにグラフや数字も見かけるようにはなってきました。しかしながら、都政課題は複雑化しており、複数の要因が絡むものについては、統計的扱いが必要だと考えます。私からみると、その数字は有為なのか、エラーバーが必要では、と思うケースも少なくありません。また、実施前後のアンケート等で評価を済ませ、アウトカムにまで到達していない例も散見されます。

私はかねてより、EBPM(Evidence Based Policy Making)の重要性を訴えてきました。EBPMは医療分野から始まりました。薬の効果を調べたくても、患者ごとに年齢や性別、基礎疾患などの条件が異なるため、単純な比較ができません。そこで、薬を飲ませた集団とプラセボ(偽薬)を飲ませる集団を、それぞれ構成する人数を十分大きくすることで、年齢や性別、基礎疾患などを持つ人がそれぞれに含まれ、結果的に集団の違いを薬かプラセボかだけにすることで、比較ができるようにします。

2つのグループの結果は患者の持つ条件により分散をもちますが、その分散に対して、集団の平均の差が十分大きいかどうか、有為かどうかで検証します。このように、複数の要因が絡む事柄について政策効果を検証するのに、統計的手法が不可欠です。数字を使えばいいというわけではありません。

もちろん、簡単ではなく統計的手法とそのために多くのデータが必要であることから、評価には負荷もかかります。2019年、2021年のノーベル経済学賞の対象になったようにまだ研究対象でもあるのも事実であり、必要なものについて取り組むべきと考えます。

Q2 更なる政策の推進のためには、施策の分野や取組の性質等に応じて、必要なものに関しては政策立案においてEBPMを実践する必要があると考えるが、見解を伺う。

A2(計画調整部長)施策の課題や効果を、分野などに応じて適切に把握し、政策強化を図るためには、政策立案に携わる職員が、データ活用などに関する知識を深めることが重要である。そのため、今年度、ロジックモデルに関する職員研修を実施した。研修を受講した職員からは、「事業設計当初から効果測定を見込んでおく重要性が理解できた」という意見があるなど、データを活用した政策立案に関する知識習得や意識づけを進めることができたと考えている。
今後も、職員の知識習得に向けた取組を行うなど、政策立案や実行力の向上に努め、「『未来の東京』戦略」に示した政策を前に進めていく。

財務局が外部有識者の意見ももらいながら実施をサポートした令和4年度の事業評価の事例では、「一斉帰宅抑制」に関する認知度と教室参加者の間に相関はあったものの、認知度を100%にするための参加者数が10億人という結果になり、教室という方法での啓発の妥当性について考え直す結果となりました。予特の質疑では、実施しても公開してない状況を踏まえ、都内、そして都民に公開することで、国内EBPMを推進していただくよう求めました。政策の前進に向け、職員一人ひとりがEBPMの意義を理解し、必要に応じて実践できるようにすることは、大事です。EBPMに対する理解と活用を進めていただくよう要望しました。

コミュニティ

地域の人同士の関係性、コミュニティは様々な施策を実施する上で重要です。昨年9月の本委員会では、都が手掛けるコミュニティ施策を評価する指標として、ソーシャルキャピタルを提案しました。

Q3 各局が取り組むコミュニティ施策の強化につなげるべく、政策企画局がソーシャルキャピタルについて研究して頂くことを改めて提案するが、見解を伺う

A3(計画調整部長)ソーシャルキャピタルは、社会や地域における信頼関係や結びつきを表し、これらが豊かであると健康や教育、治安など様々な面で効果があるとされている。都においても個々の分野で調査研究が進みつつあり、今後、こうした調査結果をコミュニティ施策の関係各局と共有するとともに、有識者へのヒアリング等を通じて、研究を深めていく

福祉保健局の平成25年、そして令和2年の調査では、進学とともに状況するなどにより、都内におけるソーシャルキャピタルが低かった学生が、コロナ禍を経てさらに減少したこと、一方で、30-40代の男女で子どもを介した活動が増えたこと、さらには、ソーシャルキャピタルと高齢者の健康に相関があることなどが示されています。

都民ファーストの会が誕生して以降の6年間でも、町会・自治会はじめコミュニティは弱体化しており、都民の暮らしの向上、幸せのために、地域コミュニティの強化を政策目標の一つにかかげる私としては、忸怩たる思いがあります。福祉保健局の調査を取りまとめた東京都健康長寿医療センターの専門家とも意見交換するなど、取り組みを進めていただくことを要望しました。

福祉領域の人材不足への対策としてのAIの活用

滋賀県大津市では、いじめのリスクをAIで予想するシステムを構築し、いじめ事案報告書の内容からいじめの深刻度を判定した上で、学校に通知して指導の助言に活かす等の取組が行われています。同様の取り組みを浜松市も追随、児童虐待の領域では、三重県や江戸川区の取り組みもあります。経験者が求められる一方で、人手が不足しているセーフティネット関係は、ビックデータ×AIの取り組みが有効です。

Q4 様々な困難を抱える方々を支えるセーフティネットの領域においては、相談支援を行う人材が不足している傾向にある。そうした状況をカバーするためには、AIやビッグデータを活用し、必要な支援に迅速につなげる政策を進めていくべきと考えるが、見解を伺う。

A4(計画調整部長)不安や困難を抱える当事者は、不登校の子供やひとり親、ひきこもりなど多様であり、支援を行う人材が限られる中にあっても、その状況を適切に分析し、ニーズに応じたきめ細かなサポートを行う必要がある。今回のバージョンアップでは、AI・ビッグデータを活用し、孤独や孤立等を感じる子供や子育て家庭へのプッシュ型の情報提供や、AIチャットボットを用いた自殺対策など、施策の充実を図った。
今後とも、孤独感等を抱える方々の状況に応じて、最新技術の活用も検討しながら政策を展開し、誰一人取り残さない社会の実現に向けた取組を進めていく。

不安や悩み、寂しさを抱え、孤独や孤立に苦しむ方々は少なくありません。先に述べたような他自治体で先行する事例についても調査、有効であれば取り入れ、同じスキームに載るものであれば、都が先行して取り組むなど、セーフティネットに係る施策の充実を図ることを要望しました。

緑の創出・保全

昨年の総務委員会でも質問し、また先週の予算特別委員会においても質問したように、ロンドン、ニューヨーク、シンガポールなどでは、都市づくりにおいて緑の重要性が位置付けられているとともに、高い目標を設定し、都市の魅力創造を進めています。

例えば、シンガポールでは、屋上緑化、壁面緑化に加え、中空階や屋内の緑化をも実現した緑化建築・グリーンビルディングが普及し、立体的緑化を実現しています。また、一昨年「シンガポール・グリーンプラン2030」を策定し、2030年までに「年間の植樹本数を2倍とし100万本の樹木を達成する」、「すべての居住地から徒歩10分の距離に公園を作る」などの高い目標を設定し、都市の魅力創造に力を入れています。

Q5 東京も、都民にとっても、世界にとっても魅力ある都市になるために、長期的な視点を持ち、戦略的に緑施策を進めるべきと考えるが、見解を伺う

A5(計画調整部長)都は、「未来の東京」戦略の主要プロジェクトに「緑溢れる東京プロジェクト」を位置付け、公園の整備や民間開発等、あらゆる機会を通じて緑を創出・保全する取組を庁内連携して進めてきた。回のバージョンアップでは、民間の発想を生かした公園のにぎわい創出、都市農地の保全・活用などの取組を強化することとし、具体的には、生産緑地を買い取る区市を支援する予算の倍増や補助対象の拡充などを新たに打ち出した。さらに、2030年の目標達成に向けた実効性をより高めるため、公園の開園面積や、農地保全のための地区指定など、今回新たに中間目標を定めた。これらの取組により、都民が潤いや憩いを感じられる魅力ある空間の創出を進めていくとともに、海外の事例も参考にしながら施策を強化していく。

様々な取組により、戦略的に緑の創出や保全を進めていることや、中間目標を設定し、戦略の実効性を高めようとしている点は評価する。

現在都では緑の現状を把握するため「みどり率」といった平面的な指標を用いているが、都内全体を把握するためには有効な手法である一方、昨今の緑に関するお声をふまえると、都民の思う緑のあり方とは整合していないように思います。身近な緑を実感するといった観点からは、例えば緑がどの程度目に入るかを表す「緑視率」を用いれば、緑の量に対する価値や実感も高まるのではないでしょうか。今回の予算特別委員会においても要望しましたが、ぜひとも都民にとって分かりやすい、そして都民のQOL向上に直結する指標も検討していただくことを要望しました。

福島りえこ,世田谷区,都民ファーストの会,都議会議員

スタートアップ支援

都内にはモノづくりなど、中小企業が多く、大企業の多くはこのような中小企業と連携して事業を行っています。「Tokyo Innovation Base」の設置に際しては、中小企業とスタートアップの連携によるイノベーション創出を行うことも重要であると考えますが、都内には、東京都立産業技術研究センターのように、中小企業が使用できる設備を整えた民間施設もあると聞いています。

Q6 地域資源ともいえる、中小企業が使用する民間支援施設とも連携すべきと考えるが、見解を伺う。

A6 (スタートアップ戦略担当部長)「Tokyo Innovation Base」は、スタートアップに関わる様々な団体が集い、新たなイノベーションを生み出すことを目指している。この拠点を核に、様々な民間支援施設と連携し、都内全域でスタートアップの支援に繋げていく。中小企業向けの民間支援施設とも連携を図ることで、中小企業とスタートアップとのコラボレーションを生み出していく。

都内に集積する大学等には、世界レベルの研究の種がある。こうした研究の種を育て、起業に結び付けていくことは非常に重要です。しかしながら、ペロブスカイト太陽電池が、当時、研究資金の問題で、国外の特許取得ができなかったように、研究初期段階でその技術が大きく成長するかどうかを見極めるのは容易ではありません。逆に確実に成果を得ようとしすぎると、短期的な研究や先が見えている研究にしか投資できなくなり、このようなものを研究というのかどうかさえ怪しくなります。これは、国の科学技術関連の投資で指摘されてきた課題です。

Q7 投資対象を目利きすることは非常に難しい。どのように投資対象の目利きを行うのか伺う。

A7 (スタートアップ戦略担当部長)大学等での研究開発型スタートアップは、専門性が高く、研究を理解しその成長性を見極めた上で投資判断する必要がある。大学発スタートアップ等促進ファンドのスキームでは、スタートアップに対する個別投資は研究開発に精通した大学VC等に担ってもらい、都はその大学VC等に対して出資を行うファンドを組成する、ファンド・オブ・ファンズ方式を予定。

インターネットやロボットの発展の裏に、現在の DARPA であるアメリカ国防総省の高等研究計画局(ARPA)が資金を提供してきたことは有名です。日本がこのような目的で技術開発することは難しいですが、情報セキュリティ分野は投資対象になりうる分野かもしれません。国外の、大学研究に対する投資で目利き力のあるVCに学ぶことを要望しました。

我が会派は、スタートアップの実績づくり、そして事業展開のため、公共調達の活用を継続して求めてきました。

Q8 スタートアップの公共調達の拡大について、来年度どのように取り組んでいくのか伺う。

A8 (スタートアップ戦略担当部長)来年度、様々な都政の現場でスタートアップの製品・サービスを実証する取組の拡充や、社会課題解決に取り組むスタートアップが技術等の活用を提案する事業を開始。また、入札参加の促進に向け、資格登録支援や、等級に関わらず参加できる制度設計を進めるとともに、デジタル分野での円滑な調達の仕組みづくりに向けて、国等との議論を深めていく

戦略広報部における調査

Q9  都民の意識、意見を把握する調査を実施し、事業に反映させることは重要である。そのために、戦略広報部ではどのような調査を行うのか、令和5年度の取組について伺う。

A9 都民の意識等を把握する調査については、世論調査、都政モニターアンケートなどを実施しており、その結果を行政計画の改定に反映。令和5年度は、デジタルを活用した調査を充実・強化。具体的には、SNSを活用した調査の実施回数等を拡充、LINEの公式アカウントのユーザー約90万人を対象とした調査も実施。これらの調査結果を各局と連携して有効に活用し、都民生活の向上に資する施策の立案や広報展開につなげる

従来の世論調査等に加え、SNSを通じたよりスピーディな調査環境ができていることを確認しました。

『未来の東京』戦略では、アンケートが最後の章になっていますが、本来、最初にこれがくるようになってはじめて都民ファーストの都政と言えること、これまでも述べてきたように、市民参加のためのデジタルプラットフォームdecidimが、2016年にスペインのバルセロナ市で開発され、国内でも兵庫県加古川市などで導入が始まっていることを紹介し、都民意見集約におけるDX活用を要望しました。

局長の決意

明るい未来の東京を実現するためには、将来像を描き、それに向かって政策の強化を図り、スピード感を持って取り組んでいく必要があります。世の中が大きく変化する中で、取り組む施策も当然ながら変わっていくものである。データを分析・検証しながら、常にアジャイルし、政策を実効性のあるものにしていくことが重要です。

Q10 そこで、「未来の東京」の実現に向けた局長の決意を伺う。

A10 「未来の東京」戦略は、厳しい現実に真正面から向き合い、目指すべき未来の姿を見据えて、今、東京がなすべきは何かを徹底的に考え、その羅針盤として策定。策定後も、国際秩序の不安定化、など、都政を取り巻く環境は、刻一刻と変化。こうした中で、「未来の東京」戦略で掲げた施策を実行し、確実に成果を上げていくためには、進捗や実施する上での課題を把握し、政策の強化につなげていく。このため、昨年夏に「政策ダッシュボード」を作成し、取組の「見える化」を図った。ここで把握した取組状況などを踏まえ、政策を強化し、今回のバージョンアップに反映。社会の動向や都民ニーズを把握し、アジャイルにより政策の実効性を高め、100年先も豊かさにあふれる東京の実現に向け、全庁一丸となって取り組んでいく。

「未来の東京」戦略は、都民のQOL向上に欠かせません。引き続き、積極的に取り組んでいただくことを要望しました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました